水平線から月が昇る。

まだ日没前の海に、日月が東西の空に向き合う。

 

 

この季節なら当たり前なのかも知れないが、○○には不思議な光景に映った。

○○の故郷ではこの時期は長雨が続いて、明るい空を見られることが稀だったからだ。

 

 

ーーあの厚い雨雲の向こうには、本当はこれと同じ青空が広がってたんだ。

 

 

茜色の日暮れと、その赤を写したような赤みを帯びた満月。

出会う筈のない昼と夜が、向かい合って会する光景から暫く目が離せなかった。

 

 

甲板を横切る足音が近付いてくる。

 

 

「もう風が冷たいな」

 

 

ナギはさりげなく風上に立つ。

語らぬその優しさが、何よりも○○の胸を暖かくする。

 

 

「綺麗だね」

 

 

「…そうだな」

 

 

天頂にある月も同じ月なのに。

水平線から顔を覗かせる月は驚くほど大きく見える。

 

 

陸にいた頃には、顔を上げて見ることすらなかった空。

海の上にいる限り、見えるのは空と海ばかりだ。

 

 

見飽きるかと思っていた。

変わらなく見えるそれが、刻々と変化しているのだと気付くまでは。

 

 

日々、仲間と見る海が。

ナギと見る空が。

 

 

ひとつとして同じものはないのだと、同じ世界を生きることで知ったのだ。

 

 

「毎日違う色だね」

 

 

空を見上げて呟くと。

 

 

「そうか?」

 

 

不思議そうな応えがあった。

 

 

「全然、飽きないよ」

 

 

「そうか…」

 

 

○○の子供のような感想にナギが微笑む。

こんな時の彼は、誰よりも柔らかい表情を見せる。

 

 

「…くっついてもいい?」

 

 

「…ああ」

 

 

照れながら身を寄せ合う。

ナギの温もりに包まれて、その幸福に○○は酔いそうだ。

 

 

この船に迷い込まなければ、出会う筈はなかった。

幾つもの偶然が重なって、共にある今に○○は感謝する。

 

 

短い夜の代わりに、夕暮れは長く美しく輝く。

双子のような大きな満月も、煌々と海を照らす。

 

 

出会う筈のない日月のように、重なる筈のない昼と夜のように。

まるで違う世界を生きていた二人が海で出会う。

 

 

この奇跡がいつまでも続くように祈るのなら。

空に向かって祈りを捧げるだろう。

 

 

出会えたこと、それこそが運命なのだから。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 

 

思い付いたのは、ストロベリームーンを見た時。

海に浮かぶ月も、同じように見えるんだろうかと思ったからです。

 

 

今日は夏至です。

夜は短いけれど、夕暮れが長いこの季節は、日が暮れるまで恋人たちの時間でもいいではありませんか?

 

 

苺のような甘酸っぱい時間になるといいですね。

 

 

 

 

