毎日のごはん

 

友人のコンサートに夫とでかけました。

70代ぐらいの初老のご夫婦が斜め前の席に座っています。

御主人が奥様のコートの襟を直してあげたり、

顔をよせあって何か耳にささやいたり、

ふたりとも笑顔で

まるで恋人同士のよう。

 

しばらくして、

知人のご夫婦であることに気づきました。

奥様が2年前に脳梗塞で倒れ、

御主人が看病していると聞いていました。

奥様が回復されたご様子に、

ほっと胸をなでおろしました。

 

いつも凛とした奥様でしたのに、

2年前にお会いした時、

「疲れた。いつまでうちのおとうさんは、

わたしに「これくらいできるでしょ」と言うんだろう」

と話していました。

愚痴をこぼすなんて

珍しいなと思ったのをよく覚えています。

目に見えるおからだの変化は、

まっすぐな姿勢からゆがみに、

お気持ちの変化は

2時間ほどお会いしてる間に

「疲れた」を何度も言うことに

現れていたかもしれません。

 

見えない体の内部の変化は、

数年前から少しづつ

やってきているものかもしれないと

今になって「そういえば」と思います。

 

大事な家族が、

今日も笑って、

お話して、

おいしいものを食べる。

その時間がたまらなくいとおしいです。

 

TVで辰巳芳子さんの

「命のスープ」特集を見ました。

ニンジンの切り方ひとつもゆるがせにせず、

やさしく心をこめて野菜を切る姿に感動しました。

おにぎりで名高い青森のイスキアの初女さんが

炊きたてのごはんを

そっとやさしく天地がえしする様子に

胸をつかれました。

 

そんなふうに日々の暮らしに

祈りをこめて

食事の支度をしたことあったかな?

だから、

せめて

ニンジンの千切りと

たきたてごはんの天地がえしの時は、

すごくやさしい気持で丁寧にやってます。