トランプ大統領は下記法案に追加条項を要求し拒否権を行使すると議会に通告した。
A.新型コロナウイルス対策法 総額93兆円 一人600ドル支給

 2020年12月21日下院、上院可決、大統領拒否を表明したが12月27日署名し成立
 トランプ大統領要求:一人2000ドル支給

B.2021年国防権限法:NDAA2021

 12月8日下院可決、12月11日上院可決、12月23日大統領拒否、12月28日下院2/3以上で再可決、1月1日上院2/3以上で再可決し大統領拒否権を覆す
 トランプ大統領要求:SNS事業者のコンテンツ責任を免責する通信品位法230条撤廃

 12月28日、トランプ大統領の要請に応えペロシ下院議長(民主党)は2000ドル支給の追加法案を可決し上院に送付した。さらにトランプ大統領拒否権発動のNDAA2021の2/3以上の再可決を行い上院送付し、1月3日までの116議会下院を解散した。

 

 マッコネル上院院内総務(共和党)は、トランプ大統領の2000ドル支給、230条廃止、選挙不正調査の3つの要求を実現すべく考慮した。ペロシ下院議長の2000ドル支給法案にあとの2つをバインドして下院に送り返すことも考えたが、116議会の下院は空であり審議が不可能、従って2000ドル支給法案のみを可決するか廃案にするかの2つの選択になり、結局採決せず廃案とした。
 ペロシ下院議長の狙いは、マッコネル上院院内総務が採決を行わないことを見越して、1月5日のジョージア州上院議員決選投票で民主党が有利になるように仕掛けたものと推測されている。

THE HILL紙 12月29日
Push for $2,000 stimulus checks hits Senate buzzsaw
ブルームバーグ 12月31日
マコネル氏、2000ドル直接給付の可能性を排除-「脅しに屈さず」


 法案Aは、大統領の署名で成立、法案Bは下院と上院が大統領拒否権を覆す2/3以上の賛成で再可決し成立。

 

 トランプ大統領の希望はかなえられるのか?

 1月3日より始まる117議会(11月3日改選後の議員)でこれらの法案を出し直すことになるが、1月5日に行われるジョージア州上院議員2名の決選投票の結果に左右される。
 11月3日選挙で上院議員は共和党50名、民主党48名が確定している。ジョージア州では、改選1名と補充1名の上院議員選挙でいずれも過半数に至らず、決選投票となった。もしこの2名を民主党が取ると上院議席は共和党と同数になる。同数の場合は上院議長つまり副大統領が一票を行使出来る。1月6日選挙人開票でバイデン・ハリス(民主党)が確定すれば、ハリス副大統領が上院議長になる。次期正副大統領の就任は1月20日12時からなので、1月3日から1月20日まではペンス副大統領が上院議長の職にある。米議会において多数派になることは、議長、委員会委員長を総取りにし、議会運営を支配することが出来る。

 1月5日のジョージア州上院議員決選投票は結果が確定するまで終日から数週間かかると言われている。つまり1月6日の選挙人開票にはジョージア州選出の下院議員は参加できても上院議員は参加できないことになる。

 

 1月20日までの間不確定要素が多いが、マッコネル院内総務が多数派に止まれば、トランプ大統領の希望をかなえる法案提出が可能だが。