私が整理収納アドバイザーであることは、夫曰く、ネタらしい。
そもそも、私は小さい頃より片付けをできたことがない。
学校の机の中はぐちゃぐちゃ、引き出しの奥からは、カビの生えたコッペパンが見つかるなんてことはザラであった。
子供部屋は足の踏場がなく、同じ部屋を使っている妹からは心の底から嫌がられていた。
子供部屋の中央にあるガシャ、ガシャと紐を引いて付けるタイプのライトを、真っ暗のなか付けに行く最中で、『カビぱん』の袋を爆発させて、煙玉の様な忍術を使って以来、カビに対する恐怖心が未だ消えない。
高校のテニス部の部室で、親友であるキャプテンは、「あや、片付けて!」が口癖だった。
私の棚だけテニスウエアが山になっていた。
脱ぎ捨てたテニスウエアの着用が可能か否かは、匂いで嗅ぎ分けており、その甲斐あってか鋭い嗅覚を習得した。
働き始めた職員寮で熱が出て寝込んでしまった時は、隣の部屋の同僚に「こんな部屋にいるから熱が出るんだよ!」と、マスクと手袋装着で片付けてもらった。
そう、私は分かっている。
自分が片付けられない人間であることを
そしてそのことで周りに迷惑がかかっていることも。
ある時は、親のせいにした。
親にきちんと片付ける方法を教わらなかったからだと
そしてある時は、諦めた。
だって片付けられないのだからと。
そんな私が、なぜ夫と結婚できたのは謎である。
決して隠していたわけではない。
交際中より部屋を行き来しているうちに、私が片付けられない人間であることはバレていた筈だ。
強いていうなら、夫は気にしないタイプの人間であったのだろう。
結婚後も、自己肯定感の低かった私は、ずっと片づけができない自分を責め続けた。
来客があるたびに、そんな自分を必死で隠すために、何時間もかけて片付けた。
だが正直、隠しきれてはいなかった。
こんな私でいいのだろうか?
私はずっと自信がなかった。
そう、あのドラマをみるまでは……
こんな私でもいい!!
そう思える様になったのは、『ホタルのひかり』というドラマを観てからだ。
決して私は、綾瀬はるかの様に美しいわけではないが、あの『ひもの女子』をみて、私以外にもこんな人がいるのだと大きな自信をもらった。
そして、客観的に『ひもの女子』を観た時に気付いたのだ。
可愛いやん!!
いや、それは綾瀬はるかだからという理由はさておき、ありのままでいられる憎めないその姿に可愛さを感じた人は多い筈だ。
そこから始まったお片づけ自己承認のプロセス。
まず片付けられない私を認める。
そう、視点を変えると、お片づけできないことで、私は沢山の人から愛をもらっていたのだ。
できない私は、愛される私でもあったのだ。
こうして、できない自分を認めて行くと、自分を責めることが無くなってきた。
こんな私でもいい。お片づけできないのは、他にやりたいことがあるからだ。
やりたいことに夢中になれる私にありがとう。
そう考えることができる様になり、今度はお片づけスイッチが入った時の凄まじいパワーも感じられる様になった。
そしてその勢いで、調子に乗って、整理収納アドバイザーの資格を取りに行った。
知識って素晴らしい!! お片づけに目覚めた私は、家中をスッキリ、ピカピカにしていった。
これまでの物に溢れて埋もれていた部屋が、嘘の様に綺麗になっていった。
だが、2、3年すると、仕事や子育てに追われ、余裕もなくなり、また汚部屋が出現するようになった。
そんな私が、今、お片づけグループコーチングをしている。
片付けは、最初のリセットと仕組み化、そして何よりも楽しく一緒にできる仲間が必要だと感じたからだ。
できないこと、それは自分を責める一つになってしまう。
けれど、見方を変えてみると、それは最大の魅力ではないのだろうか?
こんな私が片付けについて話をしている。
お片づけを苦手とするどんな人にだって寄り添い、勇気づけられる自信が今の私にはあるのだ。
そう考えたら、お片づけできない私に、今は心からありがとうと言いたい。