実写阿知賀編の公開が始まりましたね。

Yahoo!では評価ランキングトップになり、この映画を切っ掛けに原作に触れて下さる方も多々いて本当にすばらだと思います。


そんな折に、ゆずぽさんによる非常に熱い記事が公開されました。



☆ #咲実写 実写と共に。赤土晴絵を巡る咲-Saki-阿知賀編 episode of side A ☆

http://blog.livedoor.jp/yuzuponikki/archives/1069627762.html


すばらですね……

弛まぬ赤土晴絵愛が全身全霊で込められたすばら過ぎる記事だと思います。


そんな記事を読んで触発され、私は阿知賀編と阿知賀と、そして松実家を愛するものとして思わず以下のような文章を書いてしまいました。

以下はそんな人間による考察とまでは言えない完全な”妄想”であり、そういう風に考えている人も世の中にはいる位に読んで貰えればと思います。



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シノハユ5巻においては「赤土晴絵はまだ知らなかった。栄光と挫折を経て、のちに“阿知賀のレジェンド”と呼ばれる選手になることを」という件もあるんですよね。「挫折」は言うまでもなく、あのインハイ準決勝での敗退ですが、その前に「栄光」があったと明言されています。栄光、というには全小で準決勝まで行ったのが最高成績というのはいささか物足りない気もします。従って、まだ描かれていない小学校~中学校時代のどこかで赤土さんは全国ベスト3位には入っているのではないかと想像しています。優勝までしてしまっていたら、穏乃が和に赤土さんを紹介する時に「全中覇者で~」という冠も付けたかもしれないので、決勝戦で善戦した位が丁度いいのかなと。


赤土さんの中学校について判っているのは、少なくとも阿知賀ではないということ。となると、地元の強豪である阿太中辺りに行っていた可能性はそこそこあります(それも、ひょっとしたら望さんと一緒に。憧の「あたしは阿太中かな」という発言は、姉の姿を見ての事だったかもしれません。憧からしてみれば、「全国大会に出場したお姉ちゃん」です。普段は手伝いを口うるさく催促されることもあるかもしれませんが、幼少から麻雀を嗜む者として一定のリスペクトはあったのではないか、と)。その中学校時代でも、赤土さんの実力があれば全国で活躍できたであろうことは想像に難くありません。一年生時には椋千尋や慕ちゃん、はやりんと同卓することもあり、厳しい闘いも強いられたかもしれません。あるいは二、三年生時には現在のトッププロであるのよりんや咏さんと同卓することもあったかもしれませんが、赤土さんであればそこでも善戦できたのではと思います。普通であれば、そこから晩成に進学していくのが奈良県の麻雀強者の道です。が、何故か赤土さんは高校から阿知賀を選択しました。


私は、その理由の一つが松実家に、赤土さんに麻雀を教えた松実露子さんに関わっているのではないかと妄想します。露子さんが亡くなった時期や理由は明言はされていません。しかし、恐らくは体の強くない描写が度々出てくる松実家の女性なので、それに伴った病気によるものではないかと推測されます。そして、作中で幾度か描写される松実姉妹の幼少期の様子から、恐らく松実玄さんが5歳前後の頃、即ち丁度赤土さんが阿知賀編に進学した頃と重なるのではないかと。今回は、露子さんが赤土さんの高校一年生時のインハイ前に亡くなった場合を仮定して考えてみます。


もしかしたら、阿太中の部活で練習をしながらも、ずっと松実家で露子さんにも師事を受け続けていたかもしれない。

「松実姉妹と灼ちゃんは麻雀キャリア3歳からずっとです。

というdreamscapeの記述。それは、丁度赤土先生の中1頃と重なります。松実露子さんにずっと麻雀を教わりながら、逆に幼い松実姉妹や灼含む松実館に遊びに来ていた子どもたちに露子さんと一緒に麻雀を教えていたかもしれない。その時に、自分の人に物を教える教師としての適正のようなものも感じたかもしれませんね。ただ、その過程でどうも露子さんの体調が思わしくないことを知るタイミングがあり、その時に赤土さんは選択を迫られた。晩成や千里山のような強豪校に行くか?それとも、吉野で麻雀を続けるのか……

そして、結果として阿知賀を、地元に留まることを選び、麻雀も続けるという道を選んだ。その選択には、師や友人の存在も少なからず影響があったのではないかと思います。ひょっとしたら、露子さんもまた阿知賀女子学院麻雀部の部員だったのかもしれません(本当に無根拠な推測ですが、下手をすると狭い世界なので新子家の母親も同世代で同じ阿知賀女子麻雀部に入っていた可能性すらあると思います)。