新緑も少し落ち着いた、柔らかな緑が広がるなだらかな丘陵の片隅に。
診療所を兼ねた青い屋根の一軒家が建っていた。


特別に混雑している訳ではないが、途切れることなく患者が訪れる。
今は流行るような病が少ない季節だから、のんびりと診察時間が過ぎていく。


ヤマトに近い気候の町だから、この季節は続けざまに雨が降る。
それがより、今日の患者の足を鈍らせているようだ。


いつもより訪れる患者が少ない診察室では、ソウシがカルテにペンを走らせる。
薬棚の前では、薬瓶の整理をする○○の姿があった。


雨垂れが大きく取った庇に当たって、木琴のように音を立てる。
風に煽られて強弱をつけて、外を見ずして荒天を知ることが出来る。


こんな天気では、余程のことがない限り患者は来ないだろう。
むしろ重病人が外出できずに困っていないだろうか…声にはしないが、二人の心配は同じだ。


それでも雨に閉ざされて、久し振りの二人の時間というのも悪くない。
少し嬉しくなって、○○は小さく笑い声を漏らした。


「ん、どうしたの○○?」


手を止めてソウシが振り向く。
○○は弾かれたように飛び上がって、ソウシを見返す目はまん丸だ。


「あ、あれ、私何か言いました?」


「笑っていたよ」


ソウシは優しく笑う。
○○は恥ずかしくて頬を染める。


「…患者さん来ないなって思って」


「病人はいない方がいいけど、医者としては商売上がったりだ。
因果なもんだね」


「苦しむ人は少ない方がいいもんね」


病気や怪我で苦しむ人は少ない方がいい。
医者が暇な方がいいなんて、本当に平和な証拠だ。


二人でいる時の、そんな穏やかな空気が。○○は好きなのだ。


「このまま患者さんが来ないなら、早めにお昼にしましょうか?」


「いいね、ゆっくりしたいね」


食事の支度は○○の担当。
一緒に暮らすようになって、二人でそう決めた。


ソウシが調理すると、うっかり薬草を入れてくれたりするし。
食べてから「あ…失敗した」と顔をしかめるのはイヤだから。


心を尽くして○○が用意する。
ソウシの健康を気遣い、二人の時間を大切にする為に。


窓から空を見上げて、○○はソウシに声をかける。


「外で食べませんか?」


「雨だよ?」


カルテから顔を上げて、不思議そうにソウシが答える。
その表情が微笑ましくて、○○は優しい気持ちになる。


でも今は少しだけ得意げに、雲の動きを読んでみせようと思う。


「支度が出来るまでに、止みますよ。
雲を見たら分かるんです」


海の上で培った、天候を読む特技は健在だ。
ソウシは笑って黒髪を揺らしながら頷いた。


「○○ちゃんが言うなら間違いないね。
久し振りの青空を楽しみに待ってるよ」


張り合いが出たと、嬉しそうな顔をするソウシに。
その微笑みに吸い込まれそうになって、慌てて頭を振って○○は我に返る。


下ごしらえは済ませてある、いつもより手の込んだ豪華なメニューにしよう。
だって今日は特別な日だから。


シチューを煮込む間に、屋根付きのデッキでテーブルにチェックのクロスを掛ける。
風が吹いてもう雨雲は東の空へ遠ざかっている。


やがて西から雲が切れるだろう。
目測通りの天気の移り変わりに、○○は小さく頷くと、手際良く二人分の食器をセットする。


「予想通り、雨が上がったね」


医務室にまでいい匂いが漂ってきたら、呼ばれるまで待てないソウシがやって来る。
その頃には彩り豊かな料理がテーブルに溢れていた。


「わあ、豪勢だね!」


目を丸くして、ご馳走を見回す。


ーー今日がどんな日だか、忘れちゃってるんだから。


いつも自分のことより人のことを優先。
そんな人だから自分のことは覚えている筈もなく、豪華なランチに心当たることもない。


美味しそうだねと喜ぶソウシの顔が見られて、○○も満ち足りていく。


