がん患者とうつ病 | ほっこり 知恵袋

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昨年の暮れに、府中がんケアを考える会に参加しました。講演は、保坂サイコオンコロジー▪クリニックの保坂隆先生でした。サイコオンコロジーとは、がん患者と家族のための精神科のこと。がん患者の30%は告知から1年以内にうつ病、もしくは適応障害を合併するそうです。うつ病を放置すると、機能低下がおこり、免疫力が低下します。がんへの取り組みかたはその人の考える方を尊重することが大事であること。うつ病は治るので、早期に発見し、治療する必要があること。治療は、概ね3ヶ月ぐらいで治るそうです。



抑うつ症状
①抑うつ気分
憂鬱、気分が落ち込む、楽しくない、悲しい、淋しい、孤立感、笑えない、自責感。
②精神運動性抑制
物覚えが悪い、集中力がない、持続力がない、決断できない、考えがまとまらない、なにもしたくない、億劫だ
③身体症状(ホルモン療法中でもおこる)
食欲不振、体重減少、頭痛、腰痛、肩こり、不眠
日内変動(ホルモン療法中にも、うつ病、認知障害が起こりうる)

■特に身体症状強い場合は、他の病気と間違えることがある。

❰がん患者のうつ病が見逃されやすい理由❱
①主治医、家族としての思い:「自分の患者が精神的な病気にかかっているはずはない。」「遺伝的に考えられない。」→うつ病は遺伝はない。反応性の病気で、誰でもなる可能性がある。
②正常反応の拡大解釈:「がんという病気にかかっているのだから、落ち込んでいても仕方ないことだ。」

❰家族のほうが傷付いていることもある❱
本人(30%):家族(40%)
何故、家族のほうが傷付くのか?
矛盾した二つの役割を課せかれるから。
患者的側面:「大切な人を失いつつある。」→予期悲嘆(家族を含めた悲嘆セラピー)
治療的側面:「大切な人を支えていく。」

家族と共にがんに向き合うこと
家族もうつになっていることがあるため、心のケアが必要のようです。
患者家族会やその他のインフォーマルな場も勿論よいそうですが、専門家の治療を受けることは必要です。

保坂先生のクリニックでは、グループによる対話の治療もしているそうです。
夫婦間のパートナー、患者同志のグループに専門家のファシリテーターがついて対話を進めていくそうです。何を引き出したいかを理解しているファシリテーターは重要です。
❰対話のポイント❱
▪本人が何に気付き、次の行動へ移すか。
▪お互いの気持ちをよく聞いた上で、よりよい方法を一緒に考えていくこと。



❰感想❱
義父をがんで亡くしたとき、家族として大きな悲しみを味わいました。
身近で介護をしていた義母や義妹のストレスは計り知れないくらいでした。
心身ともに疲労が蓄積するなかで、少しでもほっとできる時間を過ごさせてあげたかったです。患者的側面と治療側側面を同時にもつという重さ、在宅見取りの恐怖もあったと思います。介護が終了すると、今度は喪失感に襲われていました。介護うつ、グリーフケアはセットになってきます。
そうした家族の支援は、身体的な症状がでたら早めに専門医に診てもらった方がよいのですね。早期に治療すれば、随分楽になるそうです。患者家族は、本人も含めて、うつのケアが必要だということがわかりました。うつのケアには、専門医の治療のほかに、対話のできる居場所があるとよいと思いました。
府中がんケアを考える会の忘年会にも出席しましたが、当事者の方の想いは様々でした。発症年齢や性別、がんの臓器別、更にその人の生活環境によって大きくことなりました。単に「がん患者」というひと括りではいけないと思いました。
皆様が共通して想っていることは、自分の話したい人と対話したいということでした。今後の大きな課題になるでしょう。