「バイオマス発電」

要旨
日本の森林は成長率が高く50年で5.9倍の蓄積になり飽和状態に近づいている。森林の若返りのため年率一定(例:50分割を50年かけて)の面積の木材を伐採し用材を除く木材をバイオマス燃料として利用することができる。その量は少なくとも年間 1億m3となり、基本計画の471億kWhに389億kWhを加え、860億kWhの電力量供給が可能になる。
 
政府計画

2019年までの導入量は、年間262億kWhの発電量(能力451kW)であり、2030年471億kWh(能力800万kW)の目標を設定している。

主な増分は木質系燃料である。間伐材など未利用の国産バイオマス燃料、木材チップやソルガム(草)、PKS(ヤシ殻)などの輸入バイオマス燃料の獲得に努力するとしている。特に国産木質燃料の増産に力を入れるとしている。

 

(基本計画・バイオマス発電の導入見通し)

引用している林野庁の林業基本計画の増産目標を見ると、日本の森林蓄積量は過剰でありさらに多くの木質燃料を産出することができる。単価、労働力、機械化などの障害の解決が必要である。私の試算によれば、林野庁の数字900万m3の10倍まで伐採しても適正な蓄積量になる。


木質バイオマス発電
政府のエネルギー基本計画(素案)では、2030年目標を、8GW:800万kW(471億kWh)としている。その内、木質バイオマスは、434億kWhと期待が大きい。
木質バイオマス即ち森林資源を調べると、日本では樹齢が50年を超える人工林が50%を超え用材として伐採する限界に近づき、また高齢化による二酸化炭素吸収量が減少し森林の持つ環境維持機能が失われていく飽和状態に近づきつつある。
計画的な伐採を行い、その後植栽を行い森林の若返りを継続することが日本の森林を守ることだと林野庁や関係者が語っている。

令和3年3月 林野庁
森林・林業・木材産業に関する主要指標等

 

1頁 森林面積
日本の森林面積は2,510万haとほぼ一定で、2017年時点で人工林(単層+複層)1,126万ha、天然林1,373万haである。

1頁 国産材の利用量
2019年(R1)実績では、3,100万m3(内燃料 700万m3)、2025年(R7)目標は、4,000万m3(内燃料800万m3)としている。

 

2頁 森林の蓄積の推移
1966年から2017年までの51年間の蓄積量は、人工林と天然林合計で2.8倍の52.4億m3、人工林で5.9倍(増加率:年3.5%)の33.1億m3である。
 (複利計算(1+x)^51 = 33.1/5.6 の xは、0.035→3.5%)

2頁 人工林の齢級(1齢級は5年)
伐期は木材の用途や環境保全施策などによって決められるが、用材として利用できる9齢級(45年)から14齢級(70年)が大半を占める。

 
伐採計画の一例
人工林を対象として試算を行う。蓄積量は2017年33.1億m3であり、法整備と予算化に2年かかるとして2023年より伐採を開始すると仮定し、5年間の増加を加える。
 33.1 x (1+0.035)^5 = 39.3億m3(2023年蓄積量)
単位面積当たりの蓄積量
 393,000万m3 / 1,126万ha = 349m3/ha
2023年の蓄積量を約50年分割で皆伐するとして、
1,126万ha/50 = 22.5万ha/年
22.5万ha x 349m3/ha = 7,850万m3/年
の基準伐採量となる。
 
未伐採の区域では、年3.5%の複利で増える増加分があるので、約50年間の伐採量は、2023年蓄積量の2倍を超える。平均すると 17,000万m3(1.7億m3)/年の伐採が可能である。伐採後2年以内に植林を行っていけば、50年サイクルの若返りが可能になる。
 
3頁 国産材供給量の推移
 2019年(R1) 主伐2,331万m3、間伐768万m3、合計3,099m3を伐採している。
6頁 木材の供給量の推移
8頁 燃料材消費量と木質バイオマス発電の発電量の推移
需要からみると、2019年輸入材と国産材合わせて8,191万m3(最高は1973年12,210万m3)あり(6頁)、そのうちバイオマス発電用燃料は1038万m3(国産693万m3)、差し引き7,153万m3が燃料以外の木材やチップである。木材の自給率55%、4,000万m3を目標とすれば、年間17,000万m3 – 4,000万m3 = 13,000万m3を燃料に回せることになる。
少なくみても、年間10,000万m3(1億m3)をバイオマス発電に利用するとして、その発電量を計算してみる。乾比重を0.35t/m3、燃焼エネルギーを16GJ/tとすれば、熱量は
 1億m3 x 0.35t/m3 x 16GJ/t = 5.6 x 10^8 x 10^9 = 5.6 x 10^17 = 560PJ(ペタ・ジュール)となる。
次に、560PJの燃料を火力発電で電力に変換すると
 360TJ = 1億kWhであるから
 560,000TJ/360TJ x 0.25(熱電変換効率)= 389億kWhの電力量が追加される。(7月21日の更なる追加の200~400億kWhを満たす量)
バイオマス発電は合計約860億kWhと年間需給の8.6%をまかなうことになる。
 
471(基本計画)+389(木質バイオ) = 860億kWh
 
バイオマス発電の課題
 ・伐採面積 22.5万ha/年(皆伐、間伐の組合せ)、約50年で一巡
  (50年を超える長伐期齢などの樹木の伐採は、個別に決定)
 ・天然生林の手入れも併行して実施(育成複層林の拡大)
 ・伐採量  14,000万m3(1.4億m3)→1億m3をバイオマスへ(現在の10倍)
 ・木質バイオマス燃料の単価目標と補助政策
 →林業従事者の増員(給与、職住環境整備)
 
 ・石炭火力の混焼推進及びバイオマス専用発電所設置促進
 
 ・欧州の環境派に対抗するロビー活動の推進
 
政府のエネルギー基本計画では、木質バイオマス燃料の2030年目標値が僅か900万m3であり発想を変えることを提案したい。