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★食べた抗酸化物質がマジに効いたら急死しますよ★

 

 AMPKの話を始めたばかりですが、ここで、イヤになるほど見せられたり聞かされたりする「抗酸化物質」の抗老化作用について、先に一石を投じておきたいと思います。

 結論から先に申しますと次のようになります。「食べた抗酸化物質が、体内や細胞内に入って直接効いたなら、あなたはすぐに死亡します。」となります。

 

まず下に挙げた中学生の理科で教えるレベルの酸化還元反応を見てみましょう。

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 銅(Cu)を酸素の在る環境下で加熱すると、酸素によって酸化されて酸化銅(CuO)に変化します。まぁ、酸化という概念をこの現象から教えるものですから、後々に酸化という現象を正しく理解し直すことが大変になるのですが…。ともかく、これが酸化反応の一例です。

 では下段の反応式を見ていただきましょう。これは酸化銅に水素ガスを送りながら加熱したときの反応ですが、酸化銅は還元されましたが、水素は酸化されました。酸化反応と還元反応は、同時に起こっています。要するに、殆どの化学反応は「酸化還元反応」であって、酸化と還元はセットになっているのです。

 

 およそ生体内で起きている生化学的反応は、決して単純ではありません。銅が酸化されて酸化銅になるような、そんな単一物質の酸化反応に相当するような反応はほとんど無いと考えて結構です。地球上に酸素が生じたために、仮にこのように酸化されてしまう生物がいたとすれば、彼らは子孫を残せずに死に絶えました。

 私たちの体内で起こっている無数とも言える生化学的な反応は、その反応が勝手に進まないように、大部分は酵素が関与しないと反応が進まないようになっています。そして、酸化還元反応を調節している酵素は「酸化還元酵素」と呼ばれていて、主なものを挙げるとすれば、オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、オキシゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、レダクターゼ、トランスヒドロゲナーゼ、カタラーゼなどがあります。あなたがどんなに効きそうな抗酸化物質を食べようが、飲もうが、あなたの体の中で起きている酸化還元反応は、これらの酵素によって、しっかりと調節されているのです。仮に元々備わっている酸化還元酵素の力を振り切って酸化を抑止するような物質を食べた場合、あなたはすぐに死ぬことになります。

 

 ここまでの話だけではまだ反論の余地が残っています。「ビタミンCやビタミンEは抗酸化物質だと言われているけれど、あれは食べなくても良いのですか?」というものがあるでしょう。  

 ビタミンと名前が付けられているものは、生体内でその役割が遺伝的に与えられているものであって、もちろん所定の部位においてラジカルを捕捉したり、或いはコラーゲン合成時に関わる酵素の補酵素として働いたり、その他にも多くの代謝経路での必須物質として働いています。そのような重要な物質を自ら合成する合成酵素を失ってしまいましたから、これは抗酸化物質を摂るという意味ではなく、あくまでビタミンを摂るという目的で、決して不足させてはいけないものになります。

 

 もう一つ挙げておくとするならば、「血管の中で脂質が酸化したりすることを防ぐには、抗酸化物質が効くのではないですか?」などというのもあるかも知れません。しかし、血液中にあって余計な酸化を防いでくれている抗酸化作用の約半分は尿酸が担当しています。尿酸値が上がりすぎてもいけませんが、これが正常範囲にあることで不必要な酸化が抑えられています。その他の主な抗酸化物質としては、SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)、グルタチオン、グルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼ、ビリルビン、システイン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB2などの生体成分が、実際にあたなの体の中で、必要に応じて働き、かつ必要以上に働くことはありません。

 

 或いは、ラジカル、過酸化水素、次亜塩素酸などの、いわゆる活性酸素は殺菌力があるため、白血球の一種である好中球が、飲み込んだ病原菌などを殺菌するために積極的に利用しています。仮にあなたが飲み込んだ抗酸化物質や、ラジカルを捕捉して消去するラジカルスカベンジャーが血中に入って好中球に作用したならば、あなたは細菌類に汚染され、敗血症に追い込まれ、すぐに生命の危機に立たされることでしょう。

 

 アンチエイジングの専門家などと自称して「この食品にはこのような抗酸化成分が含まれていますからアンチエイジングに大変有効なのです」などと知ったかぶりをしているような人には、「もう一度中学校の酸化還元反応から勉強してきなさい」と忠告してあげてください。