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「You are what you eat - 何を食べるかが、その人をつくる」
食べ物が人をつくり、人が国の未来をつくる。
だから、「食」を世界中の学校の正式な科目にしたい。

・・・アリスの言葉は、シンプルです。


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60年代、健康で力強い若者をたくさん育てるため、ケネディ大統領が「体育」を学校の正式な科目にしようと決めました。全米で体育教師のトレーニングが行われ、ほんの数年のうちにたくさんの雇用と、健康な子どもたちが育ちました。

それと同じことを、いま、私たちは「食」で行う必要がある。国語・算数・理科・社会、そして「食」。全世界で、たくさんのガーデンティーチャーとキッチンティーチャーを育て、自然を愛す子どもたちを育てれば、それは必ず、より平和な未来への近道になる。

毎朝、学校の食堂とは思えない美しい施設で、シェパニーズのスタッフが腕をふるってくれる。なんてなんて、贅沢な環境〜♡ ・・・と思ったら、ニコニコ素敵な笑顔でズッキーニのグリルをサーブしてくれている女性は、なんとアリス。ひえー!

私、まったく、緊張するほうではないのですが・・・
アリスは世界でいちばん会いたかった人ベスト3に入る偉人だったから、さすがにひっくり返るかと思ったよ。ズッキーニをサーブしてもらいながら

「あなたのスピーチに感激して、共感して、涙が出ました。はじまったばかりだけど、ここにこれて本当に幸せです。素晴らしいご活動、ありがとうございます。映像を撮ったのですが、日本語に翻訳して、日本の友人たちに届けてもいいですか?」

と聞くのが精一杯で、

「一緒に写真撮りたいです」
って、言えなかったのをちょっと後悔。

ファンですっていうより、同志でありたかったんだよね。気持ち的にね。
本当はファンなんだけどね。背伸びしちゃったよね。笑

というわけで、以下、アリスからアカデミー受講生へのウェルカムスピーチ。
噛みしめて読みたい、素敵なエールでした。


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私たちはいま、大変な世界を生きています。
できることなら、私は、いまとは違う世界に暮らしたい。
そのために、(エディブルスクールヤードを通して)
子どもたちに働きかけてきました。

すべての子どもたちと時間を過ごそうと思ったら、
公立の学校で実践するのがいちばんです。
公立の学校は、どんな子どもでも通うことができる場所だから。
公立でなら、すべての子どもとつながりを紡ぐことができるから。

子どもたちを、自然と、そして自分自身との新しい関係に招待する。
それはとても美しい思想であり、なによりも大切なことです。

この国ではいま、大統領選挙が話題です。
でも、本当に大事な話には触れていないように思います。
本当に大事なもの、それは、食。農。子ども。
そして人々の暮らし。でしょ?

さまざまな問題の解決策について各論で話されることはあっても、
世界でいま起きていることの全体を皆で根本的に変えよう、
劇的に良くしよう、という空気もありません。

まるで、第二次世界大戦の前の時期に戻ってしまったみたい。
皆が、自分が何をしているかわからずにいる。

そんな中、
私たちがしようとしていることはものすごくラディカルです。

子どもたちが五感を取り戻すこと。
子どもたちが自然と恋に落ちること。
子どもたちが自信を取り戻すこと。

それはどれも、一度体験したら、
一生変わらない大切なことばかりです。
子どもたちは日々、経験することを全身で吸収できる存在だから。

文明がはじまって以来、人はずっと、
土とともに暮らし、
地域で採れるものをいただき、
季節のめぐりを祝福し、
子どもと食卓を囲み、
年長者を敬い、
先生を愛してきました。

・・・私たちが何を食べるかが、この国を作ってきたのです。

ブリア・サヴァランの言葉をいつも思い出します。
"We are what we eat - なにを食べるかが、私たちをつくる"

私たちは、食べ物でできている。
国の未来もまた、私たちがどんな風に育まれたかで決まります。
いつだってそうでした。

この国ではもう誰も、真剣に投票したいと思っていません。
候補者のひとりは、いつもマクドナルドを食べていますね。
飛行機にまで持ち込んだりして。

これは本当に、深刻な問題です。
ファーストフード文化が、私たちの学校システムにまで入り込み、
子どもたちの育つ糧になってしまったのだから。
「早い、安い、簡単」に価値を見いだす文化が
この国を覆おうとしている。

これは、健康の話だけではありません。
そうじゃないんです。

私たちが、食べ物や、食べかたと一緒に身体に取り込み、
消化してきた大切なものが、そっくりそのまま失われていく。
そういう話です。

大急ぎで食べ物を飲み込み、
食べることを大事だと思わなくなり、
もっともっとと多くを求めることが良しとされ、
安い食べ物が好まれ、
テーブルで食べる必要がなくなり、
車で食事を済ませ、
愛はiphoneで手に入ると思うようになってしまった。

そのすべてが、私たちを自然から遠ざけています。
子どもでさえ、一日中屋内で過ごし、放課後も外に出ません。

原っぱで転がらない。
海辺を歩かない。
誰が足を汚したいものですか。
新しい靴が必要になったら嫌だもの。
料理も、時間の無駄だから、やりたくない。

これが、今この国で起きていることです。

誰かに、この大変な問題を、画期的な方法で伝えてほしい。
映画などを使って、素晴らしい方法でできるのではないかしら。

未来をつくる公立学校での教育が、
いつから私たちの優先事項から外されたのでしょうか。
農家さんや先生という本当に価値ある職業を、
もう一度尊敬される、名誉あるものにしていきたいです。

実は今朝、とても悲しいことがありました。
世界中から集まった皆さんをどう歓迎したらいいのか、
迷いながらここに来ました。

でも、菜園を歩いていたら、
前向きな心を取り戻すのに時間がかからなかった。
あのオーブンから、次々にピザがでてきて、
集まってくださったみなさんが素晴らしくて。
エディブルのコミュニティー精神は、伝染性ね。

ファストフード文化では、
「誠実」にはたどりつけない。
コミュニティーを作るにもいたらない。
味のことは追求しようとしたかもしれないけれど、
それも失敗。

いいものは、すべてこちら側にあります。
だから、私はとにかく楽観的です。

・・・まとまらなくてごめんなさいね。笑

これから一週間、皆さんと一緒に、
大事なことをたくさん語り合いたいと思います。

「食」を、正式な学校の教科にしましょう。
手作りの学校給食を、すべての子どもたちに提供しましょう。

そういう大事なことを、話しましょうね。
ありがとう。

翻訳・小野寺愛、早川雅貴