【今回の記事】
注意!モンスター化する「自分大好き」な人たち

【記事の概要】
(精神科医の片田珠美氏による記事です。)

皆さんもちょっと気になっているかもしれませんが、最近、「自分大好き」という人間が蔓延しているように思いませんか。その一因として、戦後の民主的な社会で浸透した「平等」という幻想の崩壊が挙げられます。「みんな平等」などと学校でも教えられ、それを信じていたのに、現実には「勝ち組」と「負け組」の格差が拡大していることもあって、そんな幻想を信じられなくなりつつあります。教育には多額の投資が必要であり、名門大学ほど裕福な家庭の子どもが多い――。そんな現実を突きつけられると、「負け組」はどうあがいても、「勝ち組」との格差を埋められないのではないかという気になります。最近では、ツイッターやインスタグラムなどSNSの普及で他人の生活を簡単にのぞき見ることができるようになったことも、羨望をかき立てる一因になっているようです。さて、羨望とはいったいなんでしょう?羨望を「他人の幸福が我慢できない怒り」と定義したのは17世紀のフランスの名門貴族フランソワ・ド・ラ・ロシュフコーですが、まさに言い得て妙です。だって、そうでしょう。SNSは、「リア充」(リアル=現実の生活が充実している様子)自慢や幸せアピールでいっぱいなのですから。たとえSNSに投稿された画像がちょっと見栄を張った虚像であり、実像とはまったく違っていたとしても、見ている側は「あの人は、あんなに充実した人生を送っていて幸せそう。それにひきかえ自分は……という気持ちになるものです。だからこそ、「他人の幸福が我慢できない怒り」を抱くのですが、それでは自分があまりにも惨めです。そこで、「自分だってこんなにスゴイんだ」と誇示したり、特別扱いを要求したりして、自分の価値を他人に認めさせようとするわけです。こうした反応は、他人との比較によって自分自身の優位性が脅かされた際に表れやすいようです。ときには過剰反応してしまい、傷ついた自己愛を補完しようとするあまり、暴走してモンスターになることもあります。それでは、「自分大好き」人間の5つのタイプを紹介して、その心理を分析してみたいと思います。

【1】自己顕示型~セレブ気取りの虚構

【2】自己陶酔型〜あら探しという復讐

【3】特権意識型~特別扱いが当然

【4】過大評価型~自慢は過去の栄光

【5】無価値化型~弱者への八つ当たり

※それぞれの詳細は上記記事をご参照ください。

   このように、「自分大好き」人間は、自分自身の優位性を常に確認せずにはいられず、さまざまな振る舞いに出ますそのせいで周囲の反感や敵意を買いやすいようです。はた目にも“痛い”と映ることがしばしばあります。ですから、「おべっか使い」である自己愛のせいで暴走していないか、わが身を振り返るまなざしを常に持っておきたいですね。

【感想】 
   専門家による指摘ですから、私などがどうこう言うことはないのですが、文字通り「感想」を述べさせていただきます。

   まず、自己愛(自分本意の考え方)の人は、自分の力では自分の価値を高めることができないために、「羨望」という「他人の幸福が我慢できない『怒り』」の感情を抱くのだということを知りました。そのうえで、どんな手を使ってでも、自分の方が優位な立場になるように、あの手この手を使おうとするのですね。
   ただ、その「あの手この手」の内容によって、二つのタイプに仲間分けできると思います。

タイプ①
見栄をはった偽りの自分の見せつける(自分を高める)ことで、他人より優位に立とうとする。
   【1】自己顕示型~セレブ気取りの虚構
   【3】特権意識型~特別扱いが当然
   【4】過大評価型~自慢は過去の栄光
タイプ②
相手をおとしめる(相手を低める)ことで、他人より優位に立とうとする。
   【2】自己陶酔型〜あら探しという復讐
   【5】無価値化型~弱者への八つ当たり

   ところで、どのような人が、このような「自分大好き(自己愛)」人間になるのでしょうか
   まず、幼い頃から親からあれこれ口を挟まれてきたためにいつもその通りに行動したり、常に他者の力を頼りに生きる環境で生活してきたりする過保護な養育を受けてきたことで、自分だけでは成果を出せず、そんな自分が周囲からどんな目で見られているかを常に気にしながらいつも不安な気持ちにいる「不安型」の愛着スタイルを持った「不安型(過保護型)人間」
   次に、幼い頃から親からあまり手をかけてもらえなかったために問題解決のための方法を教えてもらえなかったり、人間関係が苦手になったりする「回避型」の愛着スタイルを持った「回避型人間」。
   一方、自分の力や臨機応変に他人の力を借りながら適切に問題解決できたり、誰とでも友好な人間関係を保つことができる「安定型」の愛着スタイルを持った「安定型(自立)人間」。
   先の「不安型(過保護型)人間」や「回避型人間」には、「安定型(自立)人間」が羨ましく思えて仕方がないのだと思います。
   また、タイプ①の人は、いわゆる「痛い人」として、また、タイプ②の人は「迷惑な人」として、他人の目に映るのでしょう。本人も、そういう周囲の視線には気付いているのだと思います。そして、益々自分の殻に閉じこもる「自己愛」の傾向を強めていくことになるのでしょう。

   こうしてみてくると、やはり本人に形作られる愛着スタイルがいかに重要かが分かります。そして、本ブログでは幾度となく繰り返しできましたが、精神科医の岡田氏が指摘するように、その愛着スタイルは、親が、乳幼児期(特に0歳から1歳半の「臨界期」と呼ばれる、愛着形成にとって最も重要な時期)にどんな養育の仕方をしてきたかによって決まるのです。
   詳細については以下の投稿をご参照ください。
人の一生を左右する乳幼児期の愛着形成の大切さ(修正最新版