※例によって正しいつもりで書いていますが、ご判断は読者様ご自身でお願いします。

今回は「3号機は他よりも危ない」というお話しです。


実は、3号機だけ特別なのをご存じでしょうか。

何が違うかというと、燃料が違います。正確には、燃料の一部ですが。

他の号機は低濃縮ウラン燃料のみを使っていますが、3号機にはMOX燃料(モックス燃料)というものが32本混じっています。

32本、というのは、燃料棒集合体32体のことです。(参考:「東京電力(株)福島第一原子力発電所3号機用MOX燃料体に係る輸入燃料体検査合格について平成12年 8月10日」の写し
参考:Wikipediaの燃料棒の記述

だから、MOX燃料棒が2912本~3072本ある訳ですね。


で、この「MOX燃料」って何?ということですが、Wikipediaの記述によれば、「プルトニウムを通常よりも多くした燃料」のことです。

特徴として

1)ウラン中にプルトニウムを混ぜることにより、燃料の融点が下がる。これにより燃料が溶けやすくなる。また熱伝導度等が、通常のウラン燃料よりも低下する。これにより燃料温度が高くなりやすくなる。
2)(省略)
3)FPガスとアルファ線(ヘリウム、ガス状)の放出が多いため、燃料棒内の圧力が高くなる。
4)性質の違うウランとプルトニウムをできる限り均一に混ぜるべきであるが、どうしてもプルトニウムの塊(プルトニウムスポット)が生じてしまう(国は基準を設けて制限しているが、使用するペレット自体を検査して確認することはできない)。

※番号は筆者が追加

とあります。
1)と3)に注目・・・溶けやすく、温度が上がりやすく、燃料棒内の圧力が高まりやすい→壊れやすい、と理解して良いと思います。

こいつが3000本ほど、炉心に収まってる訳です。


んで、実は、さらにネガティブな情報があります。

このMOX燃料、地元の反対にあったりして(?)、10年間ほっとかれたものなのです。
MOX燃料の内部は、経年変化して性質が変わりますが、その評価は5年分しか行われていません。
従って、今炉心に入っている3000本程度のMOX燃料の性質は、実は正確には分かっていないのです。

さて、この情報を得た上で、次のレポートを読んでみると、3号機がいかに危険か分かります。

日本の原子力発電所で重大事故が起きる可能性にMOX燃料の使用が与える影響
エドウィン・S・ライマン (PhD)
核管理研究所(NCI)科学部長
1999年10月


要約します。
・原子力発電所の重大事故で特に憂慮すべきはアクチニドの核種の放出である
・これらは吸入または経口摂取した際に人体に影響の大きいα線を出す
・コンピュータシミュレーションの結果、炉内のアクチニドの量は、アクチニドのすべて核種で、MOX炉心の方が、5倍から22倍近く多くなっている
(筆者注:これは炉心すべてがMOX燃料の場合)
・炉心の4分の1にMOXを装荷した場合、低濃縮ウランだけの炉心の場合と比べ、重大事故から生じる潜在的ガン死は、42~122%、急性死は10~98%高くなる

上記引用の赤字の部分に注目。このシミュレーションでは、燃料の1/4がMOX燃料と想定しています。

3号機の燃料集合体が何体かというと、東京電力の資料「原子炉にどれだけウラン燃料は入っているの?」によると、

・A型516体(低濃縮ウランと思われる)
・MOX32体

ということです。

つまりMOX燃料の割合は

32÷(32+516)=0.058・・・

なので、6%程度ですね。
上記レポートでは25%を想定しているので、それよりは大分少ないですが、論理的に3号機が危険なのはお分かりいただけると思います。

結論としては、福島第一から比較的遠い東京とかでも、マスクは着けた方がちょっとはマシでしょう。
というあたりでしょうか。


□ちょっと邪推□
放水が3号機に集中されていて、それはプールの水が・・・という説明があったと思いますが、すでにプールが満水になる以上の水が投入されています。
でも、放水は続いています。
黒煙が上がっています。
米国が無人偵察機で撮影した原発の精細な映像は、日本政府の判断によって公開されていません。
その情報を持つ米国は避難済みです。

何が起きているやら・・・。



□補足□
ちょっと気になるのが、使用済み燃料プールにMOX燃料があるのか、ですが・・・はっきりしたことは分かりませんでした。

結論としては「たぶん入ってないと思う」です。

10年間使えない間、MOX燃料は使用済み燃料保存プールに保管されていました。
しかし、昨年秋の使用開始で、それは炉心に全て投入されたものと思われます(ここが確証が持てない。一部プールに残してある可能性は否定できない)。
これらが再び取り出されて使用済み燃料保管プールに戻されるタイミングは、3/11までには無かったようです。
次のMOX燃料は作成済みではあるものの、まだフランスかどこかにあって海を渡る前みたいなので、3号機のプールにはないかな・・・という推定です。