相変わらずアメリカ発世界経済の混乱は留まるところを知らず、ドル円は一時95円台に突入、日経平均も12000円を切りました。しかし、株式に関しては、もちろんメディアは騒ぎまくっていますが、他国に比べてそれほど悲壮感が無いのではないでしょうか? (ちなみに、わたしも株式下落で損害を被っている一人なので、別に株価下落を喜んでいるわけではありません、念のため)
 この理由としては、日本の家計の金融資産構成があるように思われます。
 日本とアメリカの家計の金融資産について、最新データ(2007年9月版)をグラフ化してみました。

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_04.html#Nichibe

 ご覧頂いたとおり、家計の資産構成の中で、「株式・出資金」が最も大きな割合を占めるアメリカに対し、日本の「株式・出資金」のシェアは11.3%に過ぎません。日本の家計金融資産は、まだまだ現金・預金偏重型で、現預金だけで50%を越えているのが現実なのです。2006年のデータでは株式・出資金が12.1%となっていますので、06年から07年に掛け、日本の家計金融資産に株式が占めるシェアは却って減少しているのです。
 大雑把に言って、株価が下落した際に、家計の保有する金融資産の10分の1に影響を与える日本に対し、アメリカは家計の金融資産の30%強に悪影響が及ぶということです。(投資信託を含むと、双方ともより影響は大きくなりますが)
 FRBがドル希薄化や、原油などの現物価格高騰、そして国内のインフレをものともせず、連日巨額のドルを市場に供給し続け、ナスダウを守ろうとするのも無理もないとは思いませんか?
 ところで、日本の家計の金融資産が1536兆円で、過半が現金・預金ということは、日本の家計は750兆円以上という巨額の現預金を持っていることになります。それに対しアメリカの家計の金融資産が45.3兆ドル、すなわち4530兆円。現金・預金の割合が13%ですので、額でいうと589兆円。
 何と、日本の家計はアメリカを上回る現金・預金を溜め込んでいる計算になります。
 株式などのリスク資産からの資金流出が起きている現状では、この日本の莫大な現預金が、国の信用度を高めていることに間違いはありません。ドルが下落し、日本円が急上昇しているのも、この現預金額を見ると当然に思えてきます。

 ところで、ドルが下落する中、そのドルに対しても大きく価値を下げて話題になっている韓国ウォンの状況ですが、本日は韓国銀行が10億ドルの通貨防衛の介入を行ったようです。本日、ウォンはドルに対し約1.5%ほど値を戻しました。
 しかし中央銀行による通貨防衛は韓国の外貨準備を減少させ、韓国のリスクを高めていきます。しかも韓国銀行がウォンを買い支えてくれるということは、外国人投資家が高値を維持したまま資金を引き上げることができるわけです。
 今後も韓国ウォンから目が離せません。

P.S. 先日書いた某夕刊紙の記事ですが、今週金曜日発売分の予定だそうです。

*三橋貴明のホームページ「新世紀のビッグブラザーへ」を開設しました。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/index.htm