【今回の記事】
   今回は、精神科医の岡田氏の著書の中から、母親を金属バットで殴り殺した若者の事例を紹介します。以下は氏の文献の中からの引用です。
   
「今世紀に入って若者たちによる、親や教師、時には無関係な他人を傷つけ命を奪うという事件が相次いでいる。彼らに共通するのは、深い自己否定と疎外感を抱え、自分を認めてくれなかった親に対する悲しみや怒りを最後に復讐することで晴らそうとしたことである。
   中学、高校と不登校になり、最後には金属バットで母親を殴り殺した若者Aの母親は、彼が幼い頃からいつも、彼が何かしようとすると、あれこれ口を挟んでやめさせたり、別のことをさせようとしたりした。彼はいつも言われる通りにしてきた。
   だが、自分が高校生となった今では、(自分に対して何も言えなくなった)母親はすぐにメソメソと泣き出す。そのこともうっとうしかった。いつしか彼の中にやるせない絶望感と、母親に対してずっと抑えてきた怒りがないまぜになって、計画的な殺意を形作っていったのである。」
※(  )内は遠藤による。

【感想】
   いかがだったでしょうか。この母親は、子どもが幼い頃からいつも「早くしなさい!」「何やってるの!違うでしょう!」等と子供を否定し、あれこれ口を挟んで辞めさせたり別のことをさせようとしたりする過保護の親、口うるさい親でした。親は良かれと思ってしていたことだったとは思いますが、子どもに対する否定的なものの言い方があまりにも強すぎたのです。そして、高校生にまで成長した我が子の復讐に対しては、一人の女性に過ぎない母親はあまりにも無力でした。「子どもの躾は父親の役目」と言われる意味が改めて分かります。
   今は、殺人事件のうちの5割が家族内の事件と言われています。いつも生活を共にしているからこそ、日常的に受けている否定的な扱いがストレスとなって子どもの中に溜まり続けて、ついには親に対して最終的な手段をとってしまうことになるのでしょう。