凡ミス。
この言葉は嫌いだ。
注意深くしていればミスをすることはなかった。
ホテルの場所を知らない。
いや、調べてないと言った方が正確な答えなのかもしれない。
だけど念のためにホテルの予約確認の画面をプリントアウトしたものを持ってきていたことを思い出す。
住所は英語表記だったが、タクシードライバーに聞けば分かるだろうと安易な考えで僕は適当なタクシーをつかまえた。
運転手に
『ここ、わかる?』
と簡単は日本語で質問すると、即座に
『No.』
と言われ降ろされる。
挫けずに次から次へとタクシーの運転手に聞いても誰も調べようとはせずにめんどくさそうな顔をして降ろされる。
『お前らプロだから少しぐらい調べろよ!』
と心の中で思ったが口にはださなかった。
おじいちゃんが運転するタクシーをつかまえた。
どうやら老眼のようでメガネをかけないと文字が読めないらしい。
所々読む所を間違えて情報をより迷宮入りにする所が、おじいちゃんらしいところだった。
期待していない通り、駄目だった。
途方にくれて再び歩きはじめた。
すると、おじいちゃんタクシーの前を再び通りがかった時に助手席の窓が開いた。
おじいちゃんがこのタクシーに乗るように催促をかけるジェスチャーをしているのを確認した。
同じタクシーに乗り付けまた同じホテルの住所が書かれた紙を見せた。
おじいちゃんは何も言わずに車を発進させた。
この時タクシーのメーターは動いていなかった。
地球の歩き方情報によると、タクシーのメーターを作動させない運転手は気をつけろ!っという情報を1時間前にみたばかりだ。
『かもにされる。ぼったくられるな。』
ぼくは覚悟した。
するとタクシーはある所で車を停めた。
おじいちゃんは急にホテルの住所が書かれた紙を持って足早に出て行った。
周りを見渡すと、警察署の前で停まったのがわかった。
『あのおじいちゃんワザワザ警察署に聞きに行ってくれたのか!』
現地人の優しさに包み込まれた瞬間だった。
おじいちゃんが足早に帰って来るやいなや、
『Okay!!』
と言って微笑んでいた。
ぼくも微笑み返した。
タクシーのメーターが動き始めた。
ホテルまでは少し迷ったがホテルに直接電話して聞いてくれて(他のドライバーもそうせえよ!!)無事に着いた。
不安の積み重ねが静かに音もなく消え去った。
記念に写真を撮った。
写真を撮る間に中国人観光客が扉を開けて中に入ろうとしていた。
『もうちょっと待てよ。』
と思ったが、運転手さんも仕事なのでスグに降りた。
そのままタクシーは直進し、やがてボクの視界から消えた。
マルタ編
イングランド編