2016.12.13 静岡県議会 文字起こし↓
小長井由雄県議会議員 (ふじのくに県民クラブ)
浜岡原発について
浜岡原発について伺います。
川勝知事は2009年の知事就任直後の8月11日に発生したマグニチュード6.5、最大震度6弱の駿河湾地震を経験したことにより浜岡に原発がある静岡県のトップにいることの重たさを改めて感じたのではないかと推測します。
また2011年の東日本大震災による福島第一原発の事故をうけて、当時の菅総理によって停止を要請された浜岡原発の直下は、予測される東海地震の震源域で、被害が拡大する直下型地震にみまわれる危険性が非常に高い場所であり、さらに巨大な地震となることが予測される南海トラフ地震では大きな揺れと巨大津波に襲われることから、その危険性を強く感じられたのではないかと思います。
知事は一期目就任後に、静岡県独自に浜岡原発の安全性を検証する静岡県防災原子力学術会議を設置し、様々な見地からの検証を進めてこられましたがこのような中、本会議答弁や記者会見等でご自身の浜岡原発に対する考えを次のように述べられています。
「浜岡にある使用済み核燃料については行き場がなく新たに予定している乾式貯蔵施設を含め、浜岡原発の敷地内に保管すべきである。また日本中の原発では原発敷地内で保管できる核燃料の量が残り少なくなっており、浜岡原発についても使用済み核燃料の保管できる量は数年分しか残っていないから再稼働はできない。浜岡原発の今後については安全文化安全技術の世界のメッカとして存在べき」等々であります。本年10月17日の記者会見では鹿児島県や新潟県の原発立地県の知事選において、原発に対して慎重な政策を掲げる候補者が当選したことをうけ、政府がすすめる原発政策について苦言を呈されると共に、「浜岡原発について公開の場で徹底的に議論すべき」とのご発言をされております。
前回の2013年の知事選挙の直後、知事職は天職だと考えていると仰っていましたが、今回はまだ来年の出馬についての意思は示されておりません。
しかし、どなたが立候補しても浜岡原発は川勝知事が仰っる通り、知事選の重要な争点だと思います。
そこで改めてお伺い致します。
県民の生命財産を守る立場のトップにある静岡県の知事として、浜岡原発の現状に対してどのような認識を持ち、今後どのようにこの問題に対応されていくのかお聞かせください。
川勝知事答弁
小長井議員にお答えします。
浜岡原発についてであります。
原子力発電は、「CO2を出さない」、そして「低価格である」ということで日本の国策に一時期なっておりましたが、東日本大震災における福島第一原発事故をうけまして環境に対しても問題があると、そしてまた廃炉にするためのコストも多大なものに上り、コスト面でも問題があるということ、原発にかかわる政策は揺れているというか、従来のものとは変わりつつあります。
そうした中で、原発はもともと安全性が前提になっておりました。浜岡原発にとっても全く同様でありまして、いま浜岡原発におきましては何よりも安全性が優先されているものという認識を持っております。と申しますのも、中部電力は平成23年5月6日に菅首相の要請によりましてその一週間後に定期点検中の3号機はもとより、稼働中の4号機、5号機も全面停止されました。この決定に至る前、また後におきましては原子力担当の細野補佐官、菅首相の発表後には水野社長、そして菅首相とも直接話を致しました。すなわち5月6日と7日のことでございますけれども、私の考えはいま東電が管轄している地域、それは伊豆半島も含んでおりますけれど、そこにおいてはいわゆる計画停電を含め、電力が不足していると。浜岡原発の4号機、5号機は安全に稼働しているのであり、まず電力不足が生じているので、これを止める必要はないと。少なくともこの夏の電力事情の高騰に対し、これに対応することができる。また3月4月、それぞれ4号機、5号機が定期点検を迎えるのでその時に判断したらいいと。夏と冬にかかる電力は使命として供給するべきであるというのが私の意見でありました。
しかしながら、要請は要請でありまして、中部電力の方は要請を真摯に受け止める形ですべての号機を停止すると、そして安全に乗り出すというご決意をされたわけでありまして、私は中部電力は安全を最優先する姿勢に変えられたというふうに理解をしているところであります。事実中部電力は防波堤を始めとする各種の安全対策を行われており、我々との公開の研究会におきまして、原子力安全技術研究所を発電所内に設けるという事も決定されまして、安全技術に関して研究公募もなさり、また研究結果につきましては公開をされていまして、そして廃止処理中の1号機、2号機のうち1号機におきまして国際機関におきまして原子炉材料の健全性に関する共同研究等を実施されておりまして、浜岡原発に関しましては、安全技術、安全文化のメッカとなるという姿勢が示されているものと私は受け止めております。
