ウクライナのNATO加盟問題を巡り、欧米とロシアの対立が激しくなっている。ロシアはウクライナ国境に軍を集結させ2022年厳冬期に兵力を侵攻させるのではないかとの推測記事が多く見られる。

1月10日から行われた米欧・露の協議は物別れに終わり、ロシア軍のウクライナ侵攻の可能性が高くなった。米政府と議会は、侵攻に対する制裁として、ノルドストリーム2の運用をさせないという方針を明らかにしている。

 

ノルドストリーム2は、2011年から運用しているノルドストリームと併行してロシアからバルト海を経てドイツに天然ガスを供給するパイプラインで、運用が始まれば、ウクライナ経由のパイプラインを止めることができる。ドイツに供給される熱量は1ライン原発11基分、2ラインで22基分と言われている。

現在、ノルドストリーム2は、敷設完工済みで、ドイツ規制当局の認証手続き待ちとなっていて、米国はこの手続きを見合わせるようドイツに要請している。

 

欧州の天然ガス価格高騰

 

一方、欧州の天然ガス不足がLNGのスポット価格の高騰を招いていると報道されている。
ウクライナとロシアから供給されるガスパイプラインとの関係、LNG供給問題について、3回にわたり紹介する。

「2021年12月時点」
ロシアは、ウクライナ経由の欧州への供給を減らすため7割の容量を減らし、通過料の支払いを減らしている。ノルドストリーム2の運用促進のためと言われている。これまで主力のウクライナ経由のパイプラインの運用を止めることができる。

 

欧州天然ガス・世界のスポットLNG価格高騰(JOGMECレポート)

 

「欧州で調達される天然ガスは、7-8割がスポット価格によって構成されるため、日々の価格変動が電力・ガス料金へ大きく影響する。このため、各国で混乱が生じている。」

日本は、2021年1月のLNG需給逼迫の経験を活かし、今年は、長期契約を中心に余裕を持って調達を行ってきたため、ここまでは多くのスポットLNGを調達する事態には至っていない。た、日本では、LNGは発電用燃料の4割弱を占め、また、都市ガス価格のほとんどを決定する要素ではあるものの、その7-8割を原油価格リンクで取引される長期契約LNGで構成されているため、日本の電力・ガス料金は、欧州ほど、今回の高騰の直撃を受ける形とはなっていない。」

「ここで、ここ数か月の日本の電力・ガス料金の上昇について、一部報道では、現在のスポットLNG価格の高騰のためとしているものもあるが、それはあたらず、2020年3月の原油価格の大幅下落とそれに引き続く1年以上にわたる回復の影響を受けた、長期契約LNG価格の上昇を主因とするのが妥当であろう。本稿執筆時において、原油価格は、その下落前の$70/bbl前後より高い$80/bblの水準で推移している。」
(天然ガス価格は原油価格に連動)

欧州天然ガス高騰の経緯
「一方、ウクライナがロシアとの欧州向け天然ガスパイプライン輸送契約を更改した2020年1月以降、ロシアは契約した最低数量しか天然ガスを送出していない。自国を経由してロシア産天然ガスを欧州へ輸送するパイプライン容量の7割が使用されなくなったため、ウクライナは毎月この利用者を募集してきたが、ロシアはこれに1回も入札せず、その一方で、ノルドストリーム2の建設を推し進めた。」

JOGMEC 12月24日
天然ガス・LNG最新動向 ―欧州発ガス・スポットLNG高騰からの教訓と脱炭素ネットゼロエミッションへのミッシングリンク―

NHK 12月22日
欧州 天然ガス価格 過去最高値に ロシアからの供給不足懸念で

 

ブルームバーグ 12月23日
欧州ガス価格が20%下落、米国産LNG供給急増へ-不足分を穴埋め

日経 12月24日
米国のLNG、欧州向け急増 価格高騰でアジア向け抜く

論座 2021年9月28日

ノルドストリーム2の完成を地政学から読み解くロシアのガスパイプライン網と欧州のエネルギー安全保障

 

ロイター 2021年12月17日
ノルドストリーム2認定手続き、22年上期の完了見込まず=独当局

日経 2021年12月22日
ドイツ・ロシア関係が緊張 外交官を相互に追放 
ウクライナ情勢めぐり駆け引き


ロイター 2021年12月17日
ノルドストリーム2認定手続き、22年上期の完了見込まず=独当局

 

(次回、米国のLNG輸出:ロシア産天然ガスの代替になるか)