私にはどうしても行かなければならない場所があった。

あれから2年。

4年目の神戸。
本気でみゆが日本一を目指したいと言った場所。


予選も決戦も無観客だった。

だけど入賞者だけが踊れる特別プログラムのみ観客を入れることになっていたから、みゆ達が賞を取ることを信じてチケットを購入していた。


8月14日の朝。

ものすごい雨。

飛行機は欠航。

新幹線まで止まったらどうやって行けばいいのか…

とりあえず新幹線に飛び乗った。


途中、やっぱり止まった。


あたしは広島で何したらいいんだろう。

そうだ綾ねーちゃんとこ行きゃいいし
たまちゃん家もあるし…
大丈夫よ。
どうにかなる、はず。



とてもとても長く感じた30分後。
車内アナウンスが流れた。
よし、動く。
ラッキーだ。


こんなこともあろうかと早めに家を出たので昼前には神戸に着いた。


あ、可愛いお花屋さん。

そだ、お花でもあげよっと。


お花を作ってもらう間、スタバで時間をつぶした。
前日に踊ったみゆ達の踊りを何度も観た。

何度見ても毎度感動する( ˙-˙ )

ダンスのことなんて右も左もわかんないで入学したみゆが…

堂々と踊ってるんだもの。

ど真ん中で踊ってるんだもの。

凄く上手。
凄く凄く上手になった。

つっちー綺麗だぁ…
のんのシュッとしててかっこいい。
りたもあやねもあいがもみおーもれいちゃんも…
みんなみんな上手。
凄いなぁ…

もう全員見分けられるようになっちゃったもんね。
誰か見付ける度に心の中で叫ぶの。

りたーーーーー

あやねーーーーー

みおーーーーー

れいちゃーーーーーん

あいがさーーーーーん

のんのーーーーー

つっちぃぃぃぃぃぃぃ

みーーーーーちゃーーーーーん


もう一人ひとりファンカム状態よ。


みんなたくさん頑張ったんだろうなぁ…

想像するだけで涙が出ちゃう。


よし8個の小さなブーケ、できた。

これ持って、会場へ。


ドキドキする。




むむ。

高校生に挟まれてしまった…


ちょっと席を離れよう。


そう思ってロビーの椅子に座った。





『ゆき先生…ですか』




「あっ…はいっ」

思わず立ち上がると…




『りたの母です』




みゆの同期のりたのお母様が声をかけて下さった。


とっても綺麗。

優しそうなオーラ。

りたとそっくり。




しばらくして……




『緒方先生ですか?』




「はいっっ」思わず立ち上がると…




『山城です』




なんとまぁ、みゆが1年生の頃のキャプテンの山城先輩ではないですか!!


今は助手さんをされていて、ずっと会いたかった人の一人。


本当に会えて良かった。


直接お会いして目一杯の御礼を伝えることができた。


もうすでに素晴らしい一日になった。




いよいよ始まった。


どの大学も本当に素晴らしくて感動した。


体育教師として、今ここで最高の作品を体感できていること。


それこそが財産だなと…


どれもこれもみゆが繋いでくれた道だよなって。


あらためて感謝の思いであふれた。




みゆが真ん中の位置についた。


何事もなく…


とにかく何事もなく…


怪我せんで…


終わってほしい。


手を合わせてお祈りした。


たまに目を閉じた。


頑張れ。


頑張れ。


みんな頑張れ。


ラストつっちーが駆け上がった。


暗転した。


バクバクが止まらない…


またちゃんと観れなかったな。


隣に座っている高校生にバレないように涙をぼとぼととズボンに落とした。





みんな、おめでとう。

あなた達を心から誇りに思います。

この舞台に出会わせてくれて本当にありがとう。



全日本高校·大学ダンスフェスティバル(神戸)
日本女子体育大学モダンダンス部
《日本女子体育連盟会長賞》受賞


素晴らしい。
たいしたもんだ。
本当に本当におめでとう!!


4年生のみんな、お疲れさん。

よく頑張った。

よく戦ったね。


とことん悩み抜いて

皆で高みを目指して

壁を作ってはぶち壊し

それでも互いを信頼し

作品を信じて

この日を迎えたのだろうと…


作品を観ながら心震えました。



こんなにも人の心を動かせる力を…

あなた達一人ひとりが持っています。




心から尊敬しています。




本当に、ありがとう。