4月23日付けの井上香記者による”エジプト人タレントのフィフィ、韓国人教授からの「脅迫」「嫌がらせ」を暴露”と題する記事 http://jp.ibtimes.com/articles/43253/20130423/607287.htm#.UXW_892XX8R.twitter について。


 先ほどTwitterを眺めているときに飛び込んできたのがこのタイトル。
 タイトルを見た瞬間に、韓国人教授というのは関西学院大学の金明秀先生(Twitterの@han_org)のことだろうとピンときた。僕は金明秀先生を長らくフォローしてきたのだけど、フィフィさんの無責任な発言を金明秀先生が批判してきた経緯を知っているからだ。ただし、彼の発言が脅迫や嫌がらせと呼べるものではないことはよく承知している。例えばここのTogetter ”フィフィさんの発言に対する金明秀さんの反応 http://togetter.com/li/273920”を見ても、金明秀先生のフィフィさんへの批判が脅迫・嫌がらせに当たると思う人はいるまい。この二人の間の論戦(と呼べるほどフィフィさんは誠意のある発言をしていないのだが)は常に、フィフィさんが在日コリアンに対して無責任な誹謗を行い、金明秀先生が批判するという形でなされてきた。ただしフィフィさんの方は批判者に対して誠意のある対応をしてきたわけではなく、”フィフィ(FIFI_Egypt)さんは捏造をいい加減やめたらどうか http://togetter.com/li/411850”に見られるように、相手の発言を捏造して自分のフォロワーに攻撃させるという陰湿な嫌がらせをしばしばしてきた。


 で、そういう経緯を把握している人間から見た今回の記事であるが、とても面白い手法が使われていたので、紹介したいと思った次第。

 以下に全文を引用するが、その際、記事の内容を分類して色分けを行う。
1)フィフィさんの主張の部分はピンク
2)客観的な事実だが「脅迫」「嫌がらせ」には関係のない周辺的な事項の場合は水色
3)客観的な事実で、「脅迫」「嫌がらせ」に当たるかもしれないものの部分を黒

とする。



(以下引用)http://jp.ibtimes.com/articles/43253/20130423/607287.htm#.UXW_892XX8R.twitter

  ストレートな発言で知られるエジプト人タレントのフィフィさん(37)が、現在ツイッター上で暴言を受けていることを公表した。

22日夜、突然「サイッテーやな、フィフィ。以後は手加減しないよ」というコメントをリツイートしたフィフィさんは、ツイートの主について「これ関西の大学教授。信じられないでしょ。でも本当」と暴露。相手はなんと、関西学院大学社会学部で教授を務める金明秀(キム・ミョンス)教授だという。

 キム・ミョンス教授は福岡朝鮮初級学校、福岡大学附属大濠高等学校等を経て、1990年に九州大学文学部哲学科社会学専攻卒業と、幼少時に日本に移住したフィフィさん同様、日本での生活が長い在日韓国人だ。専門は計量社会学、社会階層論と社会意識論となっており、在日韓国人という目線から「ハン・ワールド」を主宰している。


 フィフィさんはさらに「彼の取り巻きをご確認下さい。私のお気に入りにいる方々。この時は酷かった 朝のラジオやってたんだけど、毎週番組への集団嫌がらせツイート」とツイッター上の「お気に入り欄」を見るよう誘導。フィフィさんが担当していた朝のラジオといえば、3月18日に降板したNHKラジオ第一『すっぴん!』月曜レギュラーを指すと思われるが、番組降板を理由に「これが去年から続いていた嫌がらせの根源です。もう私は黙りません。日本にいて外国人に集団で嫌がらせされるのは許されない事です。しかも外国人教授」と、徹底抗戦の構えを見せている。

 フィフィさんはエジプト共和国カイロ出身で、2歳のとき日本に移住、2001年に日本人男性と結婚、1児をもうけている。これまで政治経済、芸能、社会とカテゴリを問わず、問題の核心に鋭く切り込む率直な発言はたびたびネット上で議論を巻き起こし、ニュースになることもあった。