風が湿気を払って、吹き抜けていく。
さやさやと風の後を追って草の波が走っていく。


次第に雲間から青空が見えてくる。
ゆっくりと草原に日が差して、日向が広がっていく。


雨で濡れた草原が、日差しを浴びて輝くのは。
二人の目には見慣れた筈の光景が、生まれたての世界のように映る。


「本当に美味しいね、今日は何の記念日だい?」


呑気にそんなことを言うソウシに、可笑しいやら呆れるやらで。
笑ってしまう○○に釣られて、ソウシも不思議そうに微笑む。


「…あ!」


「え?」


○○の声に驚いて振り返ると。
見覚えのある懐かしい五つの人影が近づいて来る。


「船長ーっ!」


○○が椅子から立ち上がり、手を振ると。


「よお○○!
ソウシ、元気か!?」


相変わらずよく響く、リュウガの声がこだまする。


「え、えっ?」


ソウシの目が真ん丸だ。


「ソウシ先生、お誕生日おめでとうございます!」


「えっ、誕生日?」


トワの言葉に、ますますソウシの目が丸くなる。
とうとう○○が腹を抱えて爆笑した。


「やっぱり忘れてる〜っ!」


机に突っ伏して涙を流して大笑いする○○と、突然現れたシリウスの仲間達にソウシの目が交互に注がれる。
そして破顔一笑、○○と一緒に笑い出した。


「そうか、私の誕生日だった!」


テーブル越しに○○を引き寄せ、頬ずりする。


「こんなに素敵なご馳走、ありがとう!」


「や、やめてよ、みんな見てる!」


「俺達に構わずやってくれ!」


豪快に笑う船長と、はしゃぐ二人を見てみんなが笑う。


ナギの手料理とシンが選んだワイン、沢山の土産がテーブルに並ぶと、海賊達の宴の始まりだ。


「もう…ここは診療所だよ?」


「まあまあ、今日はセンセイも休業ってことで!」


ハヤテが笑いながらソウシの肩を押して座らせる。
ソウシは困った顔をするが、海賊達はお構いなしだ。


ーーでも、ソウシさん嬉しそうだな。


仲間に囲まれてこの世に生を受けたことを祝福される。
ソウシにとってこんな喜びが他にあるだろうか。


ーーありがとう、みんな。
今、ソウシさんはみんなに囲まれて幸せです。


ーー生まれてきてくれてありがとう、ソウシさん。
あなたに出会えたことに感謝しています。


どんなに雨の日が続いても、厚い雨雲の向こうには青空が広がっているのだと。
雨が上がるたびに眩しい青色に驚かされる。


雨の日には二人でゆっくり、晴れたなら外へ出よう。
一緒ならどちらでもきっと幸福だと思えるから。






:*:・☆:*::*:☆・:*:☆:*:・☆:*::*:☆・:*:





ソウシさん!
お誕生日おめでとうございます(⌒▽⌒)


梅雨の時期にはソウシ誕。
今年のそらみのソウシさんは、ヒロインと船を降りて暮らしています。


ヤマトにも近い、よく似た気候の島で。
医者として島民の信頼を得て暮らしていることでしょう。


シリウスは今も何処かで航海を続けているのでしょうか?
そんな仲間達の集まれる居場所にもなっている、二人の住まいはそんな優しい場所になっているといいと思います。


医師として日々精進することと、ヒロインと暮らす幸福以外には無頓着なソウシさん。
誕生日なんてカルテに書いてある患者の誕生日の方が頭に入っているくらい。


ヒロインとしては何ともヤキモキしてしまうところですね。
もっと自分を大切にしてほしいと思うところです。


でもね、ソウシさんだけは分かっています。
自分が気付かなくても、ヒロインがソウシさんを大切に思っていることを。


でも、ヒロインに心配をかけないのも大事だよ!
お幸せにね☆-( ^-゚)v






































「マスターのだし巻き卵…食べたいな」

 
 
故郷恋しさの呟きではあったが、寂しげなその言葉にナギの庇護欲はいやが上にも高まった。
 
 
どうしたら笑顔を見られるのか。
何をしたら喜んでくれるのか。
 
 
無骨な料理人に思いつくことなど、たかが知れている。
言葉では優しくできないなら、やることは一つだ。
 
 
ヤマト食は旨味が大事だ、しっかり出汁を取ろう。
幻のアゴで伝説の黄金の出汁を、じっくり時間をかけて煮出そう。
 
 
米は有機栽培のコシヒカリ。
一粒ずつ立ち上がる、甘くふっくらした米へと炊き上げるには羽釜は必須だ。
 
 
まだ成長期なのに食生活は貧しかったのかもしれない。
娘らしいふくよかさに乏しい。
 
 
それもこれも、滋養ある食材で極上のメニューを取り揃えれば。
○○の心身を豊かにするに違いない。
 
 
目の前のご馳走を魔法ではないかと目を擦って。
夢ではないと分かれば瞳を輝かせるんだろう。
 
 
故郷の味も、見たことのない料理も口にしては感激する姿が目に浮かぶ。
 
 
「美味しいです、ナギさん!」
 
 
嬉しさ一杯の笑顔。
ナギの料理で○○が元気になれるなら。
 
 
どんな望みだって叶えてやると、ナギは静かに決意した。
 



 
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
 



 
「新作ですね...うん、これも美味しいです!」
 
 
「...そうか」
 
 
○○笑顔が、胸を温かくする。
ナギの表情もいつもより少しだけ優しい。
 
 
「でもね、ナギ...食べさせ過ぎはよくないんだよ」
 
 
ソウシが心配して声をかける。
 
 
「ダメだな、聞こえてねー」
 
 
「離乳食を与える母親のようだな」
 
 
「いや、ペットに餌付けする甘い飼い主みたいです」


ハヤテ、シン、トワが次々に口を挟むが、ナギと○○の耳には届かない。


ソウシだけはハラハラと、○○の見事な食べっぷりを心配する。
 
 
「激太りは体に悪いんだって...」
 
 
「まあいいじゃねえか、俺はふくよかな女も好きだぞ!
柔らかそうな二の腕が、裾から見えるのも色っぺーだろ」
 

船長は大らかに笑う。


自身も大酒飲みでソウシに叱られる立場。
同じ境遇の仲間が出来て矛先が逸れたことに密かに喜んでいる。
 

しかしその軽口を聞き流せない料理人がいた。


「...船長、邪な目で○○を見ないでください」
 

鎖鎌の代わりに投げる視線に、トワがビクッと体を震わせる。

 
「あわわ...目だけで人が殺せそうですよっ」
 
 
「そんな好みは船長かシンくらいだろ」
 
 
「オレはデブ専じゃない!」
 

ハヤテの失言にシンが激怒する。
ナギと○○は周囲の騒ぎには全く関知せず、二人の世界を作っていた。


「ほら、これも食っていいぞ」


「うわぁいやったー!いただきまーす!」


何度頂きますを繰り返すのか。
出会った頃の可憐さは微塵もない巨体にげんなりする。 


ナギは食べさせることそのものに喜びを感じる為、親鳥のようにせっせと餌付けしている。
それまで質素な暮らしだった○○は、突然のご馳走三昧に「食いっぱぐれるまい」と実によく食べる。


需要と供給がピタリと一致して、ナギの願い通り○○は笑顔いっぱいだ。
何だか雛に餌を与える母鳥のようだが…。


「ダイエットしなさい!」


ソウシの言葉に敏感に反応する。


「ええっ!?」


「嫌だ!」


嫌がる人が本人じゃないのは置いといて。
丸っこいと安心なのは、小動物と同じらしい。


○○が大きく育つのが、今はナギの幸せなのである。




ナギさん!
お誕生日おめでとう!
ナギさんのご飯が一生食べたいです! ←プロポーズ


ナギさんのご飯が美味しくて、太るなら本望です(・ω・)/






初めて出会った頃はただの港町の小娘だったけどよ。
お前、いい女になったよな。


自分の力で仲間と打ち解けて、助けられながらいろんなことを覚えて、今じゃすっかり海賊仲間だ。


働き者だし、めげないし。
何と言っても、食卓があったかかったなあ。


ナギの腕は抜群だが、とにかく仏頂面だからな。
○○がいると、空気がこう…柔らけえんだ。


お前と一緒に旅した時間は心地よかったよ。


ハヤテやトワと戯れる姿を、俺達が笑って眺めてるなんてこともあったな。
甲板で風に吹かれながら、お前を見てるのは楽しいひと時だ。


俺達は海賊だ。
決して正しい道を歩いてきた訳じゃねえ。


家族との縁が薄い奴が殆どだ。
忘れていたことも、知らなかったことも沢山ある。


お前から貰ったもんは胸があったかくなる、ちょっと言葉には出来ないもんばっかりだな。
俺達は競ってお前にいろんなことを教えたが、貰ったもんの方が大きかったんじゃねえか?


皇子サマに出会って、お前達が惹かれあっていくのを見守って、ちょっと寂しい気もしたな。


やっぱり○○はシリウスのお姫様だからな。
ヨソの男に掻っ攫われるのは気持ちのいいもんじゃない。


しかしな、お前があの皇子サマを支える覚悟を決めたんなら認めるしかねえだろ。


あいつの伴侶になるってことは、あの古くてデカい国を一緒に支えていくってことだ。
生半可な決意や努力じゃやっていけないってことは、小さなお前にだって分かっていただろう。


ソウシやシンの知識は、これから暮らす世界ではきっと役に立つ。
皇子サマの為に頑張るお前は、さすがは俺達のお姫様だ。


それがお前の幸福だというのなら。
海賊王は若き皇帝に、俺の大切な真珠姫を委ねよう。


皇帝は神でもご先祖様でもねえ、この俺に○○を幸せにすると誓え。
幸せでなかったら、腕にものを言わせて奪い返すまでだ。


まあ、あいつなら任せられるとは思うけどよ。


○○、幸せになれ。
俺はいつでもお前の幸福を願っている。


皇帝の望む幸福を与え、奴を支えてやれるのはお前だけだ。
いつか母になったら、子供達にも沢山の愛情を注いでやってくれよ。


お前の愛は豊かだ。
きっと宮廷にいても、お前が周りの人間を幸せにするだろう。


俺は海に戻る。
大切に守ってきたお前を陸に残して。


それでもお前は、これからも俺達のお姫様だ。
俺達はいつだってお前の為に駆けつけるだろう。


傷付き倒れる時はお前の腕の中で…と叶わぬ望みを胸に秘めて。
俺は今日、出航するよ。


○○、またな。






☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*





リュウガ船長、お誕生日おめでとうございます!
そして何よりも、真珠姫こと親愛なるまちるさん、お誕生日おめでとうございます!


ここ数年の流れで、今年も連作のような余韻を感じて頂けたらと思います。


リース皇帝と真珠姫の挙式の後、シリウス海賊団はどんな余韻に浸るんだろう。
きっとヒロインに恋した海賊もいたでしょう。


せっかくの誕生日だし、代表して船長に失恋してもらいましょう!
そしていつか、海賊王は真珠姫の元に還るという伝説になればいい。


その時には「港々に女がいても、愛した女は真珠姫だけ」って美しい伝説になればいいのよ。


ヒロインってばモテモテねえ〜♪( ´▽`)
そういう風に書いたんだけどさ。



『冬の夜空はとても華やかです。
冬と言っても、西の地平線にはまだ夏の星座が残っています。


クリスマスの頃、夏の大三角のひとつ白鳥座が、夏とは逆さまに輝いています』


プラネタリウムの丸いドームに、静かに解説の声が反射する。
リクライニングの背もたれに体重を預けて人口の夜空を眺める方が、実際の夜空を見上げるより簡単に星を見つけることが出来た。


冬の夜空は漆黒の中に瞬く星々が鮮やかだ。


西の地平線に夏の大三角、天頂には秋の四辺形。
東の空には大きなオリオン座。


降るような星空を見上げる。
実際にはそれは人工の空なのだが、瞬きまで再現されて実際の空より見事な星空なのだ。


暗い室内では、星の僅かな色の違いが判別出来るくらいで。
隣の顔も見えないほどの闇に包まれる。


作り物の夜空の下で、一人きりになったような心細さに襲われて。
そっと隣を窺うと、闇の薄い地平線を背景に、辛うじて横顔が浮かび上がる。


朧げだが見慣れたシルエット。
愛しい人は確かにそこにいる。


一人じゃない。
安心してまた、星空を見上げる。


右手にそっと温もりが触れる。
ハッと小さく息を呑んで隣を見ると、僅かな光を反射して、問いかけるように瞳が煌めいた。


星みたいだな…人工の夜空を見上げることも忘れて、互いの瞳を見つめていると。
右手に触れる手が、しっかりと握る形に包み込んだ。


頭を地上に向けるその姿が、十字架のように見えるため、この時期の白鳥座は北十字とも呼ばれます。
聖夜に天に十字架が浮かぶなんて、とてもロマンティックですね』


夏の星座が季節が移ろい、意味を変えて輝いている。
夏が過ぎ、秋が過ぎ、迎えて共に過ごす冬となった。


『冬の空に輝くのは、全天一明るいシリウス。
シリウスとは「焼き尽くすもの」という意味を持っています』


ナレーションに再び星を見る。


シリウスーー冷たい夜空を焼き尽くす炎。
決して消えない冬の灯明。


その輝きを辿っていくと、行き着くのは温もりの主。
静かに燃える瞳の恋人だ。


今日という日を一緒に過ごせて、何て幸福なんだろう。
時が止まってしまえばいいのにと、甘い不満が胸をよぎる。


もう少し一緒にいて。
一緒に本物の夜空を見上げて探したい。


十字架になぞらえた白鳥座。
天頂に羽ばたくペガサスの翼。


勇猛なオリオンが棍棒を振り上げる。
そして、何よりも輝かしいシリウス。


ーーーあなたと見上げる空に、シリウスがあればいい。


寒さを堪えて、しっかりと手を繋いで。
並んで見上げる空に、目指す輝きはシリウス。


きっと星の下にいる二人の時間は止まって。
一生忘れることのない輝きが刻まれる。


街灯にもイルミネーションにも代えられない。
頭上には満天の星。


世界に二人きり。
星々が鳴り響く、降るような聖夜に。






☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*







クリスマスにプラネタリウムデート。
それは単なる私の好みです(笑)


幾つもの季節を過ごして、クリスマスに辿り着いた恋人同士。
あなたの押し海賊を当てはめて、妄想して頂けたら嬉しいです。


私は勿論、ナギさんですよ。
当然ですね!←鼻息荒いな


ナギさんの大きな手が、暗がりでそっとワタクシの手に触れるのです。
キュッと握ってくれるのです!


輪郭も朧なのに、僅かな光を反射するナギさんの強い瞳…おっとヨダレが。


他のメンバーなら、どんな視線を送るんでしょうね…!
見えないけれど、どんな表情をしてるんだろう。


暗がりは見えないものを明らかにすることもあって、想像するだけでドキドキします(≧∇≦)


皆さんも心の恋人と、素敵な聖夜をお過ごしくださいね!
私も今からイメトレしなくっちゃ( ̄^ ̄)ゞ