日本における再生可能エネルギーの導入可能量

 

「2030年の見通し」

前提 総需要 年間 9,400億kWh、最大電力 2億kW

 

          系統接続    供給電力量  備考    
 太陽光     7,380万kW  915億kWh  注1、注2
 風力(陸洋)  1,960万kW  409億kWh  注2
 地熱        150万kW   68億kWh
 水力       5,060万kW    934億kWh
 バイオマス    800万kW   471億kWh
(木質バイオ)   660万kW  389億kWh  注3
 再エネ合計           3,186億kWh

 

 原発               1,790億kWh  注4 

 火力を除く合計        4,976億kWh    

注1:現状+FIT認可まで、以降は蓄電池付き自家消費型
注2:天候に左右される電源の合計は、最大電力の1/2以下
注3:人工林の若返り50年分割伐採提案

 

注4:原子力発電の最大発電量
資源エネルギー庁の「原子力発電所の状況」の再稼働10基、設置変更許可6基、審査中11基全てが2030年に稼動するとして、最大1,790億kWhの発電量となる。(前提:設備稼働率 74%)

2030年、再エネと原発でまかなえるのは、最大、総需要の半分

であり、残り半分は火力に頼らざるを得ない。

 

「2050年の見通し」

増加が見込めず利用限界にある再エネは、風力、地熱、水力、そして今後輸入規制(EUの動き)があると言われるバイオマスである。

すると増設できるのは太陽光のみである。2030年の発電量は915億kWhであるから、2050年再エネ100%にするならば、総需要を横ばいとし、火力を代替して約4,500億kWh(約5倍)の太陽光を設置することになる。しかし、昼間のみ発電し天候に左右される不安定な電源には、火力発電、揚水発電、蓄電池などのバックアップが必要であり、天文学的な投資になり、電力料金が高騰する。火力を使えばカーボンフリーにならない。

 

「IT機器の消費電力予測」

下記科学技術振興機構のレポートによれば、社会の情報化社会の発展によって、現在の電力消費量980TWh(9,800億kWh))に対し、2030年1,480TWh(1兆4,800億kWh)と1.5倍、2050年には176,200TWh(176兆2千億kWh)と180倍の電力量が加算される。 

国立研究開発法人科学技術振興機構(平成31年3月)
 
再生可能エネルギーだけでは、急増する電力需要に対応できないことを示し、核エネルギーの増設を訴えているのが、自民党総裁選の高市候補である。
日経 9月14日

高市氏 エネルギー基本計画、修正の意向

 

この高市候補の発言に「ひっくり返すのであれば全力で戦う」と反発したのが小泉環境大臣。

FNN 9月17日

小泉進次郎氏が高市早苗氏にエネルギー政策で反発

 
この場外乱闘に加わったのが元夫の山本拓衆議院議員。
山本拓衆議院議員の公開質問状
小泉大臣が公式の場で環境大臣として自民党総裁選の女性候補(高市)へ越権介入したため、元妻を守るために反論します
1.旧一般電気事業者10社の2019年度の火力発電量は約4,814億kWh/年です。これは130万kWの原子力発電所約53基分に相当しますが、現在の火力発電所の発電量を2050年に再生可能エネルギーでまかなうための具体的計画を、環境大臣としてお示しください。
2.重なりますが、経済成長とデジタル化の進展を図る際に、IT関連消費電力は2050年には2016年の41TWh/年の約4,000 倍の176,200TWh/年になるとの予測が、国立研究開発法人科学技術振興機構の低炭素社会戦略センターによって発表されています 。
現在よりも省エネルギーの進展があったとしても、IT関連消費電力は莫大に膨れ上がることが予想されます。2050年にそれらを再生可能エネルギーでまかなう ための具体的計画を、環境大臣としてお示しください 。

小泉環境大臣へ公開質問(第2弾)を送付しました

山本議員の公開質問状の数字は正確で次の前提で書かれている。

東京ドーム面積    46,775m2

太陽光設備稼働率    14.3%

面積当たり発電能力 102W/m2

発電量=面積当たり太陽光発電能力 x 設置面積 x 365日 x 24時間 x 設備稼働率(太陽光は昼間だけ発電)

 

第2弾の(1) 7,782億kWhを発電する太陽光施設は、東京ドーム13万個分→ 61万ha

 

第2弾の(2) 176,200TWh = 176.2兆kWhを発電するには、東京ドーム2,940万個分→13,752万ha (一桁間違い、修正しました)

 

日本の国土、3,779万haを超える面積となる

 

2050年再エネ100%を目標にすると、太陽光が全国土を覆い、海面まで張り出すことになる。実に馬鹿げた計画である。

 

まとめ

河野大臣の火力を止め、再生可能エネルギーを最大限、足りないところは原発という目論見は、総需要の半分しかまかなえない。どのような発電手段があるのだろうか。(それを山本議員が小泉大臣にたずねている。)
 
科学技術振興機構のIT機器の消費電力を加えると、2030年、さらに1.5兆kWh合計2兆kWhが不足する。
 
11月の国連気候変動会議(COP26)に、国際公約のNDC (国が決定する貢献) を提出する日本政府は科学技術に基づかない宣言をするのだろうか。
 
基本計画案のパブコメ締め切りが10月4日、その後関連省庁の承認を経て閣議決定され、環境大臣はCOP26に提出するNDCを作成し閣議決定(エネルギー基本計画と同時か)に臨むことになる。10月4日以降、次期政権になるのだが、もし、高市議員が総理になれば、この日程はどうなるのだろうか。
 
2050年カーボンフリーにするためには、現有原発の再稼働だけでは足らず、新しく原子力や核融合の発電を建設せざるを得ないのではないか。太陽光や風力の不安定さを補う火力も必要になるが、CCS(二酸化炭素・吸収・貯蔵)を付加すればよい。
 
河野大臣小泉大臣ののエネルギー政策は、科学技術を理解せず実現できない数字を取り上げている。再エネ100%の電源構成は、不安定な電力を供給するため、基幹産業や半導体産業、IT企業の安定操業が困難になる。経営者は、安定した電源を保有する国に事業所を移すだろう。そして国内には失業者があふれ、日本は衰退に向かうだろう。


(次回最終回、関連情報の紹介)