シュガー1~8、RIN1~4


「ゆるくねえ時に泣く奴は3流 歯喰いしばる奴ぁ2流だ
 笑え・・・・果てしなく そいつが・・・・1番だ」



新井英樹先生のボクシング+α漫画。
タイトルが途中で変わってますが一続きです。とても面白いと聞いて蒐集。
ノンストップで12冊読み切ってしまう位には面白かったです。
SUGAR8巻のラストまでのテンションは最高。

決して丸い漫画ではなく、大分鋭く尖っています。
ギミックや多少のエログロなど万民向けとは言えません。
それだけに、嗜好に合致した場合の突き刺さり具合は凄い。
何でも良いから面白いマンガが読みたい、というなら読むべきです。

やっている事はボクシングなれど、この作品の本質はそこではなく
ただ一点、「天才の孤高」。

世の漫画には多くの天才が描かれていますが、
この作品の中での2人の天才の描かれ方はかなり異質です。


以下ネタバレにつき↓
普通、漫画の中で主人公が天才なら、互角以上の実力を持つ
敵なりライバルなりが出て来て戦う事になる。
しかし、この漫画の主人公・凜の前にそういった存在は現れない
もう一人の天才・中尾は既に一線を退いており、基本的に傍観者。

又、主人公であるならば、家族や恋人、コミュニティ、地球など
守るべきものがある。それもこの作品では最終的に存在しない。
千代には天才であるが故に振られてしまう。

芸術分野の天才であれば、死ぬまで創作すれば良い。
しかし、ボクシングの場合は相手がいなければ成り立たない。
世界を制覇した後、相手が居なくなった凜に何があるだろうか。

「栄光なき天才たち」は私が好きなマンガの1つであるが、
凜はしっかりと栄光も掴んでいる。それでも虚しい。
天才に必要なのは栄光ではない。

強い敵を追い求め続けても現れず、心底満たされる事はないまま
やがて老いて中尾のようになっていく。

頂点に立つまでを描く物語は多いが、
頂点に立った後の空虚さをここまで描いている物語は少ない。

ただ、最初からそういう事を描きたかったのかどうかは疑問ですが。
凜というキャラクターを動かす内に自然とそこに帰着ようにも
思います。もう少し先も読んでみたかったですけどね。


「仲間同士で和気あいあいできるような奴は
 衣なり食なり住なり満たしてかしこまってろ!!

 わかってもねえ奴がわかったふりして
 気安くオレに近寄んじゃねえ」


最後の中尾だけが理解してくれるこの台詞は、
満たされぬ天才の哀切な台詞として印象深い。


一筋縄じゃ行かない展開が好みでした。