ここのところ、わたしは慎重だ。


何にって、自分に、だ。


嘘を、つかないようにとてもとても慎重になっている。


だって、ちょっと放っておくと、すぐにしたくないことばかりに気が向いていく。


しなきゃいけない、と思われる、何か、こころに背く方向にくいっと曲がって、イヤイヤ、もしくはなんとなく、そこに向かってしまう。


なんかそれ、汚いぜ、とな。


ロボットも程々にしとけよ、とな。


思ったわけです。


気をつけないとすぐにそっと、そっちに方向転換されちゃうから。


慎重に、慎重に、ばかみたいに慎重に。


ハッて気づいたら、あぶねーあぶねーって一度立ち止まる。


で、ちゃんと見る。


見たら、わかる。そこからは、嘘発見器、マイ嘘発見器意外と高性能。


そうするとね、スッキリする。


あ、そうそう、これはしたいこと、これはしなきゃならないこと。


大事。


しなきゃならないことは、別に後回しにするわけじゃなくて、整理して、片付けること。


やっと気づいたの、ハローわたし。


ここにいたんだ、ずいぶんと探したよ。


あなたのヒカリだけは見失わないように用心してたんだ。


ハロー、はじめまして、わたし、あなたをずっと探してた。




あの滑り台はもう無くなってしまったの。


そう、あなたのパンツが破けそうになった例のあれ。


あなたはあの時、どうしたらいいかわからなくてただ泣いていたけれど。


滑り台は優しかったんだよ。


わざとじゃないから、今はもう許してあげてね。




あいしても。


死んだりしないから。



あいしても。



終わったりしないから。



ところであの日記帳はどうしたの。


もう捨ててしまったかしら。


あんなに大事にしてたのに。


へたくそな文字は楽しそうに踊ってた。


どうしてかしら。


どんなに上手に書けたって、なんとも思わなかった。


おのへたっくそな文字だけしか、今は思い出せない。



だめね。



東京の空に雨が降るとき、時間が少しだけ縮まるのを知ってる?


会いたい人に会えるのよ、こんな夜は。


あなたは今、誰に一番会いたいかしら。


あなたの会いたい人は、どこにいるのかしら。


あ、嘘ついたら世界が消えてしまうから用心してね。


アドバイス。


それくらい、曖昧で柔らかなものだから。


慎重にね。


壊さないようにね。


壊してもいいけど、二度ともとには戻らないからね。


でも、それもいいよね。


嫌いじゃないよ、ああ、むしろ好きです。


壊さないようにするのも、思いっきりぶち壊すのも。




とてもじゃないけど。



追いつけないの、というか、そっちには、多分いけない





佐藤寛子