今日、初診で診察を受けていただいた患者さんのことで、感じることがあったので投稿します。
20歳代の男性で、様々な不調があり、東京の有名な栄養療法のクリニックにかかっていたということです。

遅延型フードアレルギー検査で、乳製品や小麦などたくさんの食材に強い反応が出ているということで「リーキーガット症候群」があると診断されました。
何種類かのサプリメントで治療を開始され、身体の不調は良くなったということです。
ここで終われば、めでたしめでたしなのですが、私が引っかかったのはここから先の展開です。

治療効果判定のために、もう一度「遅延型フードアレルギー」検査を受けたところ、食品除去していた乳製品や小麦に対しての反応が全く改善していなかっただけでなく、最初は反応が出ていなかった食材にまで反応が出ていたのです。
そして、診察を受けた時に、「いつになったら、乳製品や小麦を食べれるようになるのでしょうか」と尋ねたところ、「小麦と乳製品は一生食べれません」と容赦なく断言されたということです。

患者さんは、それで不信感を感じて、今回当院を受診してくださったということです。

私が感じた問題点をいくつか挙げてみます。

1 東京の栄養療法のクリニックで行った治療で身体の不調は良くなったので、結果は出ているということは言えます。ただ、処方されていたサプリメントを確認しましたが、リーキーガットを修復するようなサプリメントは全く入っていませんでした。メインはフードアレルギー検査で陽性に出ていた食材の制限であったようです。
リーキーガットの治療は行われていないので、腸管から食物が漏れる状態は変わっていません。半年間厳格に食事制限をしていても、かえってフードアレルギーの反応が増えたのはこれが原因です。食事制限をしただけではリーキーガットは治らないのです。

2 小麦や乳製品が良くないという情報はネットでもたくさん拡散しています。恐怖心や不安感を煽る情報であればあるほど、拡散しやすいのです。もちろん、小麦や乳製品にはグルテンやカゼインというタンパク質が含まれていて、それが腸管や身体に悪影響を与えるということは客観的な事実です。
しかし、私が思うに、大半の人は小麦や乳製品を食べても全く何の症状もなく元気で過ごしておられます。
ましてや、今回の患者さんは20歳代の男性で、元気になったら小麦や乳製品は食べれるようになりたいと思っておられます。それを「一生食べれません」と一刀両断しても良いものでしょうか?

医者によって小麦や乳製品に対する考え方は色々とあるでしょう。その主治医の先生も決して間違ったことを言っているという自覚はないと思います。ただ、元気になって何でも食べれるようになりたいと思っている患者さんに対して、自分の「信念」を押し付けても良いのだろうかと思います。

私は、決して小麦や乳製品を無制限に摂っても良いと言っているのではありません。実際に、小麦や乳製品を摂ることで体調が悪くなる患者さんもおられます。そういう方に対しては、一時的にでも摂取するのを制限することは重要だと思っています。ただ、それはあくまで一時的な処置であり、きっちりとリーキーガットが修復されてくれば、食べても全く症状が出なくなってくるのです。

小麦や乳製品を摂っても全く不調が出なくなった時点で、いろいろな情報をもとに、自分は小麦や乳製品を摂るのは控えておこうというのは、患者さんの「選択の自由」だと思います。全く問題はありません。しかし、主治医が「小麦や乳製品は絶対健康に良くないから、全ての患者さんは食べるべきではない」と思っているとしたら、それは自分の信念の押し付けでしかないと思うのです。