~長い文章なのでお時間がありましたら~
いきなり僕自身の話で恐縮なのですが、僕はこれまでの人生で、気づいたら10年以上、ファミリーレストランでアルバイトをしてきました。
途中、何回か進学や新しい仕事にチャレンジする形で、アルバイト先のお店を辞めたことがあったし、勤めていたお店が閉店という形で同じ系列グループの他店に移籍したこともありました。気づいたら吸い寄せられる形で元のお店に「ただいまー」と言って帰っていきました。バイト先にいたおばちゃん達はおはぎとか煮物をくれて、温かったのです。バイトを辞めた日のことを、今でもずっと覚えています。僕にとってバイト先は、かけがえのない居場所でした。
アルバイトを辞めてからちょうど10年経ち、今、TBSテレビの『夢なら醒めないで』という番組に出演させてゲスト5人の方々で「今後誰が一番ブレイクするか」を選ばせてもらう占いをさせてもらうというお仕事を、縁あってさせて頂くことになりました。
小手さんと出会ったのは去年の秋頃でした。もうすでに、月9のドラマなどに出演されていて、ブレイクはされていた小手さんを見て、すごい衝撃を受けました。
その衝撃について、少し遠回りして説明をさせて下さい。
僕は、夢なら醒めないでの占いを、収録日の前日に何時間か時間を取ってやります。
収録は2本撮りで、各ゲストが5人で、合計10人の方々を見るためです。
番組で要求されるお題が大体「今後ブレイクする方」なので、そういうブレイクの仕方を中心に見るのですが、芸能人の方、そして一般人の方でも、「ブレイクの仕方」って皆さん異なるものを持っています。僕の占いの手法って、ちょっと多分変わっていて、短い時間、大体ひとり30分ぐらいかけて、その人の人生を追体験します。だから、写真を見て(その人が目の前にいる場合はその人のことを見て)、目線、姿勢、息遣い、緊張した時の手の形、背中の張り、体のどこに張りがあって、どこが弛緩しているか、頑張っている時の目の向きはどうなっているか、おいしいものを食べている時の味はどうか、とか、そういうことを、占いの手法を持って追体験します。
ひとりひとりに、チャンスのつかみ方って違うものがあります。
・子どもの頃から「私を誰だと思っているの?」という自負心で色々な壁を乗り越えてきた人
・他の人にはない感性や嗅覚で、他の人が感知し得ないチャンスの匂いを嗅ぎ取り、ここ一番で自分の実力を発揮してきた人
・はじめは目立たなかったけど、「自分なりに常に考え」、何年か後に実力を開花させてきた人
・一度人気を手にし、順風満帆かと思いきや、予期せぬ“底”を経験し、そこからまた生まれ変わるようにのし上がってきた人
そういう、それぞれの人の「底力」のようなものを、収録前に「この人はどういう形でチャンスをモノにしてきたか」というのを見てきました。
そして、小手さんの衝撃に戻るのですが、小手さんは、「無」だったのです。
「え?」
って思われる方も多いでしょうが、こういうケースは本当に見たことがなくて、
「無」の小手さんって、もう「自分の目の前にあるもの」しか見えていなかった気がしたのです。
「自分の目の前にあるものを、ただ全身全霊でやる」
それが、無になった小手さんの、お仕事への、芸への、そして、自分の道を生きさせてもらっている「周りの人々」への返礼の仕方と、生き方の流儀だと思いました。
「自分の目の前にあるものを、ただ全身全霊でやる」
これって、言葉で言うほど簡単なものではありません。
多くの人には、何回かの挫折、何回かつかんだ“手応え”、そして、周りの人達がいて、自分で目指している理想がある。
そういう「紆余曲折」の中で、多くの人達が「自分なりの勝ち方のパターン」をつかもうとします。
「去年こういうやり方で上手くいったから、今年はこういうやり方でアレンジしたい」
とか、そういう未来予測図を立てて、安心をしたいという気持ちもどこかにあるのかも知れません。
でも、小手さんが歩んできた道のりって、多分そんなに「予測が立てられる程」、甘いものじゃなかったと思ったのです。
負けても尚、応援されてしまう人ってこの世にはいます。
そして、応援されている方は「こんなに負けてきた自分を、なんでそんなに待ってくれているのか」と疑問に思います。
自分もバカだけど、あなた(たち)もう相当バカですよねって。
そういう「バカがいてくれる」って、
小手さんって、そういう「情深いバカの人達」に応援されてきた人なのだと思いました。
未来に予測は立てない。自分には何もない。そして、「機会」って偶然やってくるものじゃない。
「機会」って、誰かが時間やお金、そしてその人の「愛情」を込めて、「あなたに扱って欲しい」と思われて差し出されたものだと思っています。人生で大負けをしたことがある人の強さって、その機会に込められた愛情の匂いを、もしかしたら他の人よりも強く嗅ぎ取られるのかも知れません。
小手さんって、その芝居やお仕事を見ている人に何かを思い起こさせる力を持って、応援される方なのだと思いました。