私はポケットティッシュを自分で買ったことがない。
なぜならばある程度の規模の駅の前を歩いていれば無料でもらえるからだ。
しかしポケットティッシュも本来ならば製造するにも流通するにもある程度のお金がかかる。
そして無料で配っているからといって配っている側に「ティッシュがなくて困っている人を助けたい」などという考えがあるわけでもない。
ティッシュ配りの目的は宣伝であり、会社の売り上げを伸ばすことだ。
しかもただチラシを配るのとはわけが違う。
ポケットティッシュはティッシュを使うたびにパッケージに書かれた広告が目に入るという特徴があるため、使っている人間は意識的に広告を見ていないつもりであっても気がつかないうちにその広告による影響を受ける。
そういう狙いも無料でポケットティッシュを配ることにはある。
「何も考えずに受け取り続けた結果、いつの間にか鞄の中にポケットティッシュが3つも4つも入っていた」
本来ならばお金がかかるものを無料で使うことにはこうした恐怖が潜んでいる。
今、SNSを使えば誰でも簡単に無料で情報が得られる。
SNSで得た無料の情報はポケットティッシュに似ている。
だから気がつかないうちに自分に関係のないもの・必要のないものに時間や労力を注ぎ込んでいるのかもしれない。
さらに残念なことに「人生で本当に大切なのは限られた時間をどう過ごすかであり、お金ではない」と得意げに語りながらも、背後にある「お金」の存在を認めた瞬間にしか「実はこれは自分にとって大切なものではない」と気づけない人は多い。
多くの人は「お金」でしか自分の価値観に気づけない。
気づいた時にはすでにありったけの時間と労力をそれに注ぎ込んでいる。
それは「鞄の中にいつのまにかたまっているたくさんのポケットティッシュ」以上に恐ろしいことだ。
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