大俳優、大杉漣さんの遺作となったドラマに、店員Aとして出演したことがあります。
演技のことなど全くわからない私。
近くのディレクターらしき人に教えを請うと、「いつも通りでいいですよ」と返答が。
なるほど。
ということで、本当にいつも通りに
「ごちそうさまでした」
と、私は大杉漣さんにお釣りを渡しました。

すると、目の前の大俳優が演技がかった感じで私を見やるものだから、びっくりしてしまって。
私は固まってしまったんですね!
まさに、蛇に睨まれた蛙です。
 
ディレクターが言ったのは、いつも通りの(演技で)でいいですよ、という意味であって、私は本当にいつも通りにやってしまった。
その大根芝居は、10年前にもらった勝利者賞のHDD内蔵TVの奥底で見られることもなく残されています。


 
そして先日、憲俊さんの舞台『バルボア』にボクシングの世界チャンピオン役として出演しました。
セリフは少ないものの、重要な役目です。
 
先ほどのトラウマもあり、当初は不安でいっぱいでした。
しかし実力派の役者陣に恵まれ、身体の動かし方から声の出し方まで学ばせて頂き、最低限形にはなったようです。感謝。
 
基礎の根底は同じです。
だから応用が効きます。
基礎を身につけたら、上手い人を見て、考えて、真似をする。
自分の型は、そうやって作られます。
学ぶの語源は真似るです。

【文】ブルート通信166 / 明生人嘉93話
【写真提供】SCAMP
【写真撮影】ごとーあきら