塩野七生著「ローマ人の物語Ⅹ」はじめに より

その人は、総理大臣になったら何をすべきと思うかと、たずねた。私は即座に答えた。
「従来のものとは完全にちがう考え方に立った、抜本的で画期的な税制改革を措いて他にありません」
そうしたらその人は言った。税の話では夢がない、と。
私は言い返した。「夢とかゆとりとかは各人各様のものであって、政策に欠かせない客観的基準は存在しない。政治家や官僚が、リードする類の問題ではないのです。政治家や官僚の仕事は、国民一人一人が各人各様の夢やゆとりをもてるような、基盤を整えることにあると思います」

これを実行した政治家は、田中角栄である。議員立法33件を含め120件以上の、主にインフラを整備する法案を成立させた。今我々が暮らしている社会は、彼が成立させた法案に強く依存してる。「高速道路・・ガソリン税」「電源開発」「新幹線」「水資源」「公営住宅」「住宅金融公庫」・・・