 しかし、17日にはネット上での発言が独り歩きすることに対し「こうして呟くほど仕事が減少してるリスクぐらい想像できないものかね?そんな甘いもんじゃない」とツイート、さらには「ネットで話題でも番組に呼ばれない。どんな圧力が働いてるか想像つきますよね?もう諦めたからこそ自由に発言してるんです」と、何らかの”圧力の存在”を匂わせる発言が話題を呼んでいた。

(引用ここまで)


 ご覧の通り、記事の大半は(1)フィフィさんの主張に過ぎないものと、(2)客観的な事実ではあるが「脅迫」「嫌がらせ」とは関係のないもの、の2つから成っている。唯一「脅迫」「嫌がらせ」に当たるかもしれないものは金明秀先生の「サイッテーやな、フィフィ。以後は手加減しないよ」というツイートであるが、これはフィフィの度重なる無責任な発言に対して“これまでは遠慮していたが以後は徹底的に批判する”と宣言しただけの発言であって、こんなものは「脅迫」にも「嫌がらせ」でもない。社会的な影響力のあるタレントの無責任な発言に対して常識の範囲内で批判することが「脅迫」や「嫌がらせ」に当たるのであれば、民主主義など成り立たないだろう。
 つまりこの記事は、フィフィさんの主張に過ぎないものと客観的だが無関係な事実を織り交ぜることによって、あたかもフィフィさんの主張も事実に基づいているように錯覚させるというテクニックを用いて書かれている。当然のことだが、金明秀先生がどこの小学校を卒業していようが、フィフィさんが何歳のときに日本に移住していようが、金明秀先生がフィフィさんに「脅迫」「嫌がらせ」をしていることの裏付けには成り得ない。

 要するにこの記事は、捏造こそ巧妙に避けているものの、読者が明らかに事実と異なる誤解をするようしむけ、金明秀先生の名誉を毀損するように書かれているのだ。こういうテクニックにやすやすと釣られるような人は、“マスゴミ(笑)”などとバカにする前にネットから離れよう。迷惑です。

 なお、タイトルの“「脅迫」「嫌がらせ」を暴露”という部分に関しては、“暴露”という言葉が“真実を明らかにする”というニュアンスがあるため、事実に基づかない捏造にあたる。もしかすると、カギカッコ付きにすることで、“あくまでフィフィさんの主観について言及したものなので事実に反しない”と主張するつもりだったのかもしれないけど、そこまでは普通読み取れない。


 まあフィフィさんに関しては、このツイート

に尽きる。


 私や友人たちがIBTIMESに抗議のメールを送ったところ、現時点(2013/4/23/09:58)では、“【訂正】記事タイトル、本文中の「脅迫」という表現に関しまして不適切と判断し、訂正させていただきました。”という断り書きと、タイトルからの「脅迫」という単語の削除がなされている。でもそんな小手先の修正じゃ足りないってば。

 

2013/4/24 追記
 唯一の黒字部分に関して、“いーや、これは脅迫だね。少なくとも相手は脅迫だと感じるね”というコメントをしつこく頂いたので、昨年11月の金明秀先生のツイートを転載します。


 要するに”手加減しない”という発言を受け取った直後に、それが“徹底的に批判する”という意味であることをフィフィさんは知らされています。それを半年近く経った今、最初のツイートだけ切り取って非公式RTした意味、もうお分かりですよね?あなたの善意はフィフィさんに喰い物にされています。



4/24 もう一個追記
 記事中の、フィフィさんのお気に入り欄には嫌がらせのツイートが保存されているという件について。
 まず、金明秀先生以外の人間が嫌がらせのツイートをしていたとしても、金明秀先生が脅迫や嫌がらせをしているということの裏付けにはならない。
 次に、フィフィさんのお気に入り欄をAPIの許す限り遡ってみたのだが、脅迫や嫌がらせの類は見つけられなかった。せいぜい、無責任な発言に対する批判ぐらいである。
 で、そのことを念頭に記事をもう一度読んでみると、フィフィさんがフォロワーをお気に入り欄に誘導したこと、嫌がらせをされたと主張していることは書かれているが、お気に入り欄に実際に脅迫や嫌がらせのツイートが保存されているとは一言も書かれていない! 井上香記者は、事実を捏造することを巧妙に避けつつ、読者がフィフィさんの主張を真実だと信じるようにしむけている。まんまと乗せられた皆さん、お疲れ様。