民主党政権での動きを紹介する。
2009年12月25日、鳩山首相は、予算編成閣議決定後の記者会見において、中程で次のように発表した。
「我が国が環境分野で世界をリードしていくため、CO2を回収、貯蓄する技術や燃料電池など環境技術開発を進めます。 また、電気自動車などの普及を強力に推進いたします。」
http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/200912/25kaiken.html
財務省の下記資料9,10頁に申し訳程度の予算が付いた。
http://www.mof.go.jp/seifuan22/yosan008.pdf

鳩山首相の記者会見の内容がどこから出たか調べてみると、2009年10月23日から始まった「タスクフォース会合」で議論されていた。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/t-ondanka/
副大臣級からの依頼事項に、CCS、スマートグリッド、電気自動車などの技術革新を加味せよと記載が有るが、議論が見えない。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/t-ondanka/dai1/siryou2.pdf
タスクフォース会合の委員名簿をみると、研究機関と大学関係者だけであり、積極的な政策立案を推進する方がいない。「真水」の具体的なGHG削減の技術革新についての議論がされていない。
昨年11月以降の議事次第などの公表が止まっている。2月3日の記事では、副大臣級検討チームの会合が継続されているとあるので、「行程表」や議論の内容を伏せているようだ。

その後、コペンハーゲンでのCOP15が、一部の途上国と中国の反対に遭い、混乱のなかで終わり、重要な合意がなされていない。会議前に主要国の間で合意されていたCCSを認定することが出来なかった。
IEA、APP及びEUの一部の国との間に、CCSを認定する協議が続けられていた。

10月15日報道【ロンドン・ロイターES=時事】
国際エネルギー機関(IEA)の田中伸男事務局長は13日、炭素隔離リーダーシップフォーラムの閣僚級会合で、気候変 動を食い止めるため、2020年までに世界の100カ所、30年までに850カ所、50年までに3400カ所で大規模な二酸化炭素(CO2)回収・貯留 (CCS)事業を実施する必要があると述べた。

10月27日報道【上海時事】
日本、米国、中国、インド、オーストラリア、カナダ、韓国の7カ国が地球温暖化対策を協議するアジア太平洋パートナーシップ(APP)の第3回閣僚会議が27日、中国・上海で開催され、12月にコペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)の成功に向け協力して行動することを盛り込んだ上海コミュニケを採択した。
参加7カ国の二酸化炭素(CO2)排出量は世界全体の54%を占める。

11月13日 日米首脳共同記者会見より
http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/200911/13usa_doc1.pdf

以上のような背景を知ると、現政権の25%削減目標は、裏付けがあると考えられる。(と思っていた)

ところが、この分析をしている間の2月17日に環境省の「行程表」の一部が発表された。これをみると、国家総動員法のような強制力のある法律制定を目差しているような気配を感じる。非科学的で、かなり危険な動きである。
http://www.env.go.jp/council/seisaku_kaigi/epc011.html

小沢環境大臣の試案では、家庭や業務などへの負担が大きく、総花的な消費削減の要請である。APPや日米首脳会談、予算案閣議決定時の鳩山首相談話にあったCCSが全て消去されている。電気自動車についても、全く推進する意志が感じられない。
また、原子力発電新増設9基は、「平成21年電力供給計画」の15基と重複しているのか、それとも追加で9基なのか説明がない。「平成21年電力供給計画」の16頁に「2018年度までに、9基(1,226万kW)」と記載がある9基ならば、まさしく隠し球を表に出したに過ぎない。15基+9基ならば、電力負荷率からみると過剰投資となる。

http://www.env.go.jp/council/seisaku_kaigi/epc011/mat01.pdf


方谷先生に学ぶのブログ

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新産業および雇用の創出のためどの分野を補助するかが、政策の選択になる。
COP15におけるEUと途上国、APPとの利害対立については、多くのマスコミが報道しているので省略する。

EUが仕掛けた「排出量取引」はどぶに捨てるようなことで、日本にとって利益がない。

真水の削減をAPP諸国と共同で行うことを薦める。

真水の削減案
2020年の25%削減は実現可能である。ただし強力な政治主導と重点的予算配分が必要。
(下記太字は今後の重点項目)


1.民生における省エネ推進(家電、住宅)
2.産業における省エネ推進(エネルギー変換効率、機械的損失、材料開発)
3.消費側の電力負荷率向上(太陽光発電、深夜電力利用蓄熱)
4.CCS等の技術革新(電力;高効率化、CO2回収、製鉄;水素還元法)
5.電気自動車の普及
6.原子力発電の建設
7.自然・バイオエネルギーの普及(風力、木質燃料;事例) 
  今後の人口増を考えると食料起源のエタノール生産を縮小させること、さらには、CO2吸収の多い密林を切り開き、バイオ燃料のための作物を植えることの禁止を訴えたい。

「事例」 林業(このテーマについては、別途紹介する)  
国土の70%の森林面積(2500万ha)は、この50年間で2倍の森林資源となり過密状態である。山林を手入れする人々も少なく、間伐の必要性が緊急の問題となっている。
全森林面積の年率3%の面積を間伐し、伐り捨て間伐材、林地残材、材木残材の未利用分、建設廃材(実施中)を石炭火力発電所に送ると、最大、電力用石炭の25%を代替、京都議定書定義(1990年)の5%のCO2削減、5万人以上の林業従事者の雇用増が期待できる。

CCSと原子力発電(15基)で20%以上、1/2の3,000万台を電気自動車に転換することで5%、そのほか、暫定的には、森林の手入れ(間伐を火力発電所へ)を行うことで5%のCO2削減が真水で実現出来ることを示した。

あとがき
これまでの調査で使用したデータは、全て、政府、各種団体が公開しているホームページから入手している。それらのデータを一部加工した資料も掲載した。今や、疑問に感じたことを、誰もが調査できる時代となった。