カレーライフ (集英社文庫)
カレーライフ (集英社文庫)

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文句なしで星5つ!! 期待以上の面白さでした 料理の好きな女性も、大きな夢を持つ男性にも読んでほしい一冊です。

親戚で集まり、いとこたちは祖父特製のカレーを食べていました。
そんな時、彼らの横で亡くなった祖父。
いとこたちにとって「祖父とカレー」は切っても切れない存在となります。
そして幼い彼らは、「いつか、自分たちでカレー屋を開こう」と約束します。
大人になるまで、彼らはその約束を覚えているかという確認はしませんでしたが、皆、けして忘れていませんでした。
それぞれの人生の中で、祖父の思い出とカレー屋の約束はどのように思われてきたのか…。そして、大人になった彼らのカレーへの思いは、どんな方向に向いていったのか…。そんな話しでした。

読んでみて、最初はちょっと衝撃的でした。
毎年、夏に集まるいとこたちに、毎年同じような特製カレーを作る祖父。
そんな祖父が皆がカレーを食べた直後に亡くなってしまうのです。
彼らにとって、それは衝撃的な「死」の場面であったに違いありません。

それからまた、皆が集まった時に、いとこたちがカレーと祖父の切っても切れない存在を意識してか、「いつか、僕たちのカレー屋を開こう」と約束するのですが、なにせ子供の約束ですから、皆、他の人たちが覚えているのか、半信半疑で大人になります。
でも、皆がそれぞれの形で覚えていたことを素敵だなぁと思いました。

おでんを利用したカレーをキャンプで作ってしまったり、バーモント州に行けばバーモントカレーが食べられると信じて行ったのに、結局自分たちが現地の人にカレーを振舞うことになったり、インドで色んなカレーに出会ったり、とにかくカレーにまつわることがいっぱい出てきました。「カレー」というひとつの料理でも、世界中にいろんな種類があり、それぞれのシチュエーションで、美味しくなるんだろうなと思い、それがまた素敵だなぁと感じました。

そして、一番素敵だと思ったのは、祖父の残してくれたものです。
祖父は世界でたったひとつのカレーを残してくれたのだと思います。
そして、いとこたちはその祖父のカレーでつながれているのでしょう。

本当に思い出に残る食べ物は、皆をひとつにしてくれる力があるんだ。
そんな風に思ったら、料理がまた、今まで以上に楽しいものになりそうな気がしました。