彼女と

最後に

噛み合わない四方山話で
笑いあってから

一週間目の寒い朝


「その時」を報せる電話が
ケアマネージャーからあった


朝方四時頃
ふと目覚めお手洗いに向かった
息子さん


なんとなく。


なんとなく
母の息づかいを観ていた
彼の目の前で


不規則なリズムの呼吸を
数回繰り返した後

小さく息を吸い、止まった。


咄嗟に母の身体を撫でさすると

口から

『グッ、グッ』と
空気がもれる音が聞こえて


「あぁ、息が、止まったんやな,,,」


と、実感できたという。


どうやら
寂しがりやさんの彼女らしく


最愛の息子さんに見守られながら
今生のご卒業を迎えられたらしい



『枯れるように、逝く』が

ようやくクローズアップされてきた
昨今


腹は凹み


手足は枯れ枝のようだけど


最後の最期まで排泄しきり


浮腫みは無く


頬っぺは
つるつるツヤツヤ✨


柔らかく
微笑むような
眠るような

優しいお顔で横たわっている


わたしのすぐ後に
ヘルパーさんもケアマネさんも
やって来て


家族だけの時間は終了



ここからは
今生とのお別れの時間



ご家族にお願いし
ヘルパーさんとわたしの
最後のワガママ


彼女がよく着ていた


ペールピンクのもこもこパジャマに
着替えさせたい、
というやつ(*^^*)


笑うと
少女のように無垢であどけない
表情の彼女に


とてもよく映える(* ´ ▽ ` *)


死出の衣に着替える前の
ほんの少しの時間

わたしたちの中の
リアルな貴女でいて欲しい


そんな
ささやかなワガママを
彼女に利いてもらい


まだ、温かみの残る身体を拭いて
ペールピンクのもこもこパジャマに
包まれる彼女は


ご家族をはじめ
彼女をいとおしく想う者たちに
囲まれて



『今』ここに、「ゐる



あなたはまだゐる
其処そこにゐる
あなたは万物となつて
私に満ちる

私はあなたの愛に
値しないと思ふけれど
あなたの愛は一切を無視して
私をつつむ
ー高村光太郎詩集 智恵子抄 亡き人に よりー


わたしたちができること


傍にいること
触れること
語りかけること


そして


この世界の片隅には

こんなにも美しい命の耀きが

数多に在ることを

『誰か』に伝えていくこと。



ありがとう。