預言者ピッピ1巻 地下沢中也


未来は不安だから人は夢が持てる

人間は知らないことを怖れるのに同時に知ることも怖れる
変化は痛みを伴うからね



哲学的な漫画を読みたいという私に勧められた作品。
各所で絶賛されており、暫く探し回った物の見つからなかったので
結局Amazonにて購入しました。ちなみにAmazonのレビューでも絶賛。

うん、これは素晴らしい漫画です。
一つ一つの台詞やタームがビンビン響いて来ます。
間違いなく、今年に入ってから読んだ中ではトップクラス。

重厚なテーマと設定を用いながら、それだけに留まらず
漫画として読ませる演出も疎かになっていない。
卵に生えた羽や、59・60頁、5話の構成は上手いと感じました。

惜しむらくは1巻しか出ておらず、それも刊行に6年かかっており、
2巻は出るのかすら不明であるという事。未掲載の6話、7話で
第一部完結との事なので、いざとなったら掲載誌を購入しましょう。
いつか死ぬのなら今死ぬのも後で死ぬのも一緒ではないのか?
忘れる事ができない存在は、過去の痛切な記憶を抱えながら生きて行けるのか?
全ての人間を幸せにすることは可能なのか?
努力する前に結果がわかったら、人はそれでも努力をするのか?

こういった哲学的な問いや、哲学用語、名言などが
随所に鏤められており、それだけで愉悦を覚えます。

人類を救う、というのは進化させてまで延命させる事なのか、
進化の最果ては何処に行き着くのか、結局進化と退化、
繁栄と滅亡を繰り返すだけにならざるを得ないのではないか。

これらの問いも答えを求めつつも決して与えられないからこそ
面白いのかも知れませんね。


人間は絶滅か進化か。素直に読み解けば既に1話で絶滅すると
結論付けられているように思います。1話でピッピが描いた、
相対して相反する単純意志は5話の猿が起源でしょうか。
あのブルトンに渦巻きを描いた様な図形の意味する物は何でしょう?


しかし、こちら方面の才能でもっと作品を描いて欲しいなあ。
ここまで描ける人は本当に稀有だと思いますよ。