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『視聴者からの質問に答えて(プライマリーバランスについて)①』三橋貴明 AJER2015.6.9(11)
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本日は24時からラジオ関西「なんでもカウンセリングYou&Me」に出演します。
http://jocr.jp/blog/nandemo.php
自民党&政府の財政議論が混乱してきています。
『甘利氏「論理矛盾」×稲田氏「雨乞い」 財政再建で対立
http://linkis.com/www.asahi.com/articl/azkqe
政府の財政再建をめぐり、甘利明経済再生相と自民党の稲田朋美政調会長の対立が12日、表面化した。経済成長による税収増を期待する甘利氏が、歳出額の数値目標を掲げない方向で議論を進めているなか、稲田氏が「2018年度に歳出額の目標設定を行う」との党方針を決定。甘利氏が「論理矛盾」と反発すれば、稲田氏は成長重視路線を「雨乞い」と批判し返した。
稲田氏が委員長を務める党財政再建に関する特命委員会はこの日、財政健全化策の最終報告案を決定。党は昨年12月の衆院選で「国・地方の基礎的財政収支(PB)を2020年度に黒字化」と公約しており、中間段階の18年度に歳出額の目標を設定することを明記した。社会保障費の伸びを「年5千億円程度」に抑える目標も掲げた。
政府が示す今後の経済成長率(名目3%、実質2%)については「楽観的」と指摘して、「経済成長だけではPB黒字化のめどが立たない」とした。(後略)』
何だか、
「ダメなやつと、もっとダメなやつの議論」
を見ている感じで(そのままですが)、頭が痛くなってくるのですが、どちらが「もっとダメなやつ」なのかと言えば、今回は文句なしで自民党の財政再建特命委員会であり、稲田朋美政調会長です。
そもそも、なぜPBを黒字化しなければならないの? 財政健全化の定義は、
「政府の負債対GDP比率の低下」
であり、政府の借金残高を減らすこと(PB黒字化)ではないでしょ?
とうい根本的な問題は、ひとまず脇に置いておいて(この問題を脇に置かなければならない時点、レベルが低すぎるわけですが)、PBを黒字化したいならば、税収を増やさなければなりません。
税収を増やすためには、国民の所得を増やさなければなりません。国民の所得の合計を何というか。
いまさらですが、GDPです。
PBを黒字化するためには、GDPを成長させる必要があるのです。それでは、GDPを成長させるためにはどうしたらいいのでしょうか。
簡単です。誰かが「消費」もしくは「投資(設備投資、住宅投資、公共投資のみ)」としての支出を増やす必要があります。「支出を削り、GDPを増やす」のは、統計的に成立しえないのです。
そういう意味で、稲田政調会長率いる特命委員会が、歳出削減の目標を掲げているのは、論理矛盾というか、統計的に成立しないファンタジーワールドのロジックになります。と言いますか、
「歳出削減でPBを黒字化させる」
と、主張するならば、歳出削減でGDPが減り、税収が減る中で、いかにPBを黒字化させるのか、説明する必要があります。そんなことは、この世の誰にもできません。
要するに、稲田政調会長もまた、財務官僚に取り込まれ、「家計簿」と財政を混同する愚かな政治家に落ちぶれてしまった、という話なのでしょう(推測ですが)。わたくしは安倍政権の経済政策は、金融政策以外は全く評価していませんが、成長を重視する安倍政権の財政に対する考え方を無視し、歳出を縛るのは普通に間違っています。
稲田政調会長は、成長依存のPB黒字化について「雨乞い」と評価していますが、政治のパワーを無視しているわけで、ある意味で「政治家」として凄いと思います。何しろ、政府が財政出動を拡大すれば、100%経済成長します。すなわち、GDPが増えます。それにも関わらず成長を軽視するのでは、政治について根本から理解していないと断言するしかありません。
何というか、1995年11月の武村大蔵大臣(当時)の国会における「財政破綻宣言」以降、延々と続いてきた「間違った財政議論」が最終フェーズに入ったような気がいたします。当たり前の政策である財政出動を、当たり前にできず、推進されるのは「歳出削減」と「増税」ばかり。結果的にGDPが拡大せず、税収が減り、財政が悪化し、またもや歳出削減と増税。
それにしても、緊縮財政を推進する安倍政権よりも、自民党特命委員会の方が「後退」しているとは、情けない限りです。まさに、
「ダメなやつと、もっとダメなやつの議論」
で、どちらを支持するかという話で、今回ばかりは「ダメなやつ(安倍政権)」を支持せざるを得ないわけでございます。
何というか、絶望的な話ではございますが、藤井先生ではないですが、諦めて議論を放棄した時点で「負け」確定です。
「あきめたらそこで試合終了ですよ・・・?」
と、安西監督の声が聞こえてきそうでございますが、いずれにせよ正しい情報を「繰り返し、繰り返し」発信していかなければ状況は好転しないわけでございます。
成長こそが全ての解。財政再建(PB黒字化ではなく、政府の負債対GDP比率の改善)の方法は、成長以外にはありえない。
当たり前の事実を、当たり前として国民が認識する日が来ることを期待し、諦めずに試合を続けたいと思います。
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