一方、原子力規制委員会による新規制基準適合性審査であるとか、またこれが途中であるとか、さらにまた使用済み核燃料の処理方法をどうするかといったことの課題も残されておりますが、基本的に浜岡原発の今後につきまして、議員がご紹介頂きました通り、私は安全文化、安全技術の世界のメッカとして存続すべきであるというのが私の意見であります。
そしてそれは、再稼働がないという想定のもとで考えております。
この点につきまして、知事選、或いは政治の争点にすべきかということでありますけど、当然争点にするべきものであります。
残念ながら、直近の御前崎市長選におきましてはこの点が触れられませんでした。誠に残念に思っております。原発の問題ではありませんけれど、例えば沼津の高架事業におきましても沼津市長選で明確な争点にならなかったというのを残念に思っております。
一方原発が争点になった鹿児島県知事選におきましては県知事さんは言わば再稼働を止めるという方向でしたけれど、十分に下調べなさらなかった結果、腰砕けになっているという現状になっております。と申しますのもやはり電力会社それぞれ所轄している地域におきまして最も依存している電力はなにかということがございます。ご案内の通り、原発を持っている9つの電力会社のうち最も依存率が低いのが静岡の浜岡原子力発電所、中部電力でございます。従いまして中部電力と比べたときに、九州電力、或いは四国電力、或いは北海道等々、こうしたところは原子力発電に大きく依存しておりますから、もし電力が供給できなくなれば、電力会社は、安全性は当然でありますが、電気を供給するのが存在理由でありますから、その存在理由を問われることになります。したがって極めて難しい状況の中で、それぞれのご事情があると言う風に理解しているわけです。
ですから、お訊ねの浜岡原子力発電所につきましては、「再稼働はない」という想定の下で、これを安全技術、安全文化のメッカにすべきであるという考えであります。
しかしながら、県内におきましては首長さんの中にもつい先ごろまで廃炉にすべきである、或いは現在でも永久停止にすべきであると言う風に声高に叫ばれている方もいらっしゃいます。しかし、廃炉にする、或いは永久停止にすると、それが安全性を確保するかどうかということについて、ただ心配だと言われるだけで中身がないと言うのが現状ではないかと思います。
私どもは浜岡原子力発電所について、公開の研究所もありますから中身を知ってどうするのがいいか考えるべきだと思っております。なかんずく浜岡原子力発電所には3千人以上の方が働いておられます。一人につき三人家族であるとすれば一万人近い人たちの生計の元になっているところであります。その人たちのことも併せて考える必要があります。その人たちがどのようにすれば希望が持てるかという事を考えなければならない。電力会社は、安全性はもとより電力を供給しなくてはなりません。供給するための原子力発電所は難しいとしても、しかしながら研究をする中で若干発電もできるでしょう。少なくとも浜岡原子力発電所は今発電所でありながら受電をしているという本来の中部電力の存在理由が問われているということを深く反省するべきであると思われます。しかもそこから高圧の送電線が各地に渡されておりますけれど、およそ360万キロワット分を供給する能力を持っているわけです。これが全く稼働していないということでありますから、こうしたことをどういう風にするかということも併せて考えるべきだと。原発の中における安全性だけでなく、災いをいかにして福に変えるかというために既存の施設をどう活用するか、ということを考えるべきだというのが私の立場でありまして。
やはり、しっかり争点にして、争点にできないような人は結局問題を先送りするだけです。なんの問題の解決にもなりません。ただただ自分の主張を言うという。主張は根拠がなければオオカミの遠吠えでしかないという風に思います。そうした意味で、これは当然争点にすべき極めて重要な問題であると言う風に考えているところであります。
私ども県といたしましては、今後とも国に対しては厳正な審査を求めます。
これは安全性を確保するためには審査を拒否してはなりません。オープンにしていなければならないと考えるからです。また本県が持っております。静岡県防災原子力学術会議を中心にいたしまして浜岡原子力発電所の安全性について独自に検証を行い、ついては「安全性に係る技術を商品にしていく」と。
いづれ日本中、世界中の原発も必ず廃炉になります。その時にこうした沸騰型の発電所に対して、廃炉にするにはどんな技術が最適かということがそこで開発されれば、それはそのまま商品になるわけであります。つまり存在理由がでてくるわけであります。
そうしたことも踏まえまして、私は安全性の確認を中部電力ご自身が安全性に軸足を移すという風にお決めになり、今生き残り作戦を考えるべきであると。言い換えますと、安全性の確認を最優先に取り組んで行くと言うのが県の姿勢であります。