『家庭之友』『婦人之友』を発行していた羽仁もと子ご夫妻が90年前に創設した学校です。
面白い学校だとは聞いていたけれど、先日、渋谷デイライトキッチンで開催されたイベントで学園の先生にお会いしたときに
「幼稚園から大学まで、すべての子どもたちに自分たちの畑があります。中高生は、学年ごとに日替わりの当番制で、毎日300人分の食事を自炊してますよ。ご飯は薪を使った火起こしから、かまどで炊いています」
と伺い、びっくり仰天。いま世界中で注目されている「食育 / Edible Educationをとおした全人教育」の最先端だー!と興奮し、さっそく見学に伺いました。
*ちなみに、今回、「こんな学校もあるんだね」を共有したくて、娘たちのサボりも公認!「(自分の通う公立の学校でも)違う学年の子たちとみんなで、体育館で給食だったら楽しいのにな」とつぶやいたり、広大な敷地に感激したり。
自由学園の理念は「生活即教育」「自労自治」「本物に触れる」こと。自分たちの食事の配膳から皿洗いはもちろんのこと、植木の刈り込みや壊れた設備の保全まで、すべて(初等部はできる範囲で)子どもたちが行うというから、もう、感激です。仕事はたくさんあるけれど「自治」を基本としているから「やらされている感」が全然ない。子どもたち、みんな本当にいい顔をしていました。
この日は、初等部の子どもたちと一緒に、日替わりで父母がつくる(!)昼食をいただきました。
昼食時間になると、高学年の生徒が集まってきて、テーブルを拭き、人数分のランチ皿を用意するところからはじまります。彼らは「テーブルマスター」と呼ばれ、1年生から6年生まで異年齢で交流できるテーブルの準備を取り仕切る。係が各学年で決まっていて、最後にお皿を洗うところまで全員でやることが、毎日の習慣!みんな家族のように、楽しそうに食事をしていました。
「子どもたちの給食を、まさか父母が作るなんてね!最初は、重労働だし、当番を終えたらもうグッタリで。正直、面倒くさいなって思っていました。でも、1年生から6年生までの親たちでこうして顔をあわせて一緒に手を動かすと、子育てについて先輩お母さんに教えてもらったり、子どもたちの日常を垣間みる機会にもなって。
子どもの学びの場に関わらせていただくことで、親としての自分が育てられたなって思うんです」
と、今は学園の食料部で働くようになった先生が話してくれました。
途中、その日の食堂の司会の子どもに「お客様」として紹介され、ピースボートの話をすると、皆、ものすごく表情豊かに反応しながら聞いてくれました。自分の足で立ち、自分のことばで話すことを知っている子どもたち。本来当たり前の風景なのだけど、子どもがまっすぐに存在することを許されている環境、心震えます。
日本には、いまから90年も昔(1921年!)から自労自治の精神を掲げ、「食のまわりに学びを作る」の哲学で、最先端のアクティブラーニングをやる学校があったのでした。
校舎の多くは、旧帝国ホテルも手がけた世界的建築家フランク・ロイド・ライト氏の弟子である遠藤新、遠藤楽父子による設計。天井が高く明るい食堂棟ほかいくつかの建物は「東京都選定歴史的建造物」にも指定されていました。それが、3万坪もの緑豊かな空間に点在している。
「いい風景ですよね。親も生徒も、最初は皆、このゆったりとした空間と美しい建築を、いいなあ、いいなあ。と言う。でも、すぐにそれが日常の風景になるんですよ。僕は、そこが大事だと思っています。
自然に囲まれ、丁寧に作られた建物で、暮らしに根ざした学びを得る。それがひとたび自分のなかで当たり前になってしまえば、社会に出たときに本物がわかる人間になる。看板だらけの町、作っては壊すプラスチックの山、偽物の情報に、違和感をおぼえるようになる」
椅子の修繕も、自分たちで!
そう教えてくれた先生の言葉には、経験に根ざした誇りがありました。子どもたちの生き生きとした表情にも心震えたけれど、会う先生が皆、とても穏やかで、人間味があったのも印象的。魅力的な先生たちも、子どもたちの「当たり前」の一部として吸収されているとすると、本当に羨ましいな。
小さな写真では、学園内の居心地の良さを1/10も表現できないよ。
はー。こんな学校があったのか。全然書ききれない。
また遊びに行って、今度は授業を取材させてもらおう。
もっとしっかりまとめなおしたレポートを、近いうちにまた書こうと思ってますが、とりあえずは感動の共有を。
ああ。感激。
年度末のお忙しい時期にも関わらず案内してくださった先生方に、感謝してもしきれません!