戸締役様のブログにもありましたが、4月8日にS&Pが、CDO(債務担保証券)のデフォルト(債務不履行)が1590億ドル(16兆円!)に達したことを明らかにするわ、アメリカのリセッション突入がほぼ確定するわ、イギリスの不動産価格下落が顕著になるわで、またもや為替が風雲急を告げてきました。年度明けからの小休止は、日本企業の決算円買いが終了した事などによる、軽いリバウンドだったようですね。
 現在、ポンドは既に£1=\200を切っており、ドル円も一時は100円を切る寸前まで下落しました。
 今回のアメリカ発金融危機ですが、NY大学のヌリエル・ルービニ教授が、12のステップを経て1兆?の損失に至る「悪夢のシナリオ」として、非常に分かりやすい危機の拡散スキームをWEBで公開していました。ルービニ教授のスキームはFT紙などにも紹介されていましたが、エコノミスト紙臨時増刊号にも掲載されていましたので、ご紹介しましょう。

第1ステップ:住宅価格はピーク時から20~30%下落し、4兆?から6超?の家計の富が消える。サブプライム問題で220万世帯が住宅を奪われる。

第2ステップ:サブプライムが金融システムに与える損失は、推計されている2500億?から3000億?を大きく上回る。サブプライムローン、住宅ローン担保証券(RMBS)や債務担保証券(CDO)だけに限らず、優良ローンに近いものや優良ローンにも広がっている。05年から07年に実行された住宅ローンの約60%が影響されるだろう。
 これは経済を深刻な景気後退に追い込む。ゴールドマン・サックスは住宅ローンによる損失は4000億?と推計しているが、住宅価格が20%以上下がれば、もっと大きくなる。

第3ステップ:景気後退が続き、信用力の低い消費者のローン破産が増える。クレジットクランチは住宅ローンだけではなく、消費者ローンにも広がる。

第4ステップ:モノライン(金融保証会社)の損失は、100億?から150億?の救済パッケージが用意されているが、それ以上に大きくなる。モノラインの格付けの低下により、さらに1500億?の損失が金融機関に及ぶ。モノラインの格下げは、無謀な商品に投資をしていたファンドにも大きな損失を与える。

第5ステップ:商業用不動産ローンがメルトダウンする。誰も、人が住まなくなったゴーストタウンにオフィスや店、ショッピングモールを建てようとは思わない。

第6ステップ:住宅、商業用ローンに関係しているいくつかの地域の大きな銀行、国レベルの銀行でさえ、倒産する。英国のノーザンロック銀行のように取り付けが起きて、救済や国有化により、相当の損失が出る。

第7ステップ:銀行が保有するレバレッジドローンの損失が膨らんでいる。多くの無謀なLBOが延期され、キャンセルされ、なかには破綻するものも出てくるだろう。

第8ステップ:景気後退が進むにつれ、企業倒産の大波が起きる。08年の倒産確率は10%を超える。倒産が増え、信用スプレッドが高まると、クレジット・デフォルト・スワップに多額の損失が発生する。損失推定額は200億?から2500億?まであるが、2500億?がありうる数字だ。

第9ステップ:ノンバンクなど、影の銀行システムは深刻な状態に陥る。貯金を扱わないので中央銀行の支援を受けられず、2、3の大型のヘッジファンド、マネーマーケットファンドなどが倒産する。

第10ステップ:米国と海外の株式市場は、米国の厳しい景気後退と、グローバルな景気減速を織り込むだろう。景気減速が厳しいものであり、モノラインが救済されず、金融の損失が大きく、非金融分野も利益が低下することが分かってくると、株価は再び下落を始める。

第11ステップ:クレジットクランチがさらに悪化し、さまざまな金融市場から流動性が干上がるだろう。中央銀行が流動性を供給しても。銀行間の資金融通は厳しい。

第12ステップ:損失→資本の毀損→信用収縮の悪循環が資産の投げ売りを迫り、巨額の損失とさらなる信用収縮を招く。この結果、金融システムには1兆?以上の損失が発生し、景気後退は深刻化し、長引くだろう。

 現実のアメリカの状況は、ルービニ教授のスキームをパラレルになぞるように悪化しているように思えます。その上、ルービニ教授のスキームは、イギリスを初めとする欧州の不動産バブル崩壊や、中国のバブル崩壊はあまり織り込んでいないんですよね。
 下手をすると、米欧中を中心に破綻の悪循環が回りかねないと思っています。