みなさんこんばんは、福岡市長の高島宗一郎です。

 ナポリで開催された第6回世界都市フォーラムの市長会議に出席しました。フォーラムは急速に発展する世界の国々の都市化や居住問題に取り組む国連ハビタットが主催するもので、期間中には世界中から10000人を超える参加がありました。国連ハビタットはケニアのナイロビに本部があり、福岡には世界で3箇所ある地域事務所のうちアジア太平洋地域事務所が置かれ、福岡市も様々な取組みを協力して行っています。

 福岡市は、コンパクトで住み良い都市であり、昨年、国連ハビタットから、急速に都市化が進むアジアの諸都市が、持続可能な成長を実現するためのモデル都市として評価していただきました。
 私は都市の価値を経済規模だけで測る時代は終わり、どうしたら人類が持続可能な成長を実現していけるか、そのような価値観、ポリシーでまちづくりをしていくことが大切だと思っています。それが福岡が目指す「人と環境と都市の調和のとれたアジアのリーダー都市」という都市像に繋がっているのです。

 今、人口増加や気候変動等に伴って、水不足が世界的な課題になっています。日本は水が豊かな国ですが、福岡市には大きな河川がなく1978年には大渇水を経験しました。この経験を経て、市民への節水教育や施設整備など、ソフト・ハード両面で対策を講じ、今では日本一の節水型都市になっています。

 水道の漏水率は、アジアの主要都市で30%、世界の先進国でも10%と言われていますが、福岡では市内全域の水道の流量や水圧を調整するシステムを導入し、また計画的な配管のメンテナンスを行うことで、2.6%と極めて低い漏水率を達成しています。

 また、下水を高度処理しトイレの洗浄水などに再利用したり、海水を真水にするシステムも導入してきました。

 そして、ゴミ処理では、安価で簡易、早期の跡地利用が可能、加えて安全性も高いゴミ埋立技術「福岡方式」を開発し、国連ハビタット等と連携し、海外への技術協力も行ってきました。この「福岡方式」は、昨年7月に、国連から、温室効果ガスの排出権取引の対象とすることができる新たな手法として認定されました。

 福岡市はこれまでも、このような課題を解決する都市政策や経験の共有が大切だと考え、1994年にはアジア太平洋都市サミットを提唱するなど、国や国連ハビタット、JICAなどと協力して、都市間の課題とノウハウの共有に積極的に取り組んでいます。
 国でも県でもなく、住民サービスの最前線にいる自治体同士が、様々な課題にどのように取り組んできたかを学びあうことは、住民の生活の質向上に直結するものであり、とても大切なことです。

 また視察などで福岡を訪れた方は、行政の発想や市民の行動の原点に、日本人の勤勉さ、秩序の重視、きれい好きなどの背景があることを知り、福岡、日本に尊敬を覚えて帰国するという話も沢山聞きます。このように国際的な都市間交流を良好に保つことが、ひいては福岡、日本の経済成長へと繋がることにもなるのです。もちろん、企業が今までにつちかってきた特許技術やノウハウを提供したりするものではありません。行政が課題に気付き、改善の必要性を認識するための手助けをしているのです。

 福岡市は、成長著しいアジアの活力を取り入れながら経済成長を図るだけではなく、人と環境と都市の調和がとれた持続可能な都市として、福岡市民の誰もが住みやすい、そして外からも訪れたくなる都市を実現し、目標とされる、存在感のある都市を目指していきたいと考えています。