【今回の記事】「子どもの声はうるさいですか?」 室内環境への新たな取り組みとは

   近隣からの苦情の声が絶えず寄せられていた保育園の子どもの声とどう向き合うのか?
   無数の小さな穴が開いている吸音板。これは、学校の音楽室に壁によく取り付けられている板である。「パン」と手を叩いても、残響がほとんど残らない。この板を天井に取り付けて、近所への騒音対策を実らせた保育園があるというのだ。
   声が響すぎて相手の声が聞こえない、だから自分ももっと大きい声を出す。この悪循環が「騒音」を生んでいたのである。保育士は話す。「大きい声でまず、何かを言うことがなくなった。イライラ感が、減っているんじゃないかなと思います」この環境は保育士にとっても余計に大きな声を出さなければならないストレスのかかる環境だったのだ。しかしこの吸音板を取り付けたことによって、余計な響きが消え、相手の言葉が聞き取りやすくなり、保育士も園児もそんなに大きい声を出さずに済むようになった。それによって全体として保育園から出る音の量は、以前と比べてかなり小さくなったのである。

   目からウロコが落ちるような見事な解決策である。
   しかし、「声が響すぎて相手の声が聞こえない、だから自分ももっと大きい声を出す」ということは、実は学校でもよく見られる光景である。学級担任の声が大きいクラスは、それにかき消されないように友だち同士で話すことになるので、やはり子どもの声も騒がしいのである。そうすると、やはり教師も子どももストレスを感じ、感覚過敏な子どもは登校を渋るようになるケースもある。さらにその状態が続くと、学級崩壊に至る場合もある。
   だから、指導力の高い教師は、大切な話をする時は、わざと声を小さくすることがよくある。すると、子どもも注意を払って話を聞くようになる。そういう学級は落ち着いている。「静かさ」は、子どものストレスを弱め、逆に集中力を高めるのだ。
   家庭でも、親がいつも大きな声で子どもを注意していると、子どもは無意識のうちにストレスを感じるため、その注意に余計に反発し、より大きな声で言い返してくる。そうなると次第に親のストレスも増していく。そうならないように、大切な話をする時は、逆に小さめの声で真剣に諭す言い方をするとよい。子どもの心に入りやすいからだ。