そのリストのなかに「芳光」はあったのだが、「京都の聚洸でたべたわらび餅がすっごいおいしかったんだけど、そのお店の人が弟子入りしていたお店が芳光で、そこのわらび餅も食べてみたいんだよね」とのこと。わらび餅…ふーむ。わらび餅で絶品ってどういう……あまり想像がつかなかったが、名古屋のお気に入りスポット「徳川園」のすぐ近くなので、わりと近く。行ってみるか!
◾︎限定販売のわらび餅
ということで車を走らせたのだが……
「わらび餅は10月から6月限定の販売なんです。夏は暑いですからね、そんなにもたなくなっちゃうので」とのこと。この日、9月。行き先詳細は事前によく調べましょうね、って話なんですが、あえなく敗退。日もちしない食べ物なので配送もしていないとのこと。姉はまたいつか機会があれば、私は10月のリベンジを誓ってお店を出た。
そして3週間ほど前! 10月になったし、ちょうど近くに用事もあったのでリベンジ! とお店に寄ってみたのだが……。16時手前にしてお客さんがたくさん出入りしている。恐る恐る「わらび餅は……」ときくと、「あーーー! ちょうど今! 今全部出ちゃったんですよ! すみませんね……」とのこと。
ちーん。2度目もあえなく敗退。しかし
「今度、お電話いただければお取り置きさせていただきますよ!」
とのこと。よし、次回こそのがすまい。
◾︎お取り置き予約で安心のゲッツ
そして10月最後の土曜日、お昼前に電話で予約。
14時ころお店に着くと、先週と比にならないくらい、4代分の駐車場をひっきりなしに車が出入りし、お店の脇の小さな路地は芳光さん目当ての車たちがぐるぐるとまわっている。なんじゃこりゃ! めっちゃ人気ですやん!
それもそのはず、食べログをみてみると……
⚫︎名古屋市の総合ランキング……30位
⚫︎名古屋市昼のランキング……13位
店内もわらび餅を買いにきた人で賑わっている。そしてついに……念願のわらび餅をゲット! 大事に保冷バッグにいれて持ち帰った。
(少しだけ、イートインスペースもあります)
◾︎芳光さんわらび餅、ついに実食ッ!
自宅に戻り、フタを開けてみると……こ……神々しい! そしてお行儀よく並ぶ黄金のまんまるわらび餅たちのお姿が、なんとも愛らしい。丸いわらび餅なんて初めてお目にかかる。
とても繊細な柔らかさと形状なので、お皿に出すにもやや緊張。トイレの神様で有名な慈恩禅寺からお迎えしたお気に入りのお地蔵さんに見守ってもらいながらいただきます。
わらび餅なので当たり前なのだが……やわらかい……! 赤ちゃんのほっぺたのような、でもすぐに溶けてしまうのではなくしっかり味わえる繊細ながら強い意志を感じるわらび餅。そして中のこしあんが……上品! よく缶詰から自分でつくるおしるこの雑な味とはわけが違う(雑な感じもそれはそれで好き)。おなじあんこのカテゴリに入れたら間違いなくバチが当たる。
しっかりと甘みがありながら、なめらかでしつこさがなく、スッと舌を滑っていく……その上質感はまるで皇后さまのお通りです、とでもいう感じ。さらに、(きな粉といえばすこし角ばった香ばしさを想像するが)まるっとしたほどよい香ばしさのある優しいきな粉が、たるん・とぷんとしたくず餅と餡の橋渡しになっていて、3者がほどよいバランスを保ちながら舌の上でとけていく。
たーーまーーらーーーぬーーーー。
いやー、余は満足じゃ。
終わりよければすべてよし、この日もぜいたく和菓子のおかげで満ち足りた週末の夜を過ごすことができましたとさ。
ちなみに1回目の敗退訪問のとき、ほかの和菓子を購入してみたのだが、それらも上品さを極めたぜいたくな味わいだった。
名古屋ドームに徳川園、晴明神社に山田天満宮ーー名所が集まるこのエリア。お近くをお通りのさいは、もしわらび餅が売り切れでもぜひ、季節ごとの和菓子たちをお試しあれ。熱い日本茶とともにいただけば(お抹茶といただけたらなおよし)、無音の至福が訪れることだろう。
ぜひ機会があれば、京都の聚洸さん、そして芳光の店主が修行をつんだ、京都・聚洸の店主の実家でもある京都・塩芳軒さんにもいってみたい。