以前、その当時担任していた特別支援学級の親子レクリエーションで、近くのスキー場でソリを楽しんでいた。レクには、幼稚園に通っている6年生の女の子の弟も一緒に参加していた。この日は、平日であったが、私たちのほかにも複数の親子が利用していた。
   ある時、この幼稚園児の男の子がお父さんと一緒にソリで滑り下りてきたときのことである。その直後、別の親子が上から滑ってきて、先に滑り終わっていた男の子にものすごいスピードで衝突した。その男の子は衝撃のために一回転して頭を雪上に強く打った。その時、男の子に衝突した親子の若い母親が、男の子のすぐ近くにいた父親にこう言った。
気をつけさせたほうがいいですよ。
私は耳を疑った。当然“謝罪”の言葉が出てくると思っていたら、まさかの“逆ギレ注意”だったのである。今のご時世、こういう若いお母さん方が増えているのだろうか?と首を傾げたくなった。

   さて、なぜ私がこのときの話を思い出したかと言うと、昨日の午前中の“あること”があったからである。
   自宅の呼び鈴が鳴ったので、玄関のドアを開けた。すると、あの“スキー事件”の母親と同じ位の年頃の若い母親が、幼い子供と一緒に立っていた。話を聞くと、駐車場に止めてあった車を出そうとしたら、誤って私の車に接触してしまったと言うのである。その母親は、何度も何度も私に頭を下げ一生懸命に謝罪した。車の傷も大した事はなく、逆に私の方が恐縮してしまう位にその母親は誠実な態度で私に謝ってくれた。私は、「若いのにしっかりしたお母さんだなぁ」と感心した。

   そんなことがあったため、逆に、思わずあの“スキー事件”のことが思い出されたのである。
   この2人の母親は、いずれも自分が過失を犯した立場にいた。それなのに、二人の態度はなぜこんなにも違っていたのだろう。(続く)