カザフ騒乱の主謀者は誰か?

 

1月2日から カザフスタン西部や南部アルマトイでLPGの価格2倍引き上げに抗議しデモ隊が抗議運動を展開し治安部隊と衝突。

 

1月5日 トカエフ大統領は、これらの地域に19日まで非常事態宣言を発令、デモは全国に広がる。
     内閣を退陣させる 
    インターネット接続遮断
1月5日 ロシア軍事同盟(CSTO)に平和維持部隊派遣を要請
     ナザルバエフ前大統領の安全保障会議議長を解任

 

1月6日 CSTO議長国アルメリア首相が派遣決定を表明
1月6日 ロシアの空挺部隊がカザフに到着、主要拠点に展開
     ロシア外務省は「外部から扇動され、訓練を受けて組織化された武装集団」つまりテロリストと呼び「対テロ活動」のためにカザフに派遣すると表明

 

1月7日 トカエフ大統領はデモ隊ををテロリストと主張、治安部隊に警告なしの射撃を命令
     中国の習主席はトカエフ大統領を支持すると表明

1月8日 ナザルバエフ前大統領の側近、マシモフ国家保安委員会前議長等を国家反逆罪で拘束

1月10日 治安回復に向かい。内務省は、死者164人、拘束者約8000人と発表
    相当数の外国人を含むと発表しているが詳細は不明

 

カザフ騒乱については、まだ真相が分からない。これから多くの情報が出てくると思う。1月11日時点の情報をまとめると、二つの可能性が浮かび上がってくる。

1.プーチン大統領のマイダン革命流入説が正しいとすれば、米国務省

 

2.仮想のマイダン革命をつくり、それを鎮圧するとして暴動の引き金を引き、CSTOの平和部隊を導入、トカエフ政権の政敵一掃及びCSTO内での革命防止を狙った

今回のカザフ騒乱は、国民がナザルバエフ前大統領の独裁(腐敗)政治や物価上昇に不満を持っていたところに燃料費2倍の値上げが騒乱の引き金になった。ロシアとカザフ政権側も米国務省も予想は出来ていた。誰でも引き金を引ける状態だった。

カザフのトカエフ大統領はプーチン大統領に平和維持部隊の派遣を要請し、翌日空挺部隊をカザフに派遣するという手際の良さを見せている。
また下記記事は、国連平和維持活動に見せかけるため国連のヘルメットを着用させていると報じている。CSTO(ロシア)の空挺部隊を呼び込む口実として「国内外のテロリスト」の攻撃から防衛するためと主張している。

RFE/RL紙 1月10日

'Gross Misuse': UN Helmets Worn By Kazakh Troops During Crackdown

DW AKADEMIE
Kazakhstan: Putin says Russia will not allow revolutions
カザフ軍が国連の青いヘルメットを着用していることに、国連スポークマンは、国連平和維持活動に参加する場合に着用を認められているが、カザフ軍は国連の平和活動に参加していないと表明。

1月11日テレビ朝日の「大下容子ワイド!スクランブル」において、小泉悠・東京大学専任講師がトカエフ大統領派とナザルバエフ前大統領派の権力闘争も騒乱の原因の一つであると解説していた。近藤大介氏が同じ論旨を下記JBpressに投稿している。

JBpress 1月11日
「カザフ騒乱」の裏側で交錯、政敵一掃狙う大統領と中ロの思惑

ロシア軍は空港など拠点警備に従事し、デモ隊と対峙していたのはカザフ軍の部隊である。トカエフ大統領は、その部隊に相手はテロリストだからと「警告なしの射撃」を命じている。そして164人の死者と8000人に上る逮捕者を出し、恐怖に怯えたデモ隊は消滅したようだ。自国の兵士が無差別に自国民を射殺することを命じたのである。
そして、ナザルバエフ前大統領とその取り巻きを排除することによって、国民の不満を和らげた。

事態の沈静化を見てプーチン大統領と習主席はトカエフ大統領を称賛し支持を表明したのである。

このような情報をつなぎ合わせていくと、1.の米国務省の工作は考えられなく、2.のトカエフ、プーチンが仮想マイダン革命を引き起こし、トカエフ政権とCSTO(ロシア主導)の安定化の工作を計ったのではないかと思われる。

 

但し、米国にとっては、マイダン革命手法がCSTO諸国に適用可能なことを確信したと思われる。

折しも、ジュネーブで開催されているウクライナ問題に関する米露代表団の協議では、ロシアはウクライナ侵攻の意図はないと伝え、「NATO不拡大の法的保証」(ウクライナの加盟)を求めたがシャーマン国務副長官が断っている。

日経 1月11日
米ロ、ウクライナめぐる協議継続 欧州安保なお溝
米が軍事演習の制限提案、ロシア「NATO不拡大の保証を」

 

カザフ騒乱は始まったばかりかも知れない。今後の展開を見ていきたい。