「水力発電」

第6次エネルギー基本計画では、現状5,000万kW(796億kWh)を、2030年5,060万kW(934億kWh)に引き上げるとしているが、能力を僅か60万kW増強し、設備等の更新で発電量を17%向上させる目標のようだ。

この計画は、水力にほとんど期待していないことを示している。
資源エネルギー庁の統計によれば、この10年間大規模水力発電所の建設が行われていないことが分かる。添付グラフに2011年以降の発電所数と発電能力を記載しているが、2015年までと2016年以降の違いは、統計の集計範囲(発電所数)が異なっていると考えられる。2016年以降は一般水力と揚水発電に分けて記載され、揚水発電は、42個所、2,747万kWと一定である。発電所数は微増しているものの、発電能力は、5,000万kW弱とほぼ一定している。

資源エネルギー庁・電力調査統計表 過去のデータ

2015年までと2016年以降のグラフの段差は、3月22日のヒヤリングに提出された全国小水力利用推進協議会の資料を見ると、2015年までは中小水力を含めず、2016年以降は加算していることが分かる。
資料5の2頁に、4団体の設備概要が次のように書かれている。この表現を解読すると最大出力411万kWが中小水力、22,168万kW(この記述は間違いで正しくは、2,217万kW)が資源エネルギー庁の一般水力に相当することが分かる。
さらに、発電所数は、2016年 1,707、2015年 1,267の差が 440であり、その後増えて2020年 551個所になったものと理解する。(資料5の5頁、2011年~2018年実績)

【設備概要】(水力発電のみ、令和2年4月1日現在)
◯最大出力合計:411万kW/22,168万kW(1.9%)→(訂正 2,217万kW)
◯発電所数合計:551カ所/1,710カ所(32.2%)
 分子:中小水力4団体資料
 分母:電力調査統計(2020年11月現在)

2021年3月22日 総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会

資料5 ヒアリング資料(全国小水力利用推進協議会)
(この資料5は、既設・新規、中小出力と大出力などの分類、単位表記に混乱があり、内容把握が困難)

2030年まで大規模ダム建設計画はない。包蔵水力の統計では、2020年3月時点で既開発の一般水力 2,218万kW(グラフの2019年 4,963万kWから揚水発電 2,747万kW差し引いた数字に等しい)に、加算出来るのは工事中・一般水力の61.2万kWだけである。つまり、エネルギー基本計画の増分60万kWがこの工事中案件と考えられる。

資源エネルギー庁
日本の水力エネルギー量・全国の包蔵水力

水力発電は安定供給性にすぐれた再生可能エネルギー
 

「これまでの日本の成長を支えてきた大規模水力ですが、すでに多くの場所で開発が進められ、新たなダムを建設できる場所は限定的で、ダムの建設には巨額の資金と長い時間を必要とするといった短所もあります。」

黒部ダムのようなプロジェクトは政府も電力会社も考えていない。水力発電は多く見積もっても1,000億kWh、全需要1兆kWhの10%ほどしかまかえなない。