昨日開催した自民党国防議連では、「中国の新領域への軍事的取り組みにおける台湾の施策~新たな戦場となった「認知領域」~」というテーマで、防衛省防衛研究所地域研究部長の門間 理良(もんま りら)氏からご講演いただいた。
 
台湾統一に失敗すると中国共産党政権が揺らぐ危険性もあることから、中国共産党としては台湾が自ら中国の軍門に下るという「戦わずして勝つ」戦略を最善のシナリオとして追求している。このため、台湾が「中国と戦っても勝てない」「それならば、できるだけ好条件で中国に統一された方がまし」と諦めさせるために、人民解放軍を近代化させて「情報化戦争」と将来的な「智能化戦争」を遂行できるよう準備している側面もある。
この「情報化戦争」では陸海空に加えて宇宙・サイバー・電磁波領域も戦場になるが、さらに新領域作戦として、「認知戦」がある。「認知戦」は三戦(輿論戦・心理戦・法律戦)やインターネット上の真偽が判別しがたい偽情報、「文攻武嚇(言葉で攻撃し武力で威嚇する)」の手段を総合的に運用して中国に有利な情勢を作り出すことであるが、将来的な「智能化戦争」においては、この「認知領域」が重要な戦場に位置づけられる。

 実は既に何度も認知戦が行われており、例えば、2021 年 5 月 17 日、中国国務院台湾事務弁公室(国台弁)が、「台湾同胞が大陸製ワクチンの使用を切望している。台湾同胞が大陸製ワクチンを使用できるよう急ぐべきだ」と発表した。これについて台湾の国家安全部門は、北京側が「混乱を作り出す」ために「認知戦」を行ったと分析している。また、2月末には自称ウクライナ在住の「台湾ボーイ」がインターネット動画で「キーウの中国大使館の通達を見て感動した。『台胞証』を持つ台湾人も中国のチャーター便に乗ることができる、母なる祖国への永遠の愛を」と発言した。しかし、「台湾ボーイ」は、父は台湾人だが中国在住のインフルエンサーであることが判明している。
 
 台湾側も既に対抗策を打ち出しており、サイバーセキュリティ局やフェイクニュース対抗処理小組等を創設するとともに、報道の真偽を検証するサイト「台湾事実査核中心(台湾ファクトチェックセンター)」を設立している。しかしながら、攻撃する側が圧倒的に有利なこの戦場では、攻勢を強める中国に対し、台湾は圧倒的に予算と人員が不足している。今後は民間との協力関係を一層強化することや、フェイクニュースを見破るメディアリテラシー向上の教育の重要性を指摘する声が上がっている。この点は日本も参考にすべきだ。
 
 佐藤としては、台湾が新領域での戦いに取り組んでいるのと同様に、日本としても新領域での戦いに備える必要があることを引き続き訴えていきたい。