「温室効果ガス削減率」
間伐材を石炭の代わりに使用すると、石炭のCO2換算係数は、2.41であるから、CO2排出量減は
 87百万トン x 0.21 x 2.41 = 44百万トン(CO2)/年となり、
都議定書基準年(1990年)の排出量 1,237百万トンの約3.6%に相当する。

「事業規模」
前出の生産コスト5,000円/m3に一次集積所から需要家までの輸送費を加え、石炭価格相当の3,000円/m3(高騰後の価格)との差を、何らかの補助政策で充当することを考えてみる。

環境省は、将来1,174円/tCO2の環境税の課税を計画している。この課税が実現すると44百万トンのCO2削減に、次のような補助を可能にする。燃焼させる79%の石炭に課税を行うと、税収は下記の金額になる。
 87百万トン/年 x (1-0.21) x 2.41 x 1,174円/tCO2 = 1,944億円 /年
http://www.env.go.jp/policy/tax/plans/0911/0911a.pdf

 (注;平成22年の予算案では、一般財源より、1,182億円の間伐等対策費を計上している。)

石炭からの課税収入により、1億m3の間伐事業に、木材 1m3当たり最高1,944円の補助金が充当できる。この補助金を加算して、ようやく一次集積所における生産コストに届く。効率的な輸送システムをつくり、輸送費を抑制する努力が必要である。(輸送費の算定はしていない)

自給率50%の主伐事業を含めれば、木材2,256億円が8,000億円から1兆円の事業になる。

人工林(256m3/ha)を優先的に伐採すれば、主伐材・間伐材の収量がさらに増加する。

「雇用創出」
必要な人員は、(1億m3 /年) / (10m3/人/日)/250日 = 40,000人
となり、4万人の直接の雇用が創出出来る。

「まとめ」
この事業において、さらに、高能率林業機械およびチップ加工機・乾燥や運送手段の開発と利用を促し、効率的伐採方法と効率的輸送を実現し、補助金の減額に努力することが求められる。 また、土木建設業や他の事業体からの参加を促し、公共投資減の受け皿にもなれる。
建設廃材や緑化事業で発生する残材などを追加し、さらに多くの燃料を送り込むと、CO2削減5%、雇用5万人も実現できる可能性がある。

先ず、電力会社などの需要先への売り込みとシステマチックな物流の構築を行うことが必要であろう。

「関連情報」
1.人工林の優先間伐
 私は花粉症で、この季節(5月の連休まで)憂鬱な毎日を送る。先週初めに毎年通っている耳鼻咽喉科に行き、薬をもらってきた。スギ林を皆伐したいほどである。

2.伐り捨て(切り捨て)間伐
 間伐する費用は補助金がでるが、搬出する費用は自前。搬出したとしても、買い手がいない。従って、日本の山林は写真のようになる。
  清水三郎氏ブログ http://blogs.yahoo.co.jp/sabutyan65/4295347.htmlより
 
方谷先生に学ぶのブログ

 伐り捨てられた間伐材は、長期的に分解し、二酸化炭素とその21倍の温室効果のメタンを放出する。燃焼させた方が、温室効果ガス発生を少なくできると思う。
 豪雨などの災害時に、流木となり洪水被害を拡大する可能性がある。

3.不在地主と法律
  多くの山主が山を去り、その子孫も山を保有していることの記憶が薄くなり、さらには不在地主への連絡も取れなくなり、森林組合などが組織的に間伐するにも、山主の了解を取り付けることが困難になっている。私有地に無断で入り、その地の成果物に触れることは出来ない。
 また、森林法(保安林指定)、自然公園法、自然環境保全法、都市緑地法、都市公園法・・・など多くの法律があり、一本の木を伐るにも、届け出が必要。またどこに届けるかも法律によって異なる。

森林資源と温室効果ガス 終