癌の告知を受けた母に私は聞きたいことがたくさんあった。
母は「ずっと病院かかって検査もしていたのに・・・もうだめなんだって」
と乾いた声で私に言った。
だめってどういうこと?
手術は?抗がん剤は?放射線治療は?
手術するには難しい場所であること、
そして母の年齢の患者には通常、手術はすすめないとのこと。
私は初めて母が70代に達した高齢であることを意識した。
母も同じだった。
「お母さん、高齢なんだって・・・。」と、母がぽつり。
「抗がん剤での治療はできるんじゃないの?」
「いや、しないよ。抗がん剤で苦しい思いをして2,3か月余命が伸びたって嬉しくない。」
医者との話を聞くと、抗がん剤治療での回復は
「ゼロパーセントではない」とのこと。
「ゼロパーセントじゃないって、それはもうだめってことと同じですよね」
と母は医者に言い、その場で何もしないことを決めたと言った。