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「欧州の農業はなぜ発展したのか。欧州の顛末」(前半)三橋貴明 AJER2024.2.6<br>

  

令和の政策ピボット呼びかけ人に「やまと経営者連盟 代表理事 古賀真氏」が加わって下さいました。

 

市場メカニズム云々言うならガソリン税に反対しろよ、日経新聞 [三橋TV第820回] 三橋貴明・高家望愛


https://youtu.be/xoggN91SGzc
 

 自民党の食料安全保障に関する検討委員会」などの合同会議が、農業基本法(食料・農業・農村基本法)改正案を承しました。今国会で、農業基本法の改正が審議されることになります。


 ロシア・ウクライナ戦争を受け、国民の食料安全保障に対する危機感が高まったのは疑いありません。


 というわけで、今回の改正案では「食料安全保障強化」が重視されているわけですが、問題は「その方法」です。


 正直、農水官僚や政治家が真面目に考えているとは思えない。

農業基本法改正案を了承 食料安保強化が柱―自民
 自民党は13日、「食料安全保障に関する検討委員会」などの合同会議を開き、農政の基本方針を定めた食料・農業・農村基本法改正案を了承した。ロシアによるウクライナ侵攻に伴う世界的な食料価格の高騰などを踏まえ、食料安全保障を強化することが柱。政府は今月下旬にも国会に基本法改正案を提出し、成立を目指す。(後略)』

 食料安全保障を強化するためには、食料自給率を引き上げる必要がある。


 そのためには、「需要」がなかったとしても、「供給能力」を維持しなければならない。何しろ、需要は「非常事態」が発生した途端に跳ね上がる。


 その時に、「あ、すいません。供給能力がありません」では話にならないため、食料安全保障の強化とは、
1.需要が不足していたとしても、食料の生産が可能な体制を構築する
2.食料の供給能力を、継続的に高めていく
 以外にはあり得ないのです。


 アメリカは、農産物の生産者価格(再生産可能な価格)を農家に保障し、事実上のダンピングで穀物の輸出を増やし、食料安全保障を実現しています。


 欧州は、農家の所得を補償し、もはや「公務員?」というような状況にした上で、事実上のダンピング穀物の輸出を増やし、食料安全保障を実現しています。


 日本はどうするんですか? 

 

 わたくしは、よく反発されますが、

「日本政府が全ての耕作地を耕作してもらい、農産物を買い上げ、国内の困窮世帯に配り、余ったら太平洋に捨ててしまえ(環境的に問題があるそうですが)」
 と、食料安全保障の根幹の「考え方」について解説します。食料を余らせて捨ててしまう方が、「平時の需要」に合わせた食料生産をするよりも、安全保障的には「正しい」のですよ。


 「もったいない」精神では、安全保障は成立しないのですよ、残念ながら。

 

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皇統論第六十回「頼朝の首を墓に供えよ」、歴史時事第六十回「華夷秩序の崩壊」が配信になりました。
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 というわけで、日本が食料安全保障を強化するというならば、需要を上回る生産をするしかない。とはいえ、日本政府は相変わらず緊縮財政で、余剰穀物の買い取りといった話は全く聞こえてこない。となると、「輸出」という需要に頼るしかない。


 実際、内閣府の食料基本法の四本の柱の一つは、「農林水産物・食品の輸出促進」とあり、
・輸出促進法に基づく品目団体の下、食料システム全体での輸出拡大、規制に対応した輸出産地の形成
・輸出先国における輸出支援プラットフォームの整備(輸出事業者等へのきめ細やかなサポートの実施)
・海外流出防止や競争力強化等に資する知的財産の保護・活用(育成者権管理機関の取組の推進等)等 
 と、なっています。


 加えて、農業基本法の「⾒直しの4つの⽅向性」では、「輸出を応援し、農業・食品産業の維持・発展を目指します」とある。食料の輸出を強化し、食料安全保障を強化するという考え方は、真っ当です。


 で? どうやって?


 輸出による食料安全保障強化のためには、「穀物の輸出」が必要です。トマトやキュウリやリンゴやモモやスイカの輸出がどれだけ増えても、食料安全保障は強化されないのですよ。何しろ、カロリーが足りない。


 というわけで、日本が「輸出により食料安全保障を強化する」というならば、「コメの輸出拡大」以外にはあり得ないのです。


 とはいえ、コメの輸出拡大に際しては、大きく二つ、問題がある。
1.グローバルなコメ(コメだけではないですが)の価格は、とんでもなく安い
2.コメの輸出拡大は、穀物輸出を「武器」としているアメリカの市場を奪うことになる
 まずは、コメ価格。これが、現実です。

【日本とグローバルの米価格(ドル/トン)】


http://mtdata.jp/data_88.html#kome2
※1ドル=145円、1トン=16.7俵で計算
※グローバルの米価格:タイのバンコクから輸出される精米価格

 日本のコメ価格とグローバルコメ価格は、ここまで開きがあるのです。もちろん、日本のみならず、欧米も同じです。


 それにも関わらず、欧米は農家の所得補償、あるいは生産者価格の保障といった「政府支出」により穀物輸出を拡大しています。当然、日本も同じことをやるんだよね?


 さらには、日本のコメ輸出が拡大した結果、アメリカの市場が侵されたとして、太平洋の向こう側からくる「圧力」と戦えるんですよね、日本の政治家や官僚は。


 できる。というならば、歓迎したいですが、現実には「鉛筆なめなめ」しただけなのでしょう。何しろ、国内の穀物需要が拡大しない以上、「輸出という需要向けに生産能力を高め、供給能力を引き上げるしかない」のですよ。

 

 できる、できないのではない。他に「鉛筆なめなめ」しようがない。


 今回の農業基本法の改正において、上記のような「現実の議論」が少しでも進むことを願っています。トマトやキュウリの輸出増では、日本の食料安全保障は強化できないのですよ。

 

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