13.日本は韓国に賠償金を支払ったからそれでいいのか? 2)

(「従軍慰安婦問題」決着ーー泥さんが、右派のウソを元から断つ.に対する批判)

 前稿で賠償を求める理由が「日本軍の慰安所運営に関する戦争被害なのか、植民地支配被害なのか」という疑問を抱いたが、彼の著作集に「日韓経済協定の真実 元慰安婦に賠償を 」という投稿があった。内容はこの「教育館だより」とほぼ同一である。タイトルに書かれているように慰安婦賠償つまり戦争被害に対する賠償であると主張している。

 

 

日韓経済協定の真実 元慰安婦に賠償を


 韓国政府は、日韓交渉で「南方から帰国した慰安婦の軍の受領書を担保に金を貸した」ので、その財産も請求したいと述べたことがある。(文書番号693)慰安婦は金や財産を持った資産家であり、奴隷ではないことを明確に証言している。日韓請求権交渉では、賠償問題ではなく財産の整理請求問題が話し合われたのである。慰安婦は被害者ではなく資産家として認識されていた。

 植民地支配については、間接的な表現で「強制的に動員し、精神的、肉体的苦痛を与えたことに対し相当の補償を要求する」と述べ、1910年以降の日韓併合全般を被害の対象とはしていない。(文書番号95)(文政権は全般的に植民地支配を被害と定義している。)

 過去の日韓交渉文書に記録されているように、泥さんの慰安婦に関する賠償要求は、戦争被害でもなく植民地支配による被害にも相当しない。1970年代に造語された従軍慰安婦と捏造記事から被害者としての慰安婦のイメージを膨らませ、日本国内と韓国そして北米の反日活動家が大きな運動に盛り上げていく捏造された被害である。

 次回は、賠償や補償問題ではない「個別請求権」に関する政府の解釈を紹介する。(泥さんも引用している国会答弁)

 

日韓会談文書・全面公開を求める会

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文書番号693 「日韓交渉報告(請求権関係部会) 」
昭和28年5月19日久保田参与の報告として

(この文書の18~27頁)
四 なお、韓国側から主として左の項目について簡単な説明があり、日本側との間に事実問題に関する質疑応答が行われた。
(一)朝鮮の地図原版類、国宝文化財等
(二)日本軍に属した韓人、徴用労働者に対する未払い金
(三)在鮮日銀券及び引揚韓人預託金
(四)南方占領地域慰安婦の預金、残置財産
(五)在鮮有価証券、預金の処理
(六)パシフィック・ビル及び朝鮮奨学会財産

 26、27頁に韓国政府が「南方から帰国した慰安婦の軍の受領書を担保に金を貸した」という事実 を韓国側代表が述べている。

(25頁から)
(二)久保田代表から・・・張代表は以下の四項目について説明を行った。
 (1)戦没者遺家族援護
 (2)被徴用者の未払給与
 (3)在韓日銀券

 

(26頁~27頁)
 (4)日銀券問題と似たものに日本あるいはその占領地から引き揚げた韓国人の預託金の問題がある。これは日銀券持ち出し制限で預けたまま帰国 したものであり、本人から清国を取ったことがある。その数字は一億以上になっており、これを担保にするから金を貸してくれという者もある。

 また、韓国女子で戦時中に海軍が管理していたシンガポール等南方に慰安婦として赴き。金や財産を残して帰国してきたものがある。(連合国) 軍(政部)発行の受領書を示して何とかしてくれといって来るので社会政策的に受け取りを担保にして金を貸したこともある。

(以上、文書693)

「文書番号95 日韓請求権小委員会第13回」 昭和36年5月10日
(韓国側が提出した対日請求8項目に関する議論)

(要旨)
 日本政府は、日本国債、公債、日本銀行券、被徴用韓人の未収金、補償金、その他の請求権の弁済を個々に行いたいと提案するが、韓国政府は韓国側が国としてまとめて受領し、韓国国内で個人の請求に対応すると答えた。

 日本側記録の表現は、「被害者」ではなく「一般労務者、軍人、軍属、船員などを含む徴用者」であり、死亡、傷病の補償、並び給与の未払い金を総称して「未収金」としている。補償については、日本国内で適用している国民徴用令による遺族扶助料や埋葬料、工場法、工業法等に同様の規定があり、軍人軍属についても同じような規定で補償している。日本側は、韓国の徴用者に対する補償の考え方も、日本国内の規定と同じにしたい。そのため属人的に明確にし、個別に手渡したい。と。

 韓国側が「国家として請求する」というのは、6頁以降「日本系通貨の焼却」や、17頁以降の「属人的データの欠落」により、まともな未収金請求ができないことによるもので、19頁から20頁にかけて「強制的に動員し、精神的、肉体的苦痛を与えたこと」の「新しい基礎の上に立って相当の補償」を求めたものである。しかし、日本側は、当時、朝鮮半島出身者は日本国籍の方々なので日本人と同じ対応だと「強制動員」の理屈を拒否している。

(18~23頁)「補償の対象と個別支払いの拒否」

 

(4) 最後に韓国側請求要綱5の細目(4)「戦争による被徴用者の被害に対する補償」の問題については、つぎのような応酬があった。
 (イ) 吉田主査代理より、本件項目はどう言う意味かと尋ねたのに対し李主査代理は、この項目には一般労務者の他に軍人軍属全部を含めて、生存している者、負傷、死亡した者に対してそれぞれ補償してもらいたいという意味である人数等については日本側に相当資料があると思うと述べた。

 

 (ロ)吉田主査代理より、「補償」の意味について、例えば国民徴用令には遺族扶助料とか埋葬料の規定があり、その他の場合には工場法、工業法等に同様の規定があり、軍人軍属についても同じような規定があり、そう言うもので未払金として計上してあるが、そういうものであるかと尋ねたのに対し、李主査代理は、これはそれとは別個に、韓国側としては新しい基礎の上に立って相当の補償を要求するものであると答えたので卜部副主査より、新しい基礎とはどう言う意味かと尋ねたところ、李主査代理は、強制的に動員し、精神的、肉体的苦痛を与えたことに対し相当の補償を要求することは当然だと思うと答えた。

 これに対し、吉田主査代理より、種々問題はあると思うが、当時は一応日本人として徴用されたわけで、これらの者に対し韓国側で、日本人に対してとられていたと同じような援護措置をとってほしいということか、または、別の立場で考えてほしいということかと尋ねたところ、李主査代理は、韓国側は新しい立場で要求しているのである。当時韓国人は日本人として徴用令が適用されたといわれるが、われわれはそう考えていない。日本人が日本人として戦争のために徴用されることは別の話で、われわれは全く強制的に動員され、又非常に虐待をうけたのであるからその意味で考え方を変えて理解していただきたい。

 (ハ)吉田主査代理より、之に関する要求は個人に対して支払って欲しいということかと尋ねたのに対し李主査代理は、国として請求して、国内での支払いは国内措置として必要な範囲でとると答えた。そこで吉田主査代理は、自分達としては死亡者、傷病者に対してはできるだけのことをしたいという気持ちをもっている。遺族の場合には相続人に対し援護する等ということになると思うが、韓国側で具体的な調査をされ、それを日本側と付き合わせる容易があるかと尋ねたところ、李主査代理は、もちろんそういう風に考えているが、それはこの会議と直接関係がないと思う。それは韓国側の国内措置でやるべき問題だと思うと答えたので、卜部副主査は、韓国側の言われる新しい基礎に立つ補償とか、支払いの方法も個人ベースによらないということはわれわれの terms of reference と離れてしまったように思うと述べた。

(以上、文書番号95)