被告の国・東電・原子力ムラにとっては、原告側をやや押し返した判決。
従来の国策無罪一辺倒からは一歩前進してはいるが・・

「国と東電の双方の責任が問われた過去5件の集団訴訟では、4件が事故を防げなかった責任を認めており、後退する判決。」

 河北新報より
<原発事故避難者集団訴訟>地域崩壊に直面した被災者に寄り添った一方、請求額とは大きな開き
【解説】東京電力福島第1原発事故を巡る22日の福島地裁いわき支部判決は、原告側が求めた「古里喪失」の損害を認めた。同種の集団訴訟と同様、国の賠償基準の中間指針を超える賠償額を認定する結果となり、中間指針の在り方が問われる可能性もある。
 判決は古里喪失の実態について「緊密な人間関係は失われた」「故郷としての精神的なよりどころを失った」などと指摘。避難を強いられ、地域の崩壊に直面する被災者に寄り添った点で評価できる。
 ただ、具体的な損害額認定では、原告側が求めた「古里喪失」単独での評価を「極めて困難」と避けた。中間指針を超えて認めた賠償額も避難区域で1人150万円にとどまり、原告側の請求額とはあまりに大きな開きがある。
 古里喪失の慰謝料について「(中間指針に基づき)既に支払った賠償に含まれる」と反論してきた東電の主張を一部認めたとも受け止められかねず、被害実態が正当に反映されているかどうかは疑問が残る。
 東電の津波対策に関しては、十分に評価した判決とは言い難い。津波襲来の可能性を東電が認識していたことを認めながら、「著しく合理性に欠くとまでは言えない」と事故回避を怠った対応を追認した。
 国と東電の双方の責任が問われた過去5件の集団訴訟では、4件が事故を防げなかった責任を認めており、後退する判決となったと言える。(福島総局・高田奈実)

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 東京電力福島第1原発事故で古里が失われたなどとして、福島県双葉郡の住民ら216人が東電に慰謝料など計約133億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福島地裁いわき支部は22日、213人に計約6億1000万円を支払うよう命じた。判決は争点の「古里喪失」の損害を認定。巨大津波の予見を巡っては、現実的な可能性はないとの東電の認識を「著しく合理性が欠けるとまでは認められない」と判断した。】