真昼間から繰り広げられるボッタクリバーならぬ、ボッタクリカフェ。早く脱出しないと状況は悪化するばかり。タビジュンの作戦はいかに。
領収書には絶妙な額が記載されていた。
1985元。日本円で約3万円。
たかだか5分や10分話しただけで、目の前にはブランデーのボトル、フルーツの盛り合わせが並び、そして3万円の請求額である。
確かに日本人旅行者がその場ですぐに払えない額ではない。
この時、怖いという感情はなく、それよりもこんな手口に引っかかり、払ってきた日本人がいるのかと情けなくなった。
多少動揺はしていたが、つけ込まれると思ったので、そんな素振りは一切見せずに淡々と対応した。
これは何なんですか?
頼ンダ分ノオ金デス
高すぎやね?
普通ダヨ、ミタラ分カル、イッパイ机二、アルデショ
最初は優しい話し方だった女も、払う素振りが見えない事から段々と語気が強まる
いや、勝手に頼んだんでしょ?あなたが払いなさい。ジュースの分はちゃんと払います。
ナンデ!オカシイヨ!中国デハ男払ウノ当タリ前!!
いや、払わんよ、あんたが勝手に頼んだんやろ、俺は払わない。
ジャ、私100元出ス、残リ払イナサイヨ!
払いません。
ジャ、200元出ス、残リ払イナサイヨ!
そんな大金持ってません。
ウソ!財布見セナサイヨ!
見せない。
警察ヨブヨ!
どうぞ呼んでください。
こんな不毛なやり取りを繰り返していると、女が店員を呼んだ。
応援要請である。
最初は1人だった店員も、そこから3人になり、俺を中国語で罵倒し始めた。
大声でまくし立て、それは、それはすごい剣幕だった。
ただ、罵倒されながらも頭の中は静かだった。
この不毛なやり取りをいつまで続けるのか。
何か脱出の作戦を考えないと、さらに追い込まれ、益々逃げれなくなる可能性が出てくる。
とりあえずジュースは飲んだ、その分のお金を払わないと無線飲食になってしまう。
ただ、ここで財布を出すのは、強引にお札を抜かれたり財布を奪われるリスクがある。
確かエレベーターすぐ左はトイレだった。
トイレ内で財布から100元札を出しポケットに入れ、そしてトイレを出て女に100元札を払い、そのどさくさに紛れ、エレベーターに乗り込もうと考えた。
ただ、逃げる事を警戒されトイレに行かしてくれない場合もある、その時、もうバカみたいだけど、漏れそうな演技をするしかないか。
今度は俺が動き出す番だ。
女に、トイレに行きたいと伝えると、意外にもアッサリとOKが出た。
少し気になったが、予定通りトイレに向かった。
トイレに入り、財布から100元札を出しポケットにしまう。
落ち着いてはいたが、自分で気付いてないだけで、もしかしたら興奮状態かもしれない。
鼻から息を大きく吸い深呼吸。
さらに気持ちを落ち着かせ、そして同時にヤルゾと鼓舞をした。よし。
ドアノブに力強く手を掛け、ドアを開けると、そこには想像すらしていなかった光景が待っていた。
(またまたまた)続く。
押し忘れ注意❤︎