ただ勝つのではなく、皆と一緒に戦いそして勝つ。それは、今の阿知賀女子が、個人戦には出ず団体戦にのみエントリーしたのと同じ形の選択です。阿知賀女子は、そうした遺伝子も脈々と継承しているように感じます。そんな中で、ある日露子さんが逝去されてしまう。松実姉妹のみならず、赤土さんも、望さんも、泣いたことでしょう。

「露子さん、あなたからまだまだ沢山のことを教わりたかった……

そんなことを思ったかもしれません。そして、露子さんが残した幼い姉妹に対しては、格別の想いもあったことでしょう。悲嘆に暮れる彼女たちに、優しい赤土さんは温かく接してあげたことでしょう。そんな恩師の死を乗り越えて、師が自分の中に遺してくれた力を糧に、負けられないという想いを胸に、奈良県予選での初の晩成打倒、そして準決勝までの快進撃を成し遂げていった。そんな面もあったかもしれません。


しかしながら、その後の運命を大きく変えた準決勝ではすこやんに心ごと打ち拉がれるような負け方を喫してしまいます。跳満以上の和了を一度だけ独力で当てながらも、大量失点をして完膚なきまでに叩きのめされてしまった。しかも、聞けばすこやんは高校に入ってから麻雀を始めたというではありませんか。吉野を経つ前に、松実姉妹に対しては「あんたらのお母さんから教わった麻雀で勝ってくるよ。だから応援よろしくな」と意気込んでいたかもしれません。にも関わらず大敗してしまった。松実姉妹がその試合を観て悲しみ、下手すると泣いてしまっていた様子は想像に難くありません。そんな、幼子たちを失望させてしまったことへの責任というのも赤土さんの中にはあったのではないでしょうか。赤土さんが麻雀牌を触れなくなるほどのトラウマになってしまった原因の一部には、そういった優しいが故の、責任感が強く真面目であるが故の部分もあるのではないでしょうか。そんな風に思っています。


しかし、そんなトラウマを現在の時間軸の811日の夜、教え子たちを決勝に導き、そしてすこやんに直接対峙してプロ行きの宣言をして、あまつさえその後に直接麻雀で勝負して、打ち倒す時がやって来ます。シノハユ0話、そして本編146局。私はその赤土先生の勝利が、自分を縛っていた過去のトラウマとの決別が、本当に嬉しくて嬉しくて当時泣きながら祝杯をあげました。すこやんが本気を出さなかったという可能性もなくはないです。しかし、少なくともはやりんやのよりんという現役最強クラスの面子と戦って、勝利を収めたというのは事実。牌に触ることもできず、大事な局面になるほど力が出せないでいた赤土さんが、恐らくずっと教えたりサポートしたりする方に尽力して自分自身が本気の対局をする機会はまず無かったであろうことから、久しぶりに全力で打ったであろうこの時に、最大限の力を発揮することができて現役のトッププロをも倒し完全に復活を果たした。そんなすばらなことはありません。


Vita版も小林立先生の監修は入っているということで原作で未公開の能力についてもある程度信憑性はあり、1.5次資料位の扱いをしても良いとは思いますが、それによると赤土先生は「無能力」。最強の無能力者が、元世界二位を打ち破る。そんなとてつもないことがあるでしょうか。恐らく世界一位はほぼ確実に能力者であると思われるので、もしかしたら現在世界最強の無能力者かもしれません。


世界最強の無能力者。それって凄く主人公っぽくありませんか。そもそも、赤土さんも紛れもなく主人公だと私も思っています。episode of side-Aは、赤土のAでもあるから。阿知賀編は赤土さんの物語でもあるから。これから、阿知賀を優勝させた赤土さんは日本のトップへと挑戦し、そして世界へと羽ばたいていくものと確信しています。世界ランキング1位をかけた戦いに挑む赤土さんを見たい。応援したい。赤土さんの麻雀で、勝って欲しい。


苦しめられた”青春”と、

希望ある”将来”――


そして、最強の無能力者である赤土さんが育てた最強の教え子は「能力者を無能力者化する」という力を携えて今、山の頂に最も近い位置に立ち開戦の時を待っています。そんな熱いことはない。


松実露子さんの麻雀は娘たちや赤土さん、望さんに想いと共に継承され、そして赤土さんや望さんからまた今の阿知賀女子の面々へと継承されている。阿知賀の麻雀は絆そのもの。このどこよりも強い互いの結びつきが、本当に美しく尊いと、何度思って考えても涙します。


麻雀を通して巡り会い、別れ、そしてまた巡り会った和と再び遊ぶそのもうすぐそこまで来た瞬間が待ち遠しいと共に、永遠に待って焦がれていたいとも思います。


ありがとう、咲-Saki- 阿知賀編 episode  of side-A。

いつもありがとう。