「地熱」
 日本は火山国で地熱の資源量が米国、インドネシアに続く第3位で、この三ヶ国は2,000万kW以上で、4位のケニア(700万kWを引き離している。しかし稼動している発電設備は米国の1/7、インドネシアの1/3.5であり、他国の開発が進み日本は10位まで後退している。

JOGMEC 世界の地熱発電

 

なぜ、日本の地熱発電は開発が進まないのか。年間需要量を1兆kWhとして寄与率を求めてみる。
日本の発電設備容量は約54万kW、発電電力量は2,472GWh=24.72億kWh(2019年度)と電力需要の約0.2%を占めるに過ぎない。基本計画2030年目標の150万kWは0.7%、地熱資源量2,347万kW全てを取り出しても10%(約1,000億kWh)をまかなえるに過ぎない。

JOGMEC 日本の地熱発電
約54万kW、発電電力量は2,472GWh(2019年度)

 

 エネルギー基本計画案では、稼動済み60万kW、FIT認定済み3万kW、合わせて63万kWを何らかの政策強化を行って2030年には150万kW(1.5GW)まで引き上げたいとしている。この数字の元は、2021年3月22日開催の総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会に提出された日本地熱学会のヒアリング資料(資料4)と思われる。

 

資料4 2030年地熱発電の導入見込み


2頁以降「必要な方策が実現すれば、2030 年頃には大・中・小規模合計 1,437MWe、102億 kWhの導入が見込まれる。」と書かれている。

4頁 導入容量

導入量は2011年時点460MW、FIT以降の導入量80MWを合わせて540MW(0.6GW)、開発中514MW、新規383MW、合計1,437MWe=1.473GW(1.5GW)と括弧内の7月13日に発表された基本計画書の数字とほぼ一致している。

問題は開発中514MWと新規383MWの実現可能性である。

5頁 導入ペースやリードタイムの考え方
2030年に操業を始めるとしたら、今、探査の結果を見て事業化判断を行う時期である。環境アセスメントに3年、発電所建設に3年、最短6年かかる。
地熱発電の開発が遅々として進まないのは、地下資源の探査に時間がかかること(いわゆる山師的活動)、適地が見つかったとしても、温泉法、自然公園法、保安林、緑の回廊などの法的規制の審査、地権者や温泉事業者等との協議など環境アセスメントに3年、そして発電所建設、系統接続(送電線工事)に3年はかかるとして規制緩和を求めている。

技術的には、地下深くの熱源探査に費用と時間がかかること、そして熱源の温度。
高ければ高いほど出力が高くなる。日本地熱協会の「地熱発電のしくみ」によれば、200℃以上の流体(熱水と蒸気)の場合は、その蒸気をタービンに直接送り電する「フラッシュ発電」、流体温度が低い場合は、沸点の低い二次流体(アンモニアなど)と熱交換して、二次流体の蒸気をタービンに送り発電する「バイナリー発電」とがあり、前述の「JOGMEC日本の地熱発電」によれば、前者は高出力(18個所)、後者は低出力(5個所)の設備となる。最も高い出力は、5.5万kWであり、火力発電の数十万から100万kWの発電所に遠く及ばない。地熱の発電能力が上がらないのは、火力発電では温度550℃以上、圧力200気圧以上の蒸気を作っているのに対し、低温低圧であるからである。

 

日本地熱協会

地熱発電のしくみ

2011年の再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書 「第6章 地熱発電の賦存量および導入ポテンシャル」268頁の表6-28 地熱発電の賦存量および導入ポテンシャルのまとめ(下記添付)によれば、フラッシュ発電の可能性のある150℃以上の導入ポテンシャルは、火力7基分の636万kWに過ぎない。

エネルギー基本計画の現状63万kWを、あと8年で150万kWに引き上げる具体的な投資計画が見えない。