4才頃から8才まで、伊豆の伊東市に住んでいました。


宇佐美というところで、父親が勤めていた会社の社宅でし

たが、社宅となっている一戸建ての平屋が六棟とガソリン

スタンドがあるだけの山奥でした。


2つ上の姉は家の中で過ごすのが好きでしたが、私は寒

くても雨が降っても外に出たがる子供で、自然に恵まれた

この環境はありがたいものでした。


遊び相手は男の子ばかりで、特に好きだったのが虫をみ

つけること。誕生日プレゼントに昆虫図鑑をねだるくらい

でしたから、よっぽど好きだったんだと思います(笑)


それでも、足のたくさんある虫は苦手で、その虫たちの

写真が載っているページは見ないようにしていました。


しかし蜘蛛だけは、ある出来事から苦手ではなくなりました。


ススキなどのイネ科の草をグルグル巻きにして巣を作る

蜘蛛の生態についてを、テレビ番組で見ました。

種類は「カバキコマチグモ」だったと思います。


毒蜘蛛ですが、巣をつついたりいきなり触ったりしなけれ

ば人間に攻撃してくることはありません。


この蜘蛛は巣の中で産卵をするのですが、卵からかえった

子グモたちは母グモを食べてしまうのです。


このことを、漫画家の紡木たくさんが「瞬きもせず」の中で

書いていて、その文章はとても印象的でした。


「あーなんかこのクモかわいそー」

「えークモ?やー気持ち悪い 私だめっ」

「だってほら見て お母さんグモが赤ちゃん生まれたら自分

の体を子供たちに食べさしちゃうんだよ。そんで死んじゃうの」


・・・こうして母グモは卵を産み育て

そしてやがて子供たちが自分の力でエサをとれるよーになると

自分の命をその子たちに与えるのです。

子たちにとって生きることを始めて一番最初のエサが

母の命(からだ)となるわけです。


~ 紡木たく 瞬きもせず7巻より ~


子供の時に、母グモが生きたまま子グモたちに食べられる映

像を見て泣きました。そして、それから苦手だった蜘蛛の印象

がかわり、触ることはできなくても、蜘蛛の巣があると長い時

間観察するようになりました。


子グモたちを生存させるため自己犠牲。

子グモは成長して、同じように命を繋いでいきます。


蜘蛛だけでなく、虫や動物の生態は学ぶことが多く、人間も

見習わないと…と思うことも少なくありません。


今でも、虫や動物の生態をテレビ番組でやっていると、見入

ってしまい、蜘蛛の巣を見つけるとしばらく眺めてしまう私。


この行動はおそらく一生、変わらないでしょう。