車の死角② | わしじゃもりじゃ

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やはり、田んぼの中の道でのことである。

私はバイクで走っていた。
ずっと前には、白いワンボックス。


田んぼの中の小さな十字路にさしかかったとき
白いワンボックスは停車した。

かなり後ろの方を走っていた私は
あまりに長くそのワンボックスが停まっているので
追いついてすぐ後ろ、3mほど離れて停まった。

若い男の子たちが5~6人乗っているのが見えた。

その時、何とワンボックスがバックし始めた。
3m後ろに私がいるのに。

まさか気が付いていないんじゃ・・・
ワンボックスはどんどん近づいてくる。


バイクにまたがったまま私は後ろに下がった。

バイクの前輪がななめだったので
バイクはななめにしか下がらなかった。

バイクのクラクションを鳴らしたような気がする。

中の若者たちはおしゃべりしてて気づかない。

まだワンボックスは下がってくる。
その恐怖で心臓が口から飛び出しそうだった。
声も出ない。
しかも、パニックにもなっているので
うまく下がれない。

それでもまだまだワンボックスは後退してくる。

バイクはもう少しで土手から転げ落ちそうなところまで下がった。

それでもワンボックスはまだバックしてくるのだ。


つぶされるかと思うほど下がってきたとき
ワンボックスに手が届いて
いや、手が届くところまでワンボックスが後退して来たので
ワンボックスの左後ろを手でどんどんと叩いた。

その音で、やっと気が付いてもらった。

足はがくがく、手も震えている。
震えながら、バイクを車の右横まで運んだ。

おなかに力が入らなくて
かすかすの声で、運転手に行った。

「こ・・殺す気・・」

若い運転手は、窓を開けてぺこっと頭を下げ
「当たった~?」と笑いながら聞いた。

車とバイクは当たってないので
首を横に振った。

若者はホッとした顔で去って行った。

ちゃんと車から降りて謝罪しろや~~~
後ろを確認してからバックしろや~~~

がくがく震えながら、心で叫んだ。
声がほんとに出なかったのだ。

死ぬかと思った時
人は声が出なくなるんだと思った。
腰もぬけていたかもしれない。
バイクが重く感じて動かせなかったから。

その夜はその時のことが頭の中で何度もリプレイして
ちっとも寝つけなかった。
まだ興奮していた、まだ震えていた。
数週間、その時の恐怖が頭から離れなかった。






ご清聴ありがとうございました。

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