逍遥メモリー 第二頁 -7つの札- | lavaの創作ストーリー用ブログ

lavaの創作ストーリー用ブログ

lavaの創作ストーリー『LAVARATORY』を小説化したものを載せています。
厨二病なバトル小説書いています。

そして、彼は徐に口を開いた。
「…当時話題になっていた、7つのカードの存在…覚えているか?」
「あぁ、勿論…」
『7つのカード』…
そう、それは、得る事で様々な能力を手にする事ができるという…我々の白軍では昔から受け継がれてきたアイテムだった。
まだこの時、俺はフィートさんとは面識がなかったが…当時のフィートさんは、旧白軍からそのカードを受け継いで、当時白軍に加入していた数少ないメンバー達に配り、各能力を与えて軍の戦力の向上を謀っていた。
更に、そのカードはある程度の所持期間を経過すると、その人物に能力が定着して宿る。
そのはずだったのだが、当時白軍に配っていた期間はほんの僅か。
全くといっていいほど、その能力は定着していなかった。
それどころか、その能力の使い方を分かっていない者ばかりだった。
…たった一人を除いて。
そんな中、そのカードの噂を聞いて俺達に挑戦状を出してきた奴等がいたのだ。
前述のファルギアを含む、ヴェンジャンスと呼ばれる団体だ。
当時の彼とは、もう何年も会っておらず、仲も良くなかった。
此方に敵対心を持つどころか、私怨を抱えていた彼等は、新たな仲間を得る序でに、戦力の足しとしてカードを集めるため、挑戦状を出して俺達を使った。
更にその挑戦状の噂を聞き、フィートさんが俺達を白軍に引き入れて仲間にするのに丁度良いと考え、俺達の見定めをしようとした。
それで、当時の白軍加入メンバーと戦わせたのだった。
イグラスは、その当時のメンバーの1人だったのだが、唯一、他のメンバーには存在を知らされていない、シークレットメンバーで、類稀なる能力や戦力を評価して、切り札として用意していた要員だったようだ。
まぁどうやら、当時のディザスターはそんな彼を誤って殺してしまったと思っていたようで、結果としては殺人未遂…
イグラスは負った怪我もすぐに治療を終え、復帰も早かったようだ。
「そう、イグラスもあのカードの持ち主の1人だったんだ。属性は『毒』…。」
そうそう、あの『7つのカード』には各属性があり、それぞれ、炎、水、電気、毒、闇、草原、光。
各人の体内に波動として流れる属性と合致している必要がある。
人によっては、その属性を複数所持している場合もあり、複数属性が使用できる者も存在する。
「俺は勘違いしていたんだ。目的は空間技という伝説の能力が使える『闇』のカード。」
『空間技』。
それは、空間と空間を繋ぐ事でより幅広い行動が可能になる、えげつない技。
その見てくれは、まるで宇宙に存在するブラックホールのような形状…
旧白軍の頃のボスから受け継がれてきている、伝説の能力だ。
「イグラスは『毒』のカードを所持していたのにも関わらず、空間技の使用が可能だった。というのも、軍に加入する前から、彼の師匠であるアクトから教えこまれていたんだ。」
アクト…
彼は、旧白軍のボスであるフィアラルティリアとは幼い頃から何やら深い関わりがあったそうで…
そこに縁がある事から、幼い当時から『闇』のカードを渡されて、カードの効力の実験台としても使われていたそうだ。
そのお陰か、『闇』のカードの能力は完全に定着し、最早その彼の十八番と呼んでいい程の扱いっぷりだ。
そんなアクトがまだ、『闇』のカードを所持していた頃に、イグラスを弟子にしていたそうだ。
イグラスには、毒だけでなく、闇の属性も所持していた。
そのため、イグラスにも空間技が受け継がれていたという訳だ。
「だから、所持カードとは関係が無く、イグラスは空間技が使えていた。それを勘違いして、イグラスの持つカードを手に入れれば、空間技を得られると思っていたんだ。」
「…なるほどな。…それで、イグラスを狙いに行ったと。」
「あぁ、最初は交渉だけのつもりだったんだ。けれども、渡された『毒』のカードは、空間技を得られない。属性が違う事に気付かなかった俺は、頭に鮮血が上り、激昂してしまったんだ。揉み合いになり、イグラスを誤って転落させてしまい、そこには彼の身体から流れ出した鮮血…。怖くなり、逃げ出したが、当の本人はまだ意識もあったようで、例の空間技でフィートさんの元へ帰り、あっさり復活したようだ。それも知らず、俺は苦悩の末に自首をした。殺人を犯してしまったと思い込んでいたのだが、実際は未遂していたとの事で、釈放は早かった。復活も早く、後遺症も無かったそうだ。」
「…な、なるほどな…」
詳しい事情を初めて知った。
当時の俺達はまだまだ若かった。
それもあってか、考え方に未熟さが窺える。

「…今回のイグラス狙いも、カードや空間技が目的…だと思うか?」
「いやぁ…それは考えにくい…。カードは今や、ファルギア達の手元だ。幾ら彼がファルギア達の仲間とは言えど、当時殺されたと思われていた彼に、カードは戻ってきていない。カードを狙っているなら、真っ先にファルギア達を狙うだろう。」
「あ、確かに…そういえばそうだったな…」
…これで、動機の目星がつくと思っていたのだが、期待外れだったようだ…
「それじゃぁ、ここらで…」
「!?」
「なっ…!?」
突然、爆発音が轟く。
俺ではなく、ディザスターが来た方向から…
「まさか…」
俺達の拠点の基地…
「フィートタワー!?」
その爆発音の方向を見ると、高く聳える塔のような基地の上層階の方が爆発しているのが、微かに見える。
上層階という事は…ボスが…!?


